やや特殊な使い方をしていることもあり, Nofioワイヤレスアダプターの活用に興味があって試してみた. 無線化には満足しているが, 動作に不安定な箇所が多いので一部不満がある. 以前ここに書いたように, 私のVRゲームの使い方は多くの人と異なる. https://under-identified.hatenablog.com/entry/vrhema-interim1 私がVRヘッドセットに求める要件を要約すると以下のようになる. Valve Index の視界にはおおむね満足しているが, ケーブル接続が引っかかりやすくとても危険である. 私の使い方的にも, 引っかかりにくいように誘導するのはかなり大変である. しかし, 無線方式のヘッドセットはほとんどが視野角が狭く, かつインサイドアウト方式のトラッキングを採用しているため, 追跡精度に違和感がある. 追跡精度と視野角にこれ以上妥協するのも気が進まない. 以上の理由から, Valve Indexを無線化するNofioに関心を持ち, 手を出すことにした. Nofio Wireless Adapter (以下, 単にNofio) は, Valve Index のケーブル接続を廃止し, 代わりにWi-Fi接続と同じ技術で映像音声を通信するという装置である. 無線Wifiルータに相当する base station と, ヘッドセット側に取り付ける子機 (公式マニュアルではheadと呼ばれている)で対になっており, ベースユニットはIndexヘッドセットと同様にDPケーブルとUSB-CケーブルでPCに接続し, 子機はヘッドセットに取り付け, 短いDPケーブルでヘッドセットのレンズに映像を送る. Nofioは起動の順番が決まっており, 手順どおりに操作しないとうまく動作しない場合が多い. まず, Steamなどでダウンロードできる専用アプリをインストールし, 起動する, それから, ベースユニットと子機の両方を機動する. 子機の電源は外付けなので, 付属していたバッテリーなどをUSB-Cで接続する. USB-Cポートは2つあるが, 電源となるバッテリーは左から順に付けないとエラーが発生する. (Nofioはエラーメッセージが出ても原因を教えてくれないことが多いので, こうやって対処法を細かく書く必要がある.) その後アプリで, Ready と表示されたら (なぜ2行なんだ?), 接続が正常にできている. このとき, ヘッドセットには「No Video Input Detected」とかそんな感じの表示が見えるだろう.*1 あとは Steam VR を起動し, 普段通りの手順でVRゲームを遊べる. Steam VR起動中は, 上記アプリの Standby が Streaming とかに変わっている.
要約
はじめに
Nofio の概要
使用手順の概要
Standby
私が主に使用したソフトは Blade and Sorcery である. Modが多いため要求スペックに幅があるが, 基本的な遊び方をしている範囲ではさほど要求スペックは高くないだろう.*2 動作が良好な場面では, 遅延や画質の劣化は気にならない.*3 起動直後にブロックノイズが目立つことがあるが, すぐに気にならなくなる. TGS2023での試遊と, ほぼ同じ品質に感じられた. そのため, 動作が良好な間は十分に満足する性能を発揮していたといえる. 赤外線ではなく電波通信であるので, 頭上で剣を振り回してもケーブルが引っかかることはないのはもちろん, 通信が妨げられることもない. 気になったのは以下の4点である. 深刻さで言えば, 最初の接続が不安定という問題以外はまだ我慢できる. だが, 思っていたよりも接続が不安定だったので, 手放しに褒められなくなった. これが本当に面倒である. ただでさえVRデバイスは数が多く, 遊ぶ前の準備手順が多い. 起動に失敗して何度かリセットが必要なことも多い. Nofioはその中でも特に, 起動後および起動中に動作が不安定になることが多い. 特にベースユニット側の起動ボタンは, 押して起動ランプがついているが, いつまで経っても反応しないということがよくある. 起動してからも, アプリのステータス表示は異常なく, Steam VR側でも何もエラーを発していないのに, ヘッドセットには一切何も映らない, ということもよくある. 何度か再起動したり, 後述のように接触不良を確認しないと解消しなかった. 次に, 起動中の不安定さである. しばらく使ってみたところ, ハード・ソフト両方が原因のことがあるようだ. 全ての製品で同一の症状があるとは限らないが, 少なくとも私のもとにある個体では, 次のような問題が多く発生した. まず, ハード面でわかったことは, 一文で要約すると, 「動かない時はレンズ側のケーブルを壊れそうなくらい強く押し込んでから再起動しろ, 本当に壊れたら知らん」である. ヘッドセット側のNofioデバイスとヘッドセットのレンズを接続するDPケーブルの, レンズ側の端子で頻繁に接触不良が起こる. Nofioのアプリのステータス表示が, 今実際にどういう状態にあるのかわかりにくいので, 不具合が起こった時は原因が特定しづらい. だがヘッドセットに何も映らない場合や, ステータスがStandbyに移行しない場合のほとんどは, DPケーブルのレンズ側の接触不良だった. とにかく強く押し込むと, 映像が回復する事が多かった. だが映像が回復しても, 常に色抜けか, あるいは砂嵐のようなノイズがわずかに走っているため, 接触不良は根本的に解消できていないと思う. 私のヘッドセットのケーブルを固定する爪が折れていて固定できない*4とか, ヘッドセット側の端子が奥まったところにあり, ケーブルを差し込みにくい形状になっているとか, ヘッドセットの設計に原因がある要素もそれなりにあるのでNofioだけのせいにするわけにはいかないが, とにかく接触不良が原因の不具合が起こりやすい.
