u++の備忘録

W杯ポーランド戦で起きた「談合」を、経済学の「ナッシュ均衡」の視点で解説する

先ほど終わったロシアW杯の日本VSポーランド戦の終盤、お互いに全く攻撃をしない状況が発生しました。

今回はこの現象を、経済学の「ナッシュ均衡」という視点で解説します。

状況の整理

全般的な仮定として、簡単のため日本とポーランドに実力差がないものとします。

お互いが攻撃する

言うまでもなく、最も望ましい状況はお互いが攻撃し合うことでした。この場合の日本・ポーランドの「利得」(どの程度良い状況かを示す値)をそれぞれ4ポイントとします。

片方が攻撃する

しかし近代サッカーでは一般的に、相手が攻撃をしていない(=引いて守っている)状況で無理やり攻撃を仕掛けるのは、反撃のリスクを負うことになり、攻撃側が不利になることが多いです。今回、日本・ポーランドともに、不利な状況になって失点することを一番恐れていました。ここでは仮に(攻撃している側, 攻撃していない側)の利得をそれぞれ(1, 5)ポイントとします。

お互いが攻撃しない

最後に、お互いが攻撃しない場合を考えます。この場合お互いに利得の差は発生しませんが、もちろんお互いにとって良い状況ではないので、利得はそれぞれ2ポイントとしましょう。

これまでの議論を表でまとめると、以下の利得表が得られます。

ポーランド|攻撃する ポーランド|攻撃しない
日本|攻撃する (4, 4) (1, 5)
日本|攻撃しない (5, 1) (2, 2)

利得表の数値は(日本の利得, ポーランドの利得)を示す

なぜ「お互いが攻撃しない」状況が生まれたか?

この状況下、なぜ「お互いが攻撃しない」という状況が生まれたのでしょうか? 単純に日本とポーランドの利得を合計すると、下記のように「お互いが攻撃する」のが全体最適のように思えます。

  • 「お互いが攻撃する」:4+4=8
  • 「片方が攻撃する」:1+5=6
  • 「お互いが攻撃しない」:2+2=4
日本の視点に立ってみる

日本の視点に立って、ポーランドが「攻撃する」場合と「攻撃しない」場合で、それぞれどう行動すべきかを考えてみます。

まずポーランドが「攻撃する」場合、日本は「攻撃する」と利得が4ポイント、「攻撃しない」と利得が5ポイントです。

次にポーランドが「攻撃しない」場合、日本は「攻撃する」と利得が1ポイント、「攻撃しない」と利得が2ポイントです。

つまり、どちらの場合も日本は「攻撃しない」方が利得が高くなります。

ポーランドの視点に立ってみる

ポーランドの視点に立って、日本が「攻撃する」場合と「攻撃しない」場合で、それぞれどう行動すべきかを考えてみます。とはいえ、日本とポーランドを入れ替えただけで考え方は全く同じです。

まず日本が「攻撃する」場合、ポーランドは「攻撃する」と利得が4ポイント、「攻撃しない」と利得が5ポイントです。

次に日本が「攻撃しない」場合、ポーランドは「攻撃する」と利得が1ポイント、「攻撃しない」と利得が2ポイントです。

つまり、どちらの場合もポーランドは「攻撃しない」方が利得が高くなります。

「ナッシュ均衡」とは

以上の考察から、日本もポーランドも「攻撃しない」のが、自分の利得を最大化する選択肢になります。全体最適を考えると「お互いが攻撃する」べきなのですが、個々の振る舞いを考えると「お互いが攻撃しない」という選択肢が正解になってしまうのです。

「ナッシュ均衡」とはこのように、お互いがお互いに対して最適な戦略を取り合っているため、これ以上戦略を変更する理由がない(安定的な)状況のことを言います。

おわりに

状況を簡略化し過ぎている部分もありますが、今回は少し理論的な面から、W杯ポーランド戦で起きた出来事について解説してみました。