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なぜ『バトルシップ』はアメリカでコケて日本でウケたのか?

映画『バトルシップ』

映画『バトルシップ』


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて先日、BS-TBSでSFアクション映画『バトルシップ』が放送されました。

本作のあらすじをざっくり紹介すると「地球に攻めてきた宇宙人を倒すためにアメリカ海軍と日本の海上自衛隊が力を合わせて戦う」という内容です。

まぁ、いわゆる「地球侵略もの」であり、海外では『宇宙戦争』や『インデペンデンス・デイ』や『世界侵略:ロサンゼルス決戦』など、日本でも『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』や『惑星大戦争』など過去から現在に至るまで数多くの作品が作られてきました。

そんな”王道エンタメ大作映画”とも言うべき『バトルシップ』ですが、なんと本国では全くヒットしなかったらしく、製作費2億900万ドルに対してアメリカ国内の興行収入は6,500万ドル、全世界でも3億300万ドルという成績だったのです。

「予算が2億ドルで売上げが3億ドルなら黒字じゃないの?」と思う人がいるかもしれませんが、基本的に興行収入の半分は映画館側の取り分になるので、制作側に入るお金は約1億5000万ドル(実際は諸経費やら何やらを引かれてもっと少なくなる)。つまり、単純計算で5000万ドルほどの赤字なんですよ。

まぁ公開後には配信や円盤の売上げ、TVの放映権料などが加算されるので赤字額はそこまで大きくないかもしれません。

しかし観客の評価はイマイチで、ロッテントマトの支持率も34%と全く振るわず、ローリング・ストーン誌では「2012年の年間ワースト映画」の一つに取り上げられるなど、様々な場面で酷評されたのです。

ロッテントマトのバトルシップ評価

ロッテントマトのバトルシップ評価

おまけに第33回ゴールデンラズベリー賞では最低作品賞、最低監督賞、最低脚本賞、最低助演男優賞(リーアム・ニーソン)、最低スクリーンアンサンブル賞など計6部門にノミネートされ、最終的に最低助演女優賞(リアーナ)を受賞してしまいました、トホホ。

そんな『バトルシップ』ですが、どういうわけか日本では異様に人気が高く、2015年に「日曜洋画劇場」で放送された時は、実況や感想が続々とTwitter(現X)に投稿され、一時はトレンドワードの半分以上がバトルシップ関連で埋め尽くされるなど、大変な盛り上がりを見せたのですよ。

さらに、2017年に「金曜ロードショー」で放送が決まった際には予想外の事件が勃発!

本来は6月23日に放送される予定だったのですが、米海軍のイージス駆逐艦が静岡県で衝突事故を起こしたため急遽中止になってしまったんですね(今考えると「TV局側の対応が少し過剰なのでは?」という気がしなくもありませんが…)。

そしたらなんと、すでに『バトルシップ』を観る気満々だった大勢のファンたちが放送開始時間の6月23日21時に動画配信サービスやDVD等を再生して、勝手に実況中継をやり始めたんですよ。

そのせいで、物語の進行とともに「チキンブリトー!」とか「みょうこう!」とか「戦艦が簡単に沈むか!」などの熱い実況ツイートが続々と投稿され、『バトルシップ』が放送されていないにもかかわらずTwitterのトレンドワード1位に「バトルシップ」が表示されるという前代未聞の珍事が勃発したのです(皆どんだけ好きなんだよw)。

このため、事情を知らない人たちがTwitterを見て勘違いし、「あれ?たしか放送中止になったはずでは…」「金ローの『バトルシップ』って今日だったっけ?」「だが今日じゃない!」など、大混乱が巻き起こったらしい(笑)。

それにしても、一体なぜ『バトルシップ』は日本でこんなにウケたのか?そしてなぜアメリカではコケたのでしょうか?