使用中のパフォーマンス
不満がある箇所
頻繁に接続が切れる
追記: 起動時にうまく動作しないときは, 「壊れそうなくらいケーブルを押し込む」よりも「ヘッドセット側のランプの色を確認する」という方法のほうがより良いかもしれない. かなり強く押さないと接触不良になる可能性が高いということは変わりないが, 闇雲に押し込むよりも, ランプの点灯の有無を確認しながら押し込んだほうが良さそうだ. バッテリーを接続した状態で, ヘッドセット全面のランプが赤く点灯しているなら接触不良を疑うべきだろう. 通電中なら青色, Steam VR起動後ならば緑色に点灯しているのが正常な状態である.
次に, ソフト面の問題と思われるものは, VRゲームのプレイ中の遅延や接続切れである. ゲームの特定の場面で起こりやすいので, ソフト面での問題ではないかと考えている. 具体的に言うと, 処理の重い場面ではブロックノイズや遅延, あるいは音声だけ切れる事が多く, ひどいときは一瞬映像が写って数秒「NO SIGNAL」が表示されるのを繰り返したり, FPSが一桁台くらいまで急激に低下したりする, という症状がある. 例えば, スカイリムVRの序盤のヘルゲンで自由に操作できるようになる前のオープニングですら, かなりブロックノイズが見られた. それから, スピーカーからは頻繁にカチカチというクリック音が聞こえる. ファームウェアの更新後に発生頻度は少し減ったが, 今でも発生する.
それから, 最も厄介な不具合は, SteamVRのプロセスが不正終了し, プロセスが残ったまま動かなくなり, SteamVRの再起動すらできなくなるというものだ. 「vrcompositor.exeが動作を停止した」という通知が発生し, SteamVRが終了してしまう. このとき, ゲームもSteamVRも終了したにもかかわらず, ヘッドセットのスクリーンはゲーム内の画面で固まってしまう. Nofioの電源を消したり点けたりしても画面が復活し, 解決しない. SteamVRも終了しているはずなのに起動中扱いとなっているため再開できない. タスクマネージャーを見ると, vrcompositor.exe をはじめいくつかのプロセスが終了していない. 不正終了したせいで, これらのプロセスが強制終了できない. (Windowsは不正終了したプロセスを停止できないことがあるらしい. なにそれ...) こうなるとPCごと再起動しないと直らない上に, けっこう頻繁に起こるのでかなり邪魔である.
Nofio はWi-Fi接続と同じ帯域を使用するため, 近くにWi-Fi接続を使用する機器があると干渉しやすいとされている. だが, 私の場合はそのような機器がなくとも問題が発生し, なおかつ上記のように特定の状況と問題発生のタイミングが強く相関しているので, あまり関係ないと思っている.
連続稼働時間は2.5時間らしいが, 私は2時間以上連続で遊ぶことはほとんどない. 稼働時間についてもう少し言うなら, 私はよくMod開発作業をするので, 動作確認のために長時間待機状態にすることもよくある. そのため, 私にとってもバッテリーの持続時間は長いほうが好ましい. いちおうUSBポートが2つついているので, 予備バッテリーを用意して連続稼働時間を延長することは可能である. 付属バッテリーはランプの光っている位置で残量がわかるらしいが, どこが光っているのかわかりにくい. 自分はそこまで気にならないだろうと思っていたが, 思ったよりうるさかった. 実物が届く前から, 公式Discordやその他のSNSの投稿から, 起動時の内蔵ファンの駆動音がうるさいという声のあることは把握していた. 自分はそこまで気にならないだろうと思っていたが, 30分くらい動かしていると, フル稼働時のグラボのファンくらいうるさくなる. VRしながら録音するような人は差し障りがあるかもしれない. 発熱も含め, 私もこれはさすがに少し心配になった. Nofioの公式Discordでは, ファンの開口部が狭くて排気が滞っているのが原因だとして, 外したり隙間の多い代替パーツを自作したりしているユーザーが多く見られた. しかし, Nofio側は「ファンの蓋を外すと補償対象外になるからやめておけ」と警告を発した. ユーザーの反応は, バッテリーの配達が遅いとか, 返金要請になかなか応じてくれないとか, 最近は他の場面での対応の不満を投稿する人が多いのも相まって, 反抗的な内容が目立っている. 「どっちにしろ壊れても補償してくれないだろ」とか「蓋は外してもすぐ付け直せるのにどうやって外したかどうか判定するの」とか, そんな感じである. Nofio側の投稿, この投稿にも文句言ってる人がいる Hey #Nofioheads!! Just a reminder ✨please don’t remove your fan covers✨ Having issues with your hardware?? hit us up on [email protected] pic.twitter.com/eyTJxa7R9t 私がVRデバイスに要求しているものは, 多くのVRユーザーとは異なっている. そのため, Quest などの市販のワイヤレスヘッドセットを採用するのではなく, VR Index を無線化するという変則的なアプローチを選ぶことになった. TGS2023の試遊で得た体験から, Nofioに期待できそうだと考え購入した. 果たして一定の場面では期待通りのパフォーマンスを得られたが, 一方で期待を下回るパフォーマンスとなる場面も目立つ, 明らかにNofio側のバグが原因と思われる不具合も目立った. プレイ中に頻繁に起こるパフォーマンス低下や接続不良はゲームの没入感を大きく損ねる. Nofioには今後の改善に期待したい.
バッテリーがすぐ切れる
バッテリーが切れる前に体力が切れる. そのため, 通常使用している範囲では, Nofioのバッテリーに不満はない. だが, バッテリー接続中は待機電力をそれなりに消費するのか, つけっぱなしにしているとすぐ電力を使い果たす. そのため, 使用を終えるたびにケーブルを外す必要がある. これは面倒である.
バッテリー残量がわかりにくい
ファンがうるさい
結論