感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ
大平信孝
かんき出版
感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ(大平信孝)の要約
相手のペースを尊重し、適切な手法を活用することで、リーダーは部下の潜在能力を引き出し、目標達成に向けて効果的にチームを導くことができます。それは単なる効率化だけでなく、メンバー1人1人の成長と組織全体の発展につながる、持続可能なアプローチとなるのです。本書の34のコツを使い倒すことで、メンバーとの関係をよりよいものにできるはずです。
「自分2:相手8」という会話の黄金比率で、相手のやる気を引き出そう!
「自分2:相手8」の割合で話すと相手の行動スイッチが入る。(大平信孝)
人を動かすためのコミュニケーションについて、目標実現の専門家・メンタルコーチの大平信孝氏が興味深い見解を示しています。 相手を無理に動かそうとする従来のアプローチには大きな問題があります。なぜなら、それは私たちの都合を一方的に押し付けることになるからです。このような方法では、相手の本当の気持ちや状況を理解することができず、結果として期待する行動変容を引き出すことは困難です。
しかし、課題を「共同のもの」として捉え直すことで、状況は大きく変わります。アドラー心理学や脳科学、そしてコーチングの知見を活用することで、より効果的なコミュニケーションが可能になるのです。
特に重要なのが、会話における「自分2:相手8」という黄金比率です。相手に十分な発言の機会を与えることで、自然と行動変容のスイッチが入りやすくなります。これは、相手が自身の考えを言語化する過程で、自己理解が深まり、自発的な行動につながるためです。
また、感情面での課題については、重要な視点の転換が必要です。私たちがコントロールできない相手の感情については、それを自分の課題として抱え込まず、切り離して考えることが賢明です。代わりに、相手の話に耳を傾け、適切な質問を投げかけることで、相手自身が解決策を見出せるよう支援することが効果的です。
このアプローチでは、否定的な態度を避けることも重要です。相手も自分も否定せず、建設的な対話を心がけます。例えば、「いつならできそう?」というような、相手の主体性を尊重した問いかけを活用することで、より前向きな反応を引き出すことができるようになります。
問題解決においても、まず相手の「つまずきポイント」を理解することから始めます。これにより、相手が直面している具体的な課題が明確になり、より効果的なサポートが可能になります。 このように、相手の立場に立ち、共感的な理解を示しながら対話を進めることで、無理のない、そして持続的な行動変容を促すことができるのです。
4つの承認で相手との距離を縮めよう!
「4つの承認」を使いこなすと相手との距離が縮まる。
相手の行動変容を促すためには、適切な承認の方法を知ることが重要です。大平氏は、効果的な承認には4つの種類があると指摘しています。
まず、「結果承認」について考えてみましょう。これは目標や課題に対して達成された結果を認めることです。例えば、営業目標を達成した社員に対して「今月の売上目標、達成できましたね」と具体的な成果を認めることで、相手は自身の努力が実を結んだことを実感できます。
次に「行動承認」があります。これは結果に至るまでのプロセスや努力を認めることです。たとえ目標達成には至らなくても、「毎日早く出社して準備されていましたね」「お客様のニーズを丁寧にヒアリングされていましたね」というように、具体的な行動を承認することで、相手は自身の取り組みの価値を再確認できます。
3つ目の「存在承認」は、より根本的な承認方法です。これは相手の存在そのものを認めることを意味します。「あなたがいてくれて助かります」「チームにとってなくてはならない存在です」というメッセージは、相手の自己肯定感を高め、より積極的な行動を引き出すことができます。
そして「第三者の承認」は、他者からの評価や反応を伝えることです。「お客様から、あなたの対応が丁寧だったと好評でしたよ」「他部署の方があなたの仕事ぶりを高く評価していました」というように、第三者の視点から見た価値を伝えることで、より客観的な承認となります。
これらの承認を効果的に行う際、大平氏は相手の名前を呼びかけることの重要性も強調しています。名前を呼ぶことで、メッセージがより個人的で直接的なものとなり、承認の効果が高まるとされています。「田中さん、先日のプレゼンテーション、とても分かりやすかったですよ」というように、名前を添えることで、承認のメッセージがより心に響きやすくなります。
このように、相手のできているところを見つけ、適切な承認を行うことで、相手は自身の価値や可能性を再認識し、より積極的な行動変容へとつながっていくのです。承認は単なる褒め言葉ではなく、相手の成長を支援する重要なコミュニケーションツールとして機能します。
相手の経験値を上げるのが「行動目標」。より高みを目指すために必要なのが「結果目標」。
目標設定において、「行動目標」と「結果目標」を適切に使い分けることは、相手の成長を支援する上で重要な要素となると大平氏は言います。
行動目標は、相手の経験値を着実に積み上げていくために設定される目標です。例えば、売上アップのために「1日3人の新規顧客にアプローチする」といった、具体的な行動レベルの目標を指します。これらは日々の積み重ねによって習慣化され、確実な成長につながっていきます。
行動目標の特徴は、その達成が比較的容易に確認できる点にあります。実行したかしないかが明確であり、相手自身も進捗を実感しやすいのです。また、小さな成功体験を積み重ねることで、自己効力感が高まり、より大きな挑戦への意欲も生まれてきます。
一方、結果目標は相手がより高いレベルを目指すために設定される目標です。「売上を前年比120%に増加させる」といった、具体的な数値や達成基準を伴う目標がこれにあたります。結果目標は、現状の自分を超えるための明確な指標となります。
結果目標の重要な点は、それが相手にとって適度なチャレンジとなることです。あまりに容易すぎる目標では成長の機会が限られ、逆に非現実的に高すぎる目標では挫折感を味わう可能性があります。相手の現在の能力レベルや環境を考慮しながら、適切な結果目標を設定することが求められます。
効果的な目標設定では、これら2つの目標をバランスよく組み合わせることが重要です。結果目標が方向性を示す羅針盤だとすれば、行動目標は実際にその方向に進むための具体的な一歩一歩となります。
例えば、「年間売上1億円達成」という結果目標に対して、「毎日5件の商談を実施する」「週1回の商品研修に参加する」といった行動目標を設定することで、着実な成長を促すことができます。 このように、行動目標と結果目標を適切に設定し、相手と共有することで、より効果的な成長支援が可能となります。日々の具体的な行動の積み重ねが、最終的な大きな目標の達成につながっていくのです。
相手のペースを尊重し、適切な手法を活用することで、リーダーは部下の潜在能力を引き出し、目標達成に向けて効果的にチームを導くことができます。それは単なる効率化だけでなく、メンバー1人1人の成長と組織全体の発展につながる、持続可能なアプローチとなるのです。本書の34のコツを使い倒すことで、メンバーとの関係をよりよいものにできるはずです。
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