計測データの欠損にどう向き合う? 2024年GA4アップデート総まとめと2025年への展望
2024年、マーケティング業界ではどんな潮流は何があったのだろうか。「Google アナリティクス & Googleマーケティングプラットフォーム~2024年アップデート総まとめと2025年活用に向けた展望~」と題したセミナーが2024年12月11日、東京・八重洲で開催された。
本セミナーは、データ活用を支援するアユダンテ株式会社が主催。
第1部から第3部までの3部構成で、第1部では、同社のシニアソリューションコンサルタント中村氏が、Google マーケティングプラットフォームの2024年を振り返った。
第1部:Google マーケティングプラットフォーム 2024年に何が起きたのか? 振り返りと総括
登壇した中村氏は「2024年、Google マーケティングプラットフォーム(以下、GMP)を取り巻くデジタルマーケティング業界で何が起きたのか」を次の3つのポイントを挙げ、それぞれを振り返っていった。
- プライバシー・データガバナンスに対する意識の変化
- ITPやサードパーティCookie規制による計測データの欠損
- ユーザーのオンライン行動の変化への対応
まずプライバシーとデータガバナンスに対する意識の変化を挙げた。これに影響してGDPRやITP(Intelligent Tracking Prevention)などのプライバシー規制、日本国内では、個人情報保護法や電気通信事業法などの改定があり、データ計測の欠損が強まってきている。さらに、これらの影響に伴いCookieの使用にも大きな変化が起こり、ユーザーの同意を得るCMPツールの導入が相次いでいる。このような外的要因により、サードパーティーCookieの利用は徐々に困難になっていると中村氏は振り返っていった。
特にiOSではCookieの有効期限が短縮されるなど、大幅な制約が加えられている。Google Chromeはかねてより進めていたサードパーティーCookieの廃止を事実上断念し、「新たなアプローチ機能をChromeブラウザに追加する」としているが詳細は定かにはなっていない。サードパーティCookieの代替技術として「Privacy Sandbox」プロジェクトは引き続き推進しており、GoogleはCookieに依存しない新たな計測手法を模索している。
データ計測軸で見ると、スマートフォンの普及や多様なサービス・デバイスの登場により、従来のウェブ中心のユーザー行動から分散型の行動パターンへと移行している。このような背景から、Google アナリティクス 4(GA4)では、セッションベースの計測から、デバイスを横断したユーザー単位での計測に変化している。
単に計測するだけでは、ユーザー行動を追うことができません。ユーザー行動を分断させず、チャネルをまたいだユーザー行動を追うために、企業は会員IDなどを用いたユーザー識別を実現する仕組みの構築が必要不可欠となっています(中村氏)
2024年にはユニバーサルアナリティクス(UA)が完全に終了し、新たにGA4が本格的に開始された。GA4では、プライバシー規制やCookieの制限に対応すべく、機械学習を活用したデータ補完(モデリング集計)の機能が実装されている。また、GA4はGoogle Cloudと連携し、「BigQuery」上での予測分析やチャット型AIを活用した分析支援機能も提供している。これにより、より高度なデータ活用が可能となっている。
GMP関連のプロダクトアップデートを振り返ると、2023年に比べ、特に計測・集計分野やプライバシー・ガバナンス領域で多くの改良が見られたという。これらを踏まえ、2025年に向けて、プライバシー保護とデータ計測環境の変化が企業にとってどのような意味を持つのか、さらに深い議論が求められると中村氏は述べた。
第2部:2024年重要アップデートの詳細解説
第2部では、アユダンテのGMPコンサルティング事業部 チーフソリューションコンサルタント藤田氏が登壇し、2024年のGMP関連のアップデート情報を厳選して紹介した。本記事では、さらに紹介された中から次の5つを紹介する。
今回紹介する内容は大きく「計測・集計・分析・活用」の観点から選定し、特徴的な機能をピックアップしている。アップデートのサマリーとして、2023年は91個のアップデートがあったのに対し、2024年は昨年を上回る108個のアップデートがあったという。
1. カスタムイベントデータのインポート
