■■ 意味が分からないで歌っていた童謡 ■■ (14) 冬の星座

(このシリーズでは,以下 ====== までの前書きは,毎回同じ文面です)


タイトルに 「童謡」 と書きましたが,よくカセットテープや CD などで, 「日本の童謡全集」 などというタイトルがつけられているものの中に, 「赤とんぼ」 「浜辺の歌」 「里の秋」 「母さんの歌」 などの曲も収録されているものも多いと思っています。

私は,今あげた例の歌などは 「童謡」 ではないと思っていますが,ここでは,まあ,そういう厳密な規定は抜きにして,それらの歌も 「童謡」 としておきます。


私が子どもの頃によく歌った童謡の多くは,作詞・作曲されたのが明治時代から昭和の初期にかけての歌が多いので,歌詞にも古いことばが使われていたり,文語調だったりして,昭和 18 年生まれの私には,意味がよく分からなかったり,意味を誤解していた歌がけっこうありました。

このシリーズでは,そういった歌の例をとりあげてみます。

それぞれの歌ごとに, You Tube からひろった曲,または私自身が歌った曲の URL を貼り付けておきますので,もし,その歌を知らないという方は参考にしてください。

私が歌ったカラオケの画像に 「月見里真青」 という名前が出てきますが,これは私が歌を歌う時に使っている名前です。

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【冬の星座】
https://1drv.ms/v/s!AlZQjsp1JOKCk3gLwlrG8oMR6pnR?e=ZlKNei


-- 歌詞 ----

木枯らしとだえて さゆる空より
地上に降りしく 奇(くす)しき光よ
ものみないこえる しじまの中に
きらめき揺れつつ 星座はめぐる

ほのぼの明かりて 流るる銀河
オリオン舞い立ち スバルはさざめく
無窮(むきゅう)をゆびさす 北斗の針と
きらめき揺れつつ 星座はめぐる

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この歌は,私の記憶では,中学1年の音楽の教科書に載っていました。

実は,私は小学5年生の頃から星に興味をもちはじめ,6年生の頃には,実際に空を見上げて,主な星座は分かるようになっていましたし,シリウス,アルデバラン,ベテルギウス など1等星の名前も憶えたりしていましたので,この歌に愛着をもちました。

ただ,その当時,歌詞の中に,いくつかの分からないことばがありました。


「さゆる空より」 の 「さゆる」 は,まだ中学生の私にはよく分からないことばでした。まあ,その前に 「木枯らしとだえて」 とありますから,その木枯らしの 「ヒューヒュー」 という音が止んで 〈静まり返った〉 空なのかなあ・・・・,とは思っていました。その解釈でも,ものすごい間違いでもないのですが,高校生になって古文をやるようになって,そうか 「さゆる」 は 「冴える」 の古語としての言い方なんだと気がつきました。

「くすしき光」 は,上の歌詞で 「奇しき」 と書きましたが,中学生の当時は 「くすしき」 が 「奇しき」 だとは知りませんでしたから, 「くすしい」 光がどんな光なのかはまったく見当もつきませんでした。まあ,冬の星座はオリオン座を中心にその周りに明るい星がたくさん鏤 (ちりば) められて,1年のうちで最もにぎやかでしたから, 「くすしき」 は 〈キラキラとにぎやか〉 な様子のことかな,と勝手に解釈していました。 「くすしき」 が 「奇すしき」 だと知って,いい意味での 〈不思議な〉 〈妖しい〉 ということが分かったのは,大人になってからでした。

「ものみないこえる」 の 「みないこえる」 も意味が分かりませんでした。そりゃ 「みないこえる」 をひと続きのことばととらえたら分かるはずもありません。 「みな (全部)」 + 「憩える」 だなんて,とても,とても,考えが及びませんでした。

「無窮を指さす」 の 「無窮」 はなんとなくですが意味が分かっていました。もちろん漢字を知っていたわけではありませんが,天空と 「むきゅう」 の組み合わせで, 〈果てしない宇宙のかなた〉 ぐらいの解釈をしていました。

「北斗の針」 の 「針」 って,北斗七星のどの部分なのだろう? これが,この歌の一番の疑問でした。

冬の北斗七星.jpg


「指さす」 とありますから,図の (a) か (b) のどちらかだとは思うのですが・・・。

冬の北斗七星は,写真のように見えますから,「針」 が (b) だと地平線の方を指すことになりますから,これを 「無窮を指さす」 と歌うことはないと思います。

(a) の先には北極星がありますから, 「無窮」 が北極星を意味しているのなら 「北斗の針」 は (a) なのですが・・・・・。


と,まあ,何カ所か意味がはっきりしないまま歌っていましたが,それでも冬のキラキラときれいに輝く星空を思い浮かべながら歌うには十分に満足できる歌でした。

冬の星座(A).jpg


冬の星座といえば,オリオン座を中心に,おうし座,おおいぬ座,こいぬ座,ふたご座,ぎょしゃ座などが取り囲み,1等星という明るい星が7つも見られますから,1年のうちで最もにぎやかな星空です。

上の写真に,星座の名前と1等星の名前を付したのが下の写真です。

冬の星座(B)b.jpg

「すばる」 は,谷村新司の 「昴」 という歌や,中島みゆきの 「地上の星」 の出だしの歌詞などにも登場し,また,クルマの会社の名前にもありますから,ことば自体は知れわたっていますが,実際の夜空で 「すばる」 が分かる人はそんなに多くはいないようです。

「すばる」 については,別項として記事を書いていますので,そちらをご参照ください。
http://wordorigin.seesaa.net/article/201510article_86.html


もっとも,冬の星空がきれいと言っても,星は時刻とともに少しずつ動いていきます。上の写真は,だいたい1月下旬から2月上旬頃,南の方を向いたときの星空ですが,これらの星全体が,時刻が進むにつれて,ゆっくりと西の方へ(つまり,右の方へ)弧を描くような軌跡で移動していきます。夜中の3時過ぎぐらいには,オリオン座は西の地平線に沈んでいきます。


[補記]

私の記憶では,小・中・高の音楽の教科書で,歌詞は楽譜の中の音符に合わせて書かれていましたから,基本的に [かな] でした。楽譜の中とは別に,歌詞だけを取り出して,漢字交じりで書いてあったという記憶はありません。

ことによると,曲によってはそういう歌詞だけのページというか欄があった歌もあったのかもしれませんが,そういう記憶は残っていません。

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