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沢尻エリカ主演映画『ヘルタースケルター』ネタバレ感想


■あらすじ『完璧な美貌で芸能界の頂点に君臨するトップ・モデル:りりこ(沢尻エリカ)。しかし、彼女には絶対に知られてはならない秘密があった。彼女の美しさは、ほとんど全身に施された美容整形の賜だったのである。だが、整形の後遺症は確実にりりこの身体を蝕んでいた。そんな中、美容クリニックに関する事件を追う検事の影がりりこに迫る。さらに、生まれたままの美しさでりりこの存在を脅かす後輩モデルまで出現し、次第にりりこは精神的にも追い詰められ、やがて恐ろしい事件が…!岡崎京子の伝説的コミックを沢尻エリカ主演、蜷川実花監督で完全実写映画化!衝撃の結末に括目せよ!』



先日「GYAO!」でやっていたので何となく鑑賞。とりあえず、キャストが豪華な映画ですねー。沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子、新井浩文、鈴木杏、寺島進、哀川翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおりなど、ベテランから若手まで有名俳優がズラリと並ぶ様は圧巻でした。

また、世界的なフォトグラファーとして有名な蜷川実花が監督を務めただけあり、映像はさすがに綺麗です。原色を多用したビビッドで幻想的なビジュアルイメージが(好き嫌いはともかく)、現実から乖離した主人公の内面を如実に表現していて引き込まれました。こういう映像作品における重要なポイントって、「自分のスタイルを確立できるかどうか」ということなんですよね。

どの作品を観ても「これは○○監督の映画だ!」とはっきり分かるような独特の世界観を構築できる人は、それだけで映画制作においては大きなアドバンテージを持っています。そういう点で蜷川実花は、「単なる写真家がちょっと映画を撮ってみました」的なポジションからは一歩抜きん出ていると言っていいのかもしれません。

さて、そんな蜷川さんがどのような経緯で『ヘルタースケルター』を撮ることになったのか?実は元々、前作の『さくらん』を撮る前から原作マンガの『ヘルタースケルター』が好きで、「これを映画化したい!」と言い続けていたそうです。しかし、当時は『ヘルタースケルター』の映画化権が他の会社に押さえられていたので、先に『さくらん』を撮ることになりました。

その後も『ヘルタースケルター』の企画を諦めることなく交渉を続け、「映画化権が空きましたよ」との知らせを受けた蜷川さんは「待ってました!」とばかりに速攻で権利を獲得。ようやく念願の企画がスタートした、というわけです。

この映画における最大の功績は、何と言っても”主人公を沢尻エリカが演じたこと”でしょう。蜷川監督が「りりこ役は沢尻エリカしか思い浮かばなかった」と切望しただけあり、スキャンダラスなプライベートと劇中のキャラクターが絶妙なマッチングを実現。

しかし、沢尻エリカの起用に関して、周囲のスタッフは不安を感じていたそうです。なぜなら、当時の沢尻エリカは、”あの事件”以来テレビや映画に登場することなく、4年以上も女優業から遠ざかっていたからです。”あの事件”とは……そう映画『クローズド・ノート』の初日舞台挨拶で起きた「別に」事件!

2007年に公開された『クローズド・ノート』は、監督:行定勲、主演:沢尻エリカで制作された日本映画で、共演に伊勢谷友介、永作博美、竹内結子など、豪華なキャスティングも話題になりました。ところが、その舞台挨拶を行っている最中、沢尻さんは一人だけ不機嫌そうな表情を浮かべて腕を組み、無言で会場を睨み付けていたのです。

司会者の女性から「一番思い入れのあるシーンは何ですか?」と聞かれても、「特に無いです」などとふて腐れた態度で答え、映画の宣伝に協力しようという様子が全く見えません。そして、「撮影中に手作りのクッキーを差し入れた」というエピソードに触れ、「どんな思いでクッキーを焼かれたのですか?」と聞かれた時の答えに全員驚愕!

「別に」


この発言が日本中の視聴者に衝撃を与え、沢尻さんに批判が殺到。凄まじいバッシングを受けた沢尻さんは、一時は「嫌いな女優ナンバーワン」にランキングされるなど、仕事にも甚大な影響を及ぼしました。これ以降、しばらくの間、女優業を休まざるを得なくなってしまったのです。

『ヘルタースケルター』は、そんな沢尻さんが4年半ぶりに映画へ復帰するという点でも注目されました。そして沢尻さんも本作に出演できることを喜んでいたようです。以下、この映画に関する沢尻エリカのコメントより↓

きっと大変な撮影になるだろうという覚悟はしていました。それは重いシーンが多いことではなく、ましてや脱ぐ脱がないということでもなく、自分のお芝居がどこまで振り切れて、極限まで出せるかということ。自分にとっては挑戦でしたが、実感したのは、やっぱり映画の現場が好きだということですね。その現場に戻って来られたことが、一番大きかったです。これが私の生き甲斐なんだなって。 (『ヘルタースケルター』劇場パンフレットのインタビューより)

また、蜷川監督は沢尻エリカの起用に関して以下のように語っていました。

やっぱり、エリカがやるからリアリティがあったし、たぶん彼女にしか見えてない景色っていっぱいあると思うんですよ。もちろん、必ずしも演じる人が同じ体験をしてなきゃいけないってことはないんだけど、でもやっぱりあれだけ歓声も罵声も浴びて、持ち上げられて落とされて、どこに行っても何だかんだ言われる、台風のド真ん中にいた人じゃないと見えない景色ってあると思うんです。それはやっぱり、彼女があの役をやる時に必要なことだったと思うんですよね。

この蜷川監督の言葉通り、もし沢尻エリカが主役じゃなかったら、本作の価値は大きく変わっていたでしょう。単に”話題性”という意味以上に、物語の設定と役者の人物像がこれほどシンクロした配役は極めて珍しいと言わざるを得ません。観客の興味を煽るにはうってつけのキャスティングであり、そういう点においても沢尻エリカの起用は大正解だったと思います。

特に終盤、精神的にどんどん崩壊していくりりこが「もうこんな仕事やりたくないよ〜!」と泣き叫ぶシーンに至っては、沢尻エリカが役になり切っているというよりも、エリカ様自身の本音が爆発したようなリアリティに満ち溢れ、映画の内容以上に虚構と現実が交錯した凄まじい名場面に仕上がっていました。

ただ、濃厚な映像とは対照的に中身は薄い(苦笑)。全身美容整形でトップモデルに登りつめた主人公が、次第に精神のバランスを崩し、狂気の世界へ追い詰められていく様を描いたストーリー自体は、正直あまり興味をそそられないというか、世間で言われているように「『ブラックスワン』の縮小版」という感じでしたねえ。登場するキャラクターのほとんど誰にも感情移入できない点も、評価が微妙な原因かもしれません。


とはいえ、本作の白眉は先にも書いた通り”主人公を沢尻エリカが演じたこと”であり、エリカ様のヌードを拝める、あるいは窪塚洋介や哀川翔にヤラれまくるエリカ様を堪能できるということが最大の価値なのですよ。まあ、途中で”綾野剛にヤラれまくる寺島しのぶ”という誰得なシーンも出て来ますが(笑)、そういう部分も含めて色んな意味で衝撃的な映画でした(^.^)

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