…みたいなことをX(旧Twitter)でつぶやいたら非常に多くの人から意見をいただいたので、いくつか取り上げてみたいと思います。

※以下、ネタバレしているので映画を観てない人はご注意ください。

 

●海上自衛隊が活躍するから?
本作の主人公はテイラー・キッチュ演じるアメリカ海軍のアレックス大尉で、海上自衛隊の護衛艦「みょうこう」のナガタ・ユウジ艦長(浅野忠信)とは犬猿の仲だったものの、突然現れた異星人を倒すために共闘している内に友情が芽生えるという、一種の「バディ・ムービー」なんですよね。

そこが見どころの一つであり、非常に面白くてワクワクする部分ではあるんですけど「逆にそれがプライドの高いアメリカ人の神経を逆なでしたのでは?」という意見がありました。

たしかに日本の映画なら自衛隊が活躍するシーンは普通に見かけますが、ハリウッド映画で海上自衛隊が米海軍と共に戦う場面は珍しく、それ故に日本人は大喜びしたもののアメリカの観客は「なんで日本の自衛隊がアメリカ軍と同列の扱いなんだよ!」と不満に感じたのかもしれませんねぇ。

●古い戦艦で戦うから?
日本人は古くから伝わる先人の知恵や技術を尊重できるが、アメリカ人は「最新の技術が一番優れているに決まってる」という考え方に囚われているから共感できなかったのでは?という意見もありました。

最新装備のイージス艦でも倒せない超強い異星人を、博物館に飾られているような旧式の戦艦で勝ってしまうという展開に対して「熱い!」と感じるか「嘘くさい」と感じるかの違いなのかなぁ。

●原作がゲームだから?
『バトルシップ』の原作はハズブロ社のボードゲームで、アメリカ人は元ネタを知っているために「ボードゲームの実写化」という目で観てしまうが、日本人はそんなことを(ほとんど)知らないので普通のSF映画として観ているからでは…という説(なるほど、ありそうw)。

●大艦巨砲主義だから?
現代の戦争において戦艦メインの戦術はもはや時代遅れだが、日本人はいまだに巨大戦艦を動かしてデカい主砲をぶっ放すシチュエーションにロマンを感じるから…という説。たしかに『インデペンデンス・デイ』などは戦闘機がメインだし、そっちの方がアメリカではウケるのでしょうか?

●宇宙戦艦ヤマトが好きだから?
「退役した旧世代の戦艦を修復して強大な異星人に立ち向かう」という展開はまさに『宇宙戦艦ヤマト』であり、日本人はそういうのが大好きだから!という説。まぁアメリカ人は『宇宙戦艦ヤマト』をあまり知らないでしょうし、全体的にちょっとアニメっぽい感じがするんですよね、『バトルシップ』って(その辺がウケた要因なのかも…?)。

●艦これファンが食いついたから?
あと『艦これ』が流行っていたからでは?という説もありました。『艦隊これくしょん -艦これ-』は太平洋戦争時に実在した戦艦や巡洋艦や駆逐艦などを擬人化した育成シミュレーションゲームで、2013年にサービスを開始し、2015年にはアニメ化もされて大人気に。

そして『バトルシップ』が地上波で放送された際、たまたま視聴していた艦これファンの間で「でも今の駆逐艦はすごいぞ。最高だ。」というセリフが急速に広まり、駆逐艦娘たちを愛でるセリフとして定着してしまったのだそうです(なるほど、そういう影響もあるのかw)。

映画『バトルシップ』

映画『バトルシップ』


というわけで、「なぜ『バトルシップ』はアメリカでコケて日本でウケたのか?」に対する皆さんの意見や仮説をいくつか取り上げてみました。真相はさておき、「こんなに反響があるのか!」と改めて『バトルシップ』の人気の高さに驚かされましたね(^.^)

 

『天空の城ラピュタ』の舞台裏を綴った書籍「もう一つのバルス」

天空の城ラピュタ

天空の城ラピュタ


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて本日、金曜ロードショーにて『天空の城ラピュタ』が放送されました。

ご存知、宮崎駿監督が1986年に制作した劇場アニメで、公開から38年経った現在でも多くのファンから愛され続け、テレビ放送の度にSNSで話題になるなど、まさに「不朽の名作」と言っても過言ではないでしょう。

というわけで本日は、『天空の城ラピュタ』がどのように制作されたのか?その舞台裏を詳しく綴った一冊の本をご紹介します。
本のタイトルは「もう一つのバルス」、著者は木原浩勝さん。

