SAME AS EVER この不確実な世界で成功する人生戦略の立て方 人の「行動原理」が未来を決める
モーガン・ハウセル
三笠書房
SAME AS EVER (モーガン・ハウセル)の要約
世界は約10年周期で混乱が訪れますが、これは歴史的な必然といえます。一見して壊滅的な出来事も、確率の高い小さな出来事の積み重ねから生じています。投資や人生において重要なのは、悲観主義者のように慎重に計画を立て、楽観主義者のように夢を持つことです。短期的には困難に見えても、長期的には物事はうまく進むものです。
正しい投資法とは?時間を味方につけること
皮肉なことに、市場が暴落しないと保証されているとき、より現実的にいえば、人々がそう思っているときのほうが、市場が暴落する可能性ははるかに高いのだ。安定だけを考えると、不安定を引き起こすほど資産価格をつり上げる方向へと向かう賢明で合理的な動きが生まれる。安定は不安定化するのだ。(モーガン・ハウセル)
市場における最大の皮肉は、安定性への過度な確信が不安定性を生む源となることだと投資家のモーガン・ハウセルは指摘します。市場参加者が暴落はないと確信している時こそ、実は暴落のリスクが最も高まっているのです。この現象は、集団的な安心感が資産価格の過度な上昇を引き起こし、それが結果として不安定性を増幅させるためです。(SAME AS EVERの関連記事 )
この原理は、人気絶頂期に番組を終了させることを選択したコメディアンのジェリー・サインフェルドの判断に通じるものがあります。サインフェルドは、頂点を知るには必然的に下降を経験しなければならないという事実を理解していました。
一方、金融市場には異なる力学が働いています。市場参加者の大多数は、サインフェルドのような冷静な判断力を持ち合わせていません。彼らは常に頂点を知りたがり、その結果として行き過ぎた行動を取ってしまいます。市場が適正水準を超えて急激に変動するのは、このような人間心理が根底にあるためです。
私たちは物事には頂点があることを理解し、投資を行うべきなのです。投資の成功は、時間軸の設定と密接に関係しています。株式市場は長期的には報酬をもたらしますが、短期的な利益を追求すると、むしろペナルティを被る可能性が高まります。実際、アメリカ株式市場のデータを分析すると、およそ10年以上の投資期間において、最も安定したリターンが得られることが分かっています。
投資の失敗事例を振り返ると、その大半は投資家が「最適な」投資期間を短縮しようとした結果であることが明らかです。市場は、参加者の忍耐力を試すかのように、短期的には予測不可能な動きを見せます。
しかし、適切な時間軸で臨めば、市場は投資家の辛抱強さに報いてくれるのです。 このように、市場の本質を理解し、適切な時間軸で投資に臨むことが、成功への重要な鍵となります。過度な期待や性急な判断は、しばしば望ましくない結果をもたらすことを、私たちは歴史から学ぶことができます。
世の中の行動パータンを読むことが重要な理由
世の中は十年に1度くらいの割合でおかしくなると、心に留めておいたほうがいい。なぜなら、歴史的に見てそうだからだ。世の中がおかしくなる確率など低いように感じられるので、そんなことが繰り返し起こるはずがないと思いがちだ。しかし、何度も何度も起こっている。
世界の歴史を紐解くと、約10年周期で大きな混乱が訪れることが分かります。この周期性は偶然ではなく、人間社会に内在する特徴の一つと考えられます。多くの人々は、そのような大きな混乱が起こる確率は極めて低いと考えがちですが、歴史は繰り返し私たちにその誤りを示してきました。
実は、一見して壊滅的に見える出来事も、その本質を見極めれば、確率の高い小さな出来事が積み重なった結果にすぎません。この視点は、将来を見通す上で重要な示唆を与えてくれます。私たちは常に、次なる混乱の種が既に蒔かれている可能性を考慮に入れる必要があるのです。
投資や人生設計において、一見相反する楽観主義と悲観主義の両方を持ち合わせることが、長期的な成功への鍵となると著者は指摘します。
悲観主義者のように貯蓄し、楽観主義者のように投資する。悲観主義者のように計画し、楽観主義者のように夢を抱く。
この二面性は、一見矛盾しているように思えます。 多くの人は、自身を楽観主義者か悲観主義者のどちらかに分類しがちです。しかし、現実の世界では、状況に応じて両方の視点が必要とされます。時と場合によって、楽観的であるべき時もあれば、悲観的な見方が必要な時もあるのです。
この両者のバランスを取ることは確かに容易ではありませんが、歴史上の成功事例を見ると、ほぼすべてにおいてこの原則が当てはまっています。 投資において最も重要なのは、大きなリターンを追求することではなく、経済的な破綻を避けることです。
なぜなら、破綻を避けながら投資を継続できれば、複利の力が驚くべき効果を発揮し、結果として最大のリターンをもたらすからです。この原則は、短期的な利益を追求するあまり、長期的な視点を見失いがちな現代において、特に重要な意味を持ちます。
歴史から私たちが学べる最も重要な教訓の一つは、短期的な視点では物事はうまくいかないように見えても、長期的な視点に立てば、多くの場合うまくいくということです。これは投資に限らず、人生の多くの局面に当てはまる普遍的な真理といえるでしょう。
私たちは目先の変動に一喜一憂するのではなく、より長い時間軸で物事を捉える必要があります。 このような長期的な視点と、楽観主義と悲観主義のバランスの取れた判断力は、投資の成功だけでなく、人生における様々な選択においても重要な指針となります。
短期的な利益や損失に囚われることなく、長期的な視点を持ち続けることで、私たちはより賢明な判断を下すことができるのです。 歴史は繰り返し、この原則の正しさを証明してきました。世界は定期的に混乱に陥りますが、それを乗り越えて成長を続けてきたのです。
この事実を心に留めておくことで、私たちは将来の不確実性に対してより良く備えることができます。それは単なる備えにとどまらず、機会を活かすための重要な知恵となるのです。
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