<GSOMIA破棄>「国格が上がった!」 大喜びの韓国国民と慌てる保守派マスコミ

韓国側による「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の破棄が日本側に通告されました。

「日本大使の厳しい抗議に韓国「日本は自尊心を傷つけるほど無視続けた」(2019年8月24日)

日本と韓国が軍事機密を共有するために結んだGSOMIA(=軍事情報包括保護協定)について、韓国政府は23日、日本側に協定の破棄を通告した。

https://news.livedoor.com/article/detail/16972998/

 ■妥協のつもりだった文大統領

上で引用した記事のタイトルが、なかなか強烈です。本文を見てみましょう。「自尊心を傷つけた」ってなんのことを言ってるのでしょうか。

韓国大統領府国家安保室・金鉉宗第2次長「日本の対応は単純な拒否を超え、我々の国家的な自尊心まで傷つけるほど無視を続け、外交的な礼儀を欠いた」

GSOMIAを破棄したのは、日本のせいだと言いたいらしいのですが、そもそも日本側に、ここまで「外交的礼儀を欠いた行動をした」という認識はないと思います。

「日本が対話と協力の道に乗り出せば、われわれは快く手を取る」

この件で他の政府高官の発言を見てみると、決定的だったのはこの8月15日の文大統領の演説のようです。「文大統領が日本に対話の姿勢を示したのに、日本側は無視した」ことが「自尊心を傷つける」ほどの外交的欠礼だというわけですね。

しかしねぇ。両国にある問題について、何の具体的な策を示さないで、「日本側から協力しろ」という発言に、日本がどう反応しろと言うのでしょうか。日本が何か言って、それが外交欠礼だと言うならともかく、無反応だったことが「自尊心を傷つける」とまで言われるのは、納得しがたいものがあります。それに妙に上から目線だし。

この妙な上から目線は、韓国の日本に対する通常対応ではありますが、それにしても輸出管理で困ってる立場の韓国が取る態度ではありません。

 

■「不買運動で日本は大損害」

なぜ文大統領が「日本側が対話をしてくる」と考えていたのでしょうか。その理由は、事実を捻じ曲げる韓国のマスコミにあった可能性があります。

 「【ソウルから 倭人の眼】GSOMIA破棄の韓国、「快く手を取る」と言いつつ逆襲連発」

韓国メディアには「日本が大打撃を受けている」などと報じる社もあった。

韓国での不買運動に日本全土がそれほどの衝撃を受けているとは思えないのだが、少なくとも韓国で不買運動に賛同する者は、そのように信じているか、信じていたいようで、「日本が慌てふためき、困っている」と満足そうに振る舞っている。

 https://www.sankei.com/premium/news/190824/prm1908240009-n3.html

 韓国の反応をインターネットで確認すると、様々なメディアで「日本は不買運動で困ってる!」という報道ばかりです。実際、ユニクロの売上が急減して、「社員を有給で休ませた」という報道もあり、影響はそれなりに出ています。

 

「売り上げ70%急落の韓国ユニクロ、結局全職員に有給休暇検討」(2019年8月20日)

https://news.livedoor.com/article/detail/16953001/

がしかし、それで日本の企業が立ち行かなくなるほど大きな損害ではありません。むしろLCCなどの航空会社は日本から中国に振り替えようとした航空路線を中国に拒否されて、全社が赤字確定という緊急事態です。結局困るのは韓国経済という図式です。

ユニクロも有給とか言ってないで、社員を解雇していかないと、不買運動が結局韓国の経済に悪影響があると理解できないのではないでしょうか。

こうした状況を文大統領が誤認して、「日本が困って、対話に乗り出してくる」と考えていたとしたら、先の上から目線の演説も理解できるところです。

 