木原さんといえば『新耳袋』シリーズなどで知られる小説家ですが、実は以前スタジオジブリに制作進行として参加しており、『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』を担当していたのですよ。

「制作進行」とは、簡単に言うと原画や動画などアニメ制作に必要な素材を発注・回収し、各々の工程が支障なく進捗するようにスケジュールを管理する重要な役割です(2014年に制作進行の仕事ぶりを描いたアニメ『SHIROBAKO』がヒットしたので、何となくイメージが頭に浮かぶ人もいるかもしれません)。

ただし、『SHIROBAKO』があくまでも「近年の制作進行の業務を分かりやすく脚色したフィクション」だったのに対し、木原浩勝さんが働いていた1980年頃はもっと過酷な現場だったらしく、書籍では以下のように語っていました(ジブリに入る前に勤めていた某アニメ会社での出来事↓)。

入社初日から、僕は徹夜でアフレコ用に”トレスマシン”で原画をセル画に転写した。翌日の昼、制作デスクに着替えを持ってこいと言われて帰宅し、すぐに出社。そこから3日連続の徹夜作業。次の日は半日休んで、そこからは会社の仮眠室に寝泊まり生活となった。帰るのは、月に1日、家賃を払う日だけ。

「もう一つのバルス」より

どう考えてもブラック極まりない職場ですが、木原さんによると「僕だけが特別大変だったわけではない。当時のアニメ制作会社の仕事はどこも似たり寄ったりだったのだ」とのことで、80年代の制作進行がいかにハードな職業だったか分かるでしょう。

そんな厳しい状況の中でも、宮崎駿監督に憧れてアニメ業界に入ってきた木原さんにとってはやりがいに溢れ、ジブリで働けることが決まった時は嬉しくて仕方がなかったらしい。

そして『天空の城ラピュタ』の制作中は、かなり宮崎監督と近い距離で仕事をしていたらしく、「木原くん、これどう思う?」などと内容に関して意見を求められることも度々あったそうです。

実は『天空の城ラピュタ』のストーリーが決まるまでに「ラフコンテ」と呼ばれるものが何枚も描かれ、木原さんはそれを見せてもらっていたのですが、完成した決定コンテを見たら「カットされた場面がかなりあった」とのこと。

例えば、ドーラたちのタイガーモス号が戦艦ゴリアテを追ってラピュタを目指す場面で、宮崎監督は「長距離移動の前に水や食料や燃料などの補給をするはずだ」と考え、ラフコンテにそういうシーンを描いていたそうです。しかし…

しかしご存知の通り、描かれてさえいれば、リアリティ溢れた映画となった部分すべてが未使用に終わっている。理由は言うまでもない、上映時間を短くするためだ。残された時間を少しでもパズーとシータのドラマのために取っておきたかったのだ。

「もう一つのバルス」より

その他にも、ストーリー中盤に「フラップターを発明した科学者」という新キャラクター(絵コンテには「ドーラの愛人」と書かれていたらしい)が登場する予定でしたが、宮崎監督は「この段階で新キャラが出てくるのはあり得ないだろう」と考え、結局ボツにしたそうです。

このように、『天空の城ラピュタ』には「初期のコンテに描かれていたものの使用されなかったシーン」や「実現しなかったアイデア」などが多数存在したらしく、ファンとしては「上映時間が長くなってもいいから観たかった!」という気持ちにならざるを得ませんよねぇ(「カットしなければ公開日までに作業が終わらない」という事情もあったようですが…)。

なお、ロボット兵を再起動させる呪文が「リテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール」と長いのに、ラピュタを滅ぼす呪文が「バルス」なのは短すぎるのでは?と昔からファンの間で議論になっていましたが、木原さんによると「パズーとシータが二人して長い呪文を口にし始めれば、ムスカが銃を撃ってくる」から。

つまり、あの場面では「ムスカが銃を撃つ暇がないぐらい短い呪文」を唱えなければならず、だからこそ一言で言える「バルス」になったんですね。

というわけで、『天空の城ラピュタ』の制作進行を務めた木原浩勝さんが、当時現場で見聞きした様々なエピソードを綴った「もう一つのバルス」をご紹介しました。非常に面白い本なのでオススメです(^.^)

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