2泊3日で無理なく100kmを歩いて制覇!初心者向け「長距離ハイク」のすすめ
Togetterオリジナル編集部のふ凡社です。
2020年10月に、映画『鬼滅の刃 無限列車編』の公開にちなんで、「宇都宮から東京まで、鬼滅の刃関連グッズ縛りで100km歩く企画」を行った。
当時、その様子をX(Twitter)で実況しながら歩いていたのだが、見た人からは「何考えてるんだ」「そんな危険な企画をやるなよ」などなど心配の声を多数いただいた。結果的には無事100kmを歩ききることができたのだが、身体はそれまでの人生で経験したことがないほど極限まで疲弊し、「長距離ハイクはもうこりごりだよ~」と思った。
しかし、筆者はその後なぜか「長距離ハイク」というアクティビティにハマり、距離やルートを変えてはさまざまな道を歩いた。よせばいいのに、100kmハイクも3回くらいやった。
4年の間にいろんな長距離ハイキングをやる中で「常人が無理せず健康的に100km歩くノウハウ」がある程度固まってきたので、この場を借りてご紹介しよう。
無理せず100km歩くベストなペースは
結論から先に申し上げると「常人が無理せず健康的に100km歩ける行程」は
1日あたり30~35kmの道のりを2泊3日かけて歩く
である。1日に歩く距離をいろいろ試してみた結果、1日30~35kmくらいを、休憩も挟みつつ10時間くらいで歩くペースが一番ちょうど良い感じだという答えにたどり着いた。
ちなみに、シルクロードの道中にあるキャラバンサライ(隊商宿)は、「ラクダを連れた隊商が1日に移動できる目安距離」として、30~35km間隔で設けられていたらしい。長距離ハイクをやってみると、これがめっちゃ良く分かる。
「100kmハイク」というと陸上自衛隊の100km行軍や、各地で行われている100kmを24時間で歩くハイクイベントなど、肉体を追い込む系の過酷なアクティビティだというイメージを持っている人も多いかもしれない。しかし、本記事で紹介するのは、あくまで「無理のない範囲」で「100kmの道のりを自力で歩ききる」ことに主眼を置いたハイクなので、補給は無制限、休憩もこまめにとるし、夜は宿を取ってしっかり休むぞ。
ルートの選定
まずはルートの選定から。
片道100kmを歩くか、50km行って帰って来る往復ルートを取るかなど、いろいろやりようは考えられるが、ルート選定の起点となるのは「宿の場所」だ。Googleマップなどを使って、各日30~35kmくらいの場所にホテルや宿を取れる場所を探し、そこから逆算してルートを決めると良いだろう。歩行距離については、ようは100km歩けば良いわけなので、調整は後からいかようにもなる。
また、長距離ハイクにおいて最も現実的な問題は「トイレの確保」。初心者の人は田んぼ道がひたすら続いてどこでトイレができるか分からないルートなどは避け、なるべく人が集まる街に沿って歩くルートをおすすめする。これがマジで大事。
持ち物の準備は「引き算」が命
ルートの選定が終わったら、100kmハイクに向けた装備を整える。まずは持ち物の用意から。
持ち物の構成で一番大事なポイントは
荷物をいかに軽くするか
である。長距離を歩くにあたって、装備の重さは疲労の度合いにダイレクトに関わるポイント。100km歩くぞ!と意気込むと、ついあれこれリュックに詰めて万全の装備を整えたくなるが、私はこれで何度も痛い目を見た。
発想は真逆、完全に引き算の世界だ。『ダクソシリーズ』など装備の重量制限があるゲーム並みの、シビアな軽量化を目指そう。間違っても伊之助のフィギュアなんかを持ち込んでストレージを圧迫してはいけない。
その上で「これだけは持って行ったほうが良い」というアイテムを厳選してご紹介する。
モバイルバッテリー
スマホが地図代わりとなる100kmハイクでは、スマホの電池が切れると詰む。ほぼ常時地図アプリを起動しておく必要があるため、スマホを4回くらい充電できる量のモバイルバッテリーは持っておきたい。
私は「Anker PowerCore Essential (20000mAh)」 というバッテリーを使っている。大容量ながら薄型で比較的軽いのでおススメだ。
充電器
とはいえモバイルバッテリーだけだと3日は持たないので、宿でスマホ・バッテリーを共にチャージできる充電器は必須。これもなるべく軽くてコンパクトなものが良い。
懐中電灯
出発時間にもよるが、100kmハイクは夜道も歩くことが多いので、懐中電灯もマストアイテム。Google先生は最短ルートとして街灯一つない田んぼ道なども遠慮なく指定してくるため、真っ暗な道が来ても大丈夫なように、光が強めの懐中電灯を用意しておくと安心だ。
手で持つタイプでもいいが、長時間歩きながらだと腕が疲れるのがネック。リュックに取り付けられるものや、頭に取り付けられるものなど、両手が空くタイプのものを用意するとなおよい。私は「タジマ セフシステム LEDセフ着脱式ライト」を使っている。工事現場などの作業向けに作られているということもあって、明るさも申し分なく、なによりリュックサックの紐に括りつけることができるので、大活躍する。
