電撃文庫で主に書いてます。猫と百合と古武術と宮本武蔵を愛している。第8回歴史・時代小説大賞の奨励賞をいただきました。ご依頼はDMで。ほしいものリスト公開しましたhttps://t.co/R4wW9rcW8N…
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戯作者(小説家)です。 代表作『おもちゃ絵芳藤』(文藝春秋)、『廉太郎ノオト』(中央公論新社)など。近刊『憧れ写楽』(文藝春秋)、『二月二十六日のサクリファイス』(PHP研究所)など。 実態は病的なスピッツファン。操觚の会会員。発言はすべて個人的見解です。
古流剣術とするにはあまりに素肌剣術っぽすぎるし、かといって素肌剣術とするには古流の息吹を感じるのだよなあ…
2015-02-19 18:29:04和月伸宏先生の代表作の一つ、「るろうに剣心」の主人公・剣心やその師匠である比古清十郎が使っている「飛天御剣流」、これって本当に古流剣術なのか? という考証企画です。
2015-02-19 20:44:59まず、古流剣術とはなにか、という話をしておきます。剣術というのは大きく分けると介者剣術と素肌剣術に分けることができます。簡単に言うと、鎧を着ているのを前提とする介者剣術と、平服であること前提の素肌剣術に大別できます。
2015-02-19 20:47:29そのうち、介者剣術はほぼ古流です。では、素肌剣術は古流ではないかというとそういうこともなくて、有名な柳生新陰流も古流剣術ですが平服であることを前提とする素肌剣術の側面が多いそうです。
2015-02-19 20:50:33では何を以て古流とするか、という話になってきますが、ここでは「古流=介者剣術」、「当流=素肌剣術」として扱うものとします。よって、今回の設問は、「飛天御剣流ははたして戦国時代の成立か、それとも江戸時代の成立か」ということになります。
2015-02-19 20:54:13原典によれば応仁の乱の頃に生まれたらしいのですが、いささか飛天御剣流の技の中には不思議な技法があります。
2015-02-19 20:55:21まず疑問なのは、抜刀術の双龍閃。そもそも抜刀術自体が平時の技術であるという側面も強いのですが、古流にも抜刀術を備えたものがあるのでそこはツッコまないことにします。それを抜きにしても、双龍閃は古流っぽくない。
2015-02-19 20:58:34双龍閃というのは、第一撃目の横薙ぎを外しても鞘による第二撃で確実に相手を倒す、という技なのですが、この技を使うためには帯から鞘ごと刀を抜いておかなくてはなりません。しかし、戦国時代まで使われた太刀は帯から吊るす(佩く)ものなので容易に帯から取り外しできません。
2015-02-19 21:03:40また気になっているのは龍巻閃。こちらは相手の攻撃をかわして遠心力のかかった一撃を背中にぶち込むという技なのですが、剣心さん、そこ、鎧を着ているときには厳重に防護されているところやで……(事実、刀狩の張戦では張に致命打を与えることが出来なかった)
2015-02-19 21:09:03さらに気になるのは、剣心がほとんど柔術系の技術を用いていないということ。唯一あるとすれば畳返しがありましたが…。古流剣術の場合、剣術だけではなくほかにも長得物(槍薙刀)、小太刀、柔術などを伝えている場合が多いのですが、飛天御剣流にはそれがないようです。
2015-02-19 21:12:55まずは、龍鎚閃と龍翔閃。これらはそれぞれ上空からの攻撃と対空迎撃技なわけですが、これ、戦国時代には別の役割があったのでは?
2015-02-19 21:19:55ずばり、馬上の相手を切り落とす技だったのだと。龍鎚閃は馬の首を飛び越えて相手に切りかかる術、龍翔閃は下から切り上げて相手に殺到する技だったのでは。
2015-02-19 21:21:14