■事態の深刻さを報道しない韓国マスコミ

GSOMIAの破棄で、韓国マスコミの反応は二分されています。

「協定破棄に韓国世論は二分 深入り避けた米の覇権に陰り」

https://www.asahi.com/articles/ASM8Q6KC2M8QUHBI02X.html

 韓国マスコミは、保守派がGSOMIA破棄に反対。革新派が賛成と分かれました。ただ、この報道のように韓国世論は二分されていません。

インターネットや韓国テレビの報道を見ればわかる通り、圧倒的多数がGSOMIA破棄を賛成しています。なぜか「国格が上がった」と喜ぶ反応もあり、日本人にはよく理解できません。この辺り、マスコミが相変わらず正しい報道をしないことに原因があります。

改めてGSOMIAの正式名称に注目しましょう。正式名称は「軍事情報包括保護協定」です。「軍事情報【共有】協定」ではありません。情報共有ばかり注目されていますが、この協定は「情報の保護」、つまり「第三国への情報共有の禁止」も、うたっているのです。そもそもこの協定は北朝鮮のミサイル発射情報を目的にしてますから、「第三国」の想定は中国、ロシア、そしてもちろん北朝鮮です。日本が軍事情報をこれらの国に流すわけはありませんから、韓国側が流さないように「足枷を掛けた協定」だったのです。もっと言うと、この協定はアメリカが推進したわけですから、アメリカが韓国に足枷を掛けていたのですね。

それを今回、韓国は破棄してしまったのです。

「青瓦台「GSOMIA終了決定、韓米同盟一段階アップグレードさせる」」

金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長はこの日の記者会見で「韓国政府は今回の決定が韓米同盟の弱化ではなく、むしろ韓米同盟関係を一段階アップグレードさせ、今よりさらに堅固な韓米同盟関係とすることができるよう努力していく」と述べた。 

https://japanese.joins.com/article/890/256890.html

 何を寝言を言ってるのでしょうか。別の報道では、「アメリカは韓国との協議で(GSOMIA破棄を)理解した」という報道もありましたが、速攻でアメリカに否定され発言を訂正しています。

「GSOMIA破棄に米が理解と説明していた韓国大統領府「うそ」と米高官」(2019年8月24日)

トランプ政権の高官はまた、青瓦台がGSOMIA破棄について「米国が理解を示した」と説明したことに関して、本紙に「うそ(lie)」だとして、「明確に言って事実ではない。ここ(駐米韓国大使館)とソウルの(韓国)外交部に抗議した」と語った。記者の質問に答えたものだが、「うそ」という表現を使ったのも極めてまれなことだ。

https://news.livedoor.com/article/detail/16974107/

ただ問題は、文大統領自身は、本当はわかってやったかもしれないんですね。なにしろ北朝鮮に情報を渡す足枷がなくなるわけですから。 

 

■迫るホワイト国除外決定 また勘違いしそうな韓国

日本は淡々と28日に、韓国のホワイト国除外を推進するでしょう。でもGSOMIA破棄と関連させて、なんらかの処置を取るとは思えません。あくまで輸出管理の変更ですからね。でも韓国側は違った予想をしています。

「GSOMIA終了の影響が長期化なら…半導体業界の生産に支障も」

韓日の軍事情報保護協定(GSOMIA)終了で韓国の半導体業界がまたも悪材料に直面することになった。GSOMIA終了宣言の翌日の23日、証券業界ではGSOMIA終了の影響が長期化すれば国内半導体業界にも追加の被害が予想されるという見方が出てきた。

  https://japanese.joins.com/article/891/256891.html

面倒くさいのはですね。単に「ホワイト国除外」を決定しただけだと、「日本は追加措置を取らなかった。韓国政府の強い姿勢が日本を退かせた」などという報道になりかねないことです。輸出管理と報復措置の区別が全くわかってないので、また勝手に勝利宣言する可能性があるのですね。

韓国には、GSOMIAがアメリカ主導の「保護協定」だったということが、スコーンと頭から消えてるようです。日本は単独で対応するのではなく、アメリカと緊密に連携し、できれば共同で何かを発表する形で対抗していって欲しいですね。それもできるだけ早く。そうでないと、また韓国がどこかトンデモナイ方向へ暴走を始めてしまうかもしれません。