折り畳み椅子
椅子があれば、疲れたら即休憩できる。また、道中足を揉みほぐしたりする必要があることも考えると、椅子は絶対持って行った方がいい。折り畳み式で軽量のタイプが売ってるので、このあたりを買うといい。
私はいろんな椅子を試してみた結果「EYIDOULT 折りたたみ椅子」にたどり着いた。300gとめちゃくちゃ軽くて、組み立てと収納が楽なので大変重宝した。
身分証明書
免許証・保険証などの身分証明書は、有事の時に必要となるので必ず持って行こう。
「必須」と言えるアイテムは、この5種くらいだろうか。今回のハイクは街中を歩くことを想定しているので、それ以外のアイテムは「道中で必要に応じて買えばいいや」くらいのテンションである。
ついでに「必須ではないけどこれがあると便利だよ」というアイテムも紹介しておく。
サブバッグ
メインの荷物はリュックに詰めるとして、サブバックも1個持っとくと良い。財布、ティッシュ、目薬、リップクリームなどさっと取り出してすぐ使うアイテムなどを入れておくと、いちいちリュックから取り出す手間が省ける。ゲームにおけるアイテムショートカットみたいなもんである。
体が疲れるほど、細かな出し入れの面倒くささがMPを削る要因となるので、サブバックがあるのとないのとでは結構デカい。私はベルトに通して腰からぶら下げるタイプのサブバッグを使っている。
レインポンチョ
100kmハイクにおいて、雨は本当に天敵。雨具が荷物になるし、足が濡れると摩擦による足へのダメージが跳ね上がり、かつ足元から体温を奪われる。足がぐちゃぐちゃだと、テンションもだだ下がりだ。正直、雨が降ったら歩くの止めるレベルで雨を避けたいところだが、もし降ってしまった場合の雨具は傘じゃなくてレインポンチョをおススメする。
度々書いているが、ポンチョだと「両手が空く」というメリットが一つ。また大きめのサイズであればリュックごと被れるので、雨除けとして一石二鳥。さらに、寒くなってきた時の簡易的なウィンドブレーカーとしても使える。あと歩いてみると分かるが、意外と傘よりも足が濡れにくい。
2泊3日の間に雨が降る可能性があった場合は、レインポンチョを持っていくと良い。道中雨の予報が無い場合は、軽量化のため思い切って削っちゃって大丈夫だ。
服装で投資すべきポイントは足だけ
続いて服装編。100km歩くということで、「さぞハイキングに特化したガチガチの専用装備が必要だろう」と思われるかもしれないが、案外そんなことはない。
ガチで投資すべきは1点だけ。
シューズだ。
シューズと足の相性によって、疲労の度合いが全然変わる。特に注意したいのは「靴擦れ」。
長距離を歩くと、自然と筋肉痛や関節の痛みなど体の内側にかかるダメージと、靴擦れによる外傷のダメージとが発生するリスクが高まるのだが、内側のダメージについてはストレッチやマッサージで案外なんとかなる。それよりも、靴擦れによる外傷のほうが断然怖い。外傷のシンプルな痛さが歩くスピードを鈍らせ、気力を大きく削ぐ。また痛みをかばいながら歩くことで歪な歩き方になってしまい、足首の違和感など別の痛みを引き起こすトリガーにもなるので恐ろしい。
とにかく履きなれていて、歩きやすいスポーツ用の良いシューズを用意すると良い。
私は「On」というブランドの、一足2万円くらいする「Cloud 5 Waterproof」というシューズを使っている。Onのスニーカーは全体的にお高めだがマジで歩きやすく、Cloud 5 Waterproofはこれに防水機能もついているから、100kmハイクに使えばまさに鬼に金棒。特にテーピングなどせずに3日歩いても、ほぼ足が無傷のまま歩きとおせるくらいだ。
とにかくシューズだけちゃんとしたものを用意すれば、それ以外の服装については割となんでもいい。
・寒い季節は体を冷やさないこと
・暑い季節は熱と汗を逃がせること
という2点だけしっかりと抑えていれば、新たに専用のものを買ったりする必要もない。お好みで大丈夫。
個人的には、宿に着いたらその日使ったものはそのまま捨てて行けるような、使い古した服や下着を使うのもおすすめ。これによって、道中少しでも荷物の軽量化をはかることができるからだ。
私は、シューズ以外の装備は普通のTシャツにチノパン、ビジネス靴下といった適当なファッションで歩いている。街歩きの延長の長距離ハイクでは、山道のような険しい道を歩くこともないので、これで特に不自由することはない。「服は案外体の疲労に影響しないし、適当でいいもんだな」というのも、経験を重ねて知った意外なポイントだった。
準備編はここまで。次のページからは「実際に歩く際のポイント」をご紹介する。
次ページ:健康的な100kmハイクのすすめ