アメリカ政府がWebサイトのDNSを差し押さえ、数十サイトがアクセス不可に
アメリカ国土安全保障省がインターネット上のドメイン名を差し押さえしていると、ニューヨークタイムズが2010年11月26日に報じました。
差し押さえられたサイトは、DNS(ブラウザなどのソフトが、ドメイン名を元に実際にアクセスする先のIPアドレスを調べる仕組み)が変更され、ユーザーがアクセスしようとすると、差し押さえを示す画像が置かれたページが表示されるようになっています。
ニューヨークタイムズによると、差し押さえられているのは、映画や音楽を著作権者に許可なく配布しているサイトやそうしたファイルを検索しやすくしているサイトのほか、偽造ブランドや偽造DVDなどに関するサイト。広報担当官によると、これらの差し押さえは裁判所による令状に基づいて行われているものだとのこと。
差し押さえられたドメイン名はtorrent-finder.comのほか、rapgodfathers.comなど数十にのぼる模様。
解説とWeb担の視点
差し押さえを行ったアメリカ国土安全保障省(DHS)の移民・関税執行局(ICE)は、知的財産権調整センターが属するところ。ブランド偽造品や著作権侵害品などを流通・販売させようとする人や組織を取り締まる捜査局が、著作権侵害に荷担しているサイトのドメイン名を差し押さえてアクセスできなくするのは、理に適っているように思われます。
しかし、国境を越えた仕組みであるインターネットの根幹を成すDNSを、米国の法律に基づいて米国政府が差し押さえることが適切なのかは注意するべき点です。今回の差し押さえに関しても、そうした議論がすでに発生しているようです。
このニュースを報じたTorrentFreakによると、DNS変更に関してサイト所有者やレジストラに事前の告知はなく、ICANN(ドメイン名やIPアドレスの割り当てを調整する大元の機関)のレベルで変更が行われたとの情報もあるとのこと。
また、ニューヨークタイムズによると、今回の差し押さえは著作権侵害行為に対する長期的な取り組みの1つであり、「容疑者は世界中どこにいても追い詰める」としているとのこと。
こうしたドメイン名の差し押さえは、米国の管轄内で明らかに知的財産権を侵害しているサイトを取り締まるためだけに行われるのであれば、そこに異論はありません。しかし、昨今のウィキリークスによる米国の機密情報公開への反応などを見ると、不適切な差し押さえがなされることへの不安はぬぐえません。
ところで、Web担的な視点でこの差し押さえページを見てみると、おもしろいことがわかってきます。というのも、変更されたDNSで表示されるページは、一見して画像が置かれているだけのページに見えるだけですが、実際にはアクセス解析のビーコンが仕込まれているのです。差し押さえを知らずにこうした権利侵害サイトにアクセスした人の情報を記録しているのでしょうか。
アクセス解析には、Google AnalyticsとPiwikの2種類が使われています。SaaS型のサードパーティサービスと、インストール型のオープンソースという組み合わせは、Web担当者としては参考になるのではないでしょうか。
- U.S. Shuts Down Web Sites in Piracy Crackdown(NYTimes.com)
- U.S. Government Seizes BitTorrent Search Engine Domain and More(TorrentFreak)
ソーシャルもやってます!