日本にとって節目の年となる2020年に流行する技術を、1年先取りして、どこよりも早く予測した。デジタルの時代は技術の重要性がこれまで以上に高まっていく。2020年に進化を遂げる20の本命技術と、今知っておきたい20の有望技術をお届けする。

ブロックチェーンがインターネット3.0実現

 原始的な民主主義から始まり、帝国の勃興を経て、近代的な民主主義国家が台頭する――。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米IT大手の支配力が強い今のインターネットが人類の歴史における「帝国の勃興」に当たるとすれば、2020年代は権力の集中を廃した「民主的」なサービスが主流をつかむ。解放の武器が、仮想通貨の基盤である分散台帳技術「ブロックチェーン」だ。

図 ブロックチェーンが引き起こすアーキテクチャーの進化
図 ブロックチェーンが引き起こすアーキテクチャーの進化
インターネットの「民主化」を後押し
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 現状のブロックチェーン技術は成熟し切っていない。「安定的なエコシステムが出来上がるのは3~5年後」と野村総合研究所(NRI)の亀津敦デジタル基盤イノベーション本部ビジネスIT推進部上級研究員はみる。まだ先のようだが、インターネットは人類の歴史を超高速になぞっている。ブロックチェーンにより、今とは全く異なる新たなネットの時代が目前に迫る。

 ビットコイン(Bitcoin)の価格が約1年前のピーク時の2割以下に暴落するなど仮想通貨バブルがはじけるなか、ブロックチェーンを巡る一部企業の開発熱は一段と高まっている。メルカリやLINE、Gunosyなど国内ネット大手が2018年に相次ぎブロックチェーン技術の研究開発を本格化させた。

 背景には2つの要因がある。一つは2017年までの仮想通貨ブームを通じ、ブロックチェーンに精通したエンジニアが増えたこと。もう一つはGAFAの支配力が高まり、その市場構造を破壊する起爆剤としてブロックチェーンに注目が集まった点だ。

 インターネットはもともと大学などを相互に接続するピア・ツー・ピア(PtoP)のネットワークとして始まった。それがいつしかGAFAや米ウーバーテクノロジーズといった、キラーサービスと大量データを抱える「プラットフォーマー」が市場を寡占し、強い影響力を持つに至った。

 「ブロックチェーンはGAFAの支配からネットユーザーを解放するディスラプター(破壊者)になり得る」。仮想通貨ならびに仮想通貨の販売による資金調達を指すICO(イニシャル・コイン・オファリング)といったムーブメントの勃興と破壊力を目の当たりにしたエンジニアはブロックチェーン技術にこんな期待をかけている。

 解放後のネットの世界は「非中心Web(Decentralized Web)」「インターネット3.0」などと呼ばれる。一部の巨大企業が牛耳る中央集権型Webと対比したネーミングだ。

 「インターネット上でブロックチェーンに基づくPtoPネットワークを構築し、ユーザーが交換できるデジタルトークンを生成したり、分散環境で動くアプリケーションを構築したりできるようにする」「特定の個人や国、企業に権限を集中させず、ユーザー自身がサービスに関わる意思決定に関与できるようにする」といった世界である。