まず紹介するのは「カスタムイベントデータのインポート」という機能だ。これを活用すれば、オンラインデータとオフラインデータをGA4に統合して表示できるようになる。
たとえば、Webで取得したID番号に対し、オフラインデータを紐付けて「都道府県」や「市区町村」などの具体的なラベルを付与できる。また、過去データにも適用可能なため、後から分析の視点を変えることが可能。
2. ファーストパーティーモード(β版)
UAの頃にはなかった、GA4の新機能。昨今のプライバシー規制強化への対応として、ファーストパーティーモード(FPM)が提供されている。FPMを利用すると、企業がもつCDNを介してGA4の計測が可能になる。
データの送信先をGoogleドメインではなく自社ドメインに設定でき、欧州をはじめとする厳しいコンテンツセキュリティポリシー(CSP)に準拠したデータ計測が可能になる。ただし、導入には技術的な知識とリソースが必要であり、ややハードルが高いという現状もある。
3. ユーザー提供データ
GA4専用機能として注目すべきものが「ユーザー提供データ」だ。この機能は、ユーザー識別情報(メールアドレス、電話番号など)をGA4に提供することで、ユーザー識別精度を向上させ、デバイスをまたいだ一貫性のある分析を可能にする。
また、Google 広告との連携による最適化も進む一方、導入にあたっては法律遵守の確認やプライバシーポリシーの改訂、データ提供の本人同意も欠かせない。
4. レポートコレクションにユーザーを割り当て(GA360:有料版の機能)
GA4には「ライブラリ」という機能があり、これを使うことで標準的なレポートを事業部やサービスごとのオリジナルレポートとしてカスタマイズができる。
作成したレポートは左側メニューに追加でき、「レポートコレクション」としてまとめることが可能。この機能を使えば、部門やサービスごとに専用レポートを作り、関係者のみにアクセス権※を与えることができる。
たとえば、部署Aには特定のレポートを閲覧させ、他の部門にはアクセスできないように設定することも可能。
5. GTM:ゾーン機能(GA360:有料版の機能)
GTMのゾーン機能もGA360の有料版の機能にはなるが、役割に応じたGTMを用意し、タグの適用範囲をそれぞれ細かく設定できる機能だ。ゾーンを使うことで、役割に応じたGTMの管理をしつつ、全体の管理も容易になる。
第3部: Google マーケティングプラットフォーム 2025年への展望
第3部では、第1部と第2部に登壇した中村氏と藤田氏に加え、同社の杓谷氏とプン氏が話に加わり4人で、2025年の展望をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。
トークテーマ① プライバシー保護の強化について
プライバシー保護の流れは世界中で強化され、企業に対して個人データの適切な取り扱いを求める規制が拡大している。特に、欧州のGDPR(一般データ保護規則)は、個人データの収集や処理に関する厳格なルールを定め、企業に対して明確な同意を得る義務やデータ処理の透明性を求めている。
また、Cookie同意バナーがWebサイトに導入され、訪問者から明示的な同意を得たうえで、データ収集を行う企業が日本国内でも増加している。現時点で、日本において個人情報保護法や電気通信事業法の改正により、プライバシー保護の規制は強化されているものの、Cookie同意バナーを必ずしも表示する必要はない。
しかしながら、3年に一度は個人情報に関連する法律が見直されるため、今後の動向をチェックし、企業は個人データの管理をよりクリアに行う必要があるだろう。
トークテーマ② CMPツールと計測データ欠損について
また、Cookie同意の管理をサポートするCMP(同意管理プラットフォーム)の導入が進んでおり、Webサイトは訪問者からの同意を記録し、管理・適用できるようになっている。
しかし、CMPはCookieの同意を管理するためのツールのため、たとえば、計測するGA4上でCMPツールとGA4を同意モードで連動しない限り、欠損したデータの補完は行われないという。
2025年に、向けてプライバシーとデータガバナンスはますます重要になり、法的要件を見据えた準備がさらに必要になってくるだろう。これに加えて、企業が収集・分析するデータの取り扱いについては、今後さらに規制が強化される可能性が高く、適切に対応していくことが、企業の今後のビジネス戦略において重要なポイントになるだろうと総括し、セミナーを終えた。
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