
2020年を迎えましたが、どうも最近の報道を見ていると、今年もさまざまな炎上プロジェクトが発生しそうです。はっきり言って、プロジェクトマネージャーのレベルが低すぎる現状があり、テクノロジーが進化する速度にマネジメントが追いつけていません。
そもそもこのような状態になった原因の根幹には日本企業の年功序列主義があると思いますが、それは置いておいて、今回はエンジニアが炎上プロジェクトの兆候を早期に察知し、自分を守る方法について書いてみたいと思います。
炎上プロジェクトを察知する6つのポイント
まず、炎上プロジェクトを察知するために、チェックするポイントを並べると以下のようになります。いくつか心当たりがある人は多いのではないでしょうか。
[ポイント1]受注のためにコンペに参加して値引きしている
[ポイント2]営業が顧客側に立って要件をそのまま伝えてくる
[ポイント3]見積もりの工数に時間が書いてある
[ポイント4]RFQ(見積依頼書)が存在しない
[ポイント5]テストツールを使っていない
[ポイント6]マネージャーが夜中まで残業している
炎上の兆候を早期につかむにはどういうところを見ればよいか、順に説明しましょう。長くなるので前編では[ポイント1]〜[ポイント3]を説明し、残りの[ポイント4]〜[ポイント6]は後編に譲ります。
[ポイント1]受注のためにコンペに参加して値引きしている
コンペに参加すること自体は悪くありません。しかし、コンペに参加すると、マネージャーが競合に勝とうとするあまり、無理な条件で受注する可能性があります。特に、ライバル会社に勝つために無理な条件をのんで値引きをするなどの行為を行っている場合は要注意です。もし、根拠のない値引きを行っていた場合、その時点で炎上は確定です。
値引きをしても作業量は減りません。よって、どこかで辻つまを合わせる必要が出てきます。こうした場合に、レベルの低いマネージャーが出す案は「頑張る」という精神論です。結果、無理なスケジュールを立て、最終的には残業続きで炎上します。
不測の事態が発生した場合は臨時で増員するなど、お金で解決する方法があります。しかし、赤字のプロジェクトの場合は、お金で解決することはほぼ不可能。結果、残された道は元からいるメンバーだけで徹夜や休日出勤を繰り返しながら「頑張る」しかありません。
コンペで訴えるべきは、どれくらい顧客の要望に応えられるかではなく、「自分たちの技術力の高さ」と「顧客にいかに新しい提案ができるか」です。
コンペに参加していなくても、見積もりに謎の値引き項目があれば追究しましょう。納得する理由を説明できない場合、そのマネージャーはダメなので炎上すると思った方がよいでしょう。
ちなみに、「値引きすればお客さんが次の案件も発注すると言った」という話をよく耳にします。しかし、そう言われて次も受注したという例を聞いたことはありません。嘘だと思った方がよいでしょう。
[ポイント2]営業が顧客側に立って要件をそのまま伝えてくる
炎上になる大きな要因は、顧客との関係性にあります。もし、開発側が顧客の要望を何でも聞かなければならないという関係性なら、そのプロジェクトは炎上することでしょう。要件の変更が顧客の気分次第で頻繁に発生し、それにもかかわらず、開発費の追加請求もできない──。開発者は無理な要望による追加開発と、期日に間に合わせるという理不尽な状況に悩むことになります。
営業担当者が仕事熱心なのは良いことですが、単に顧客の御用聞きであるという場合が多くあります。顧客が「悪いけど、ここの仕様を変更してほしいんだけど」と言ったときに、営業担当者がその要望をそのまま開発者に言ってくる場合は要注意です。営業担当者が顧客からお願いされたのだからといくら言ってきても、開発者はきっぱりと断りましょう。1度要望をそのまま聞いてしまうと、その後は次々と無理難題を引き受けることになるからです。
そもそも、窓口の役割は顧客の要望を開発側に伝えることではありません。顧客と開発する側の双方の意見を聞いて妥協点を見いだすことです。
「お客様がこう言っているのだから仕方がない」などとやたら言ってくる営業やマネージャーがいるときは要注意です。彼らが炎上を引き起こす可能性が高い“火元”となる人材だからです。そうした火元人材には、炎上を防ぐために、分かりやすくはっきりとその愚かさを認識させる必要があります。「ちょっと黙れ」と言ってやりましょう。そして、「あなたの仕事は顧客の要望を一方的にこちらに伝えることではなく、顧客と交渉して開発側が納得できる案を持ってくることである」と教えてあげるべきです。それでも彼らが理解してくれない場合は、どこか別の場所を借りて仕事をし、彼らとはできる限り会わないようにしましょう。
相手が誰であれ、何でも頼めば言うことを聞いてくれると思われてはいけません。納得できないことは、納得できないと明確に伝えることが炎上を防ぐ上で非常に重要です。