外国人が日本を初めて訪れると、決まって自動販売機の多さに驚く。街中、どこもかしこも自販機だらけ。日本は世界でもまれにみる自販機天国だ。外国人のなかには、大量の自販機に日本の治安の良さを感じ取る人も大勢いるだろう。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時には、これまで以上にたくさんの外国人が日本にやって来る。そしてきっと、東京のどこに行っても自販機を見かけることになる。真夏に開催される東京五輪は、飲料メーカーにとって絶好のビジネスチャンスだ。
にもかかわらず、自販機の飲料が品切れしていたら何の意味もない。みんながっかりする。猛暑のなか、冷たい飲み物でのどを潤すことができない。それではせっかくの商機のなかで、かえってブランド価値を落としてしまう。そんな事態だけは絶対に避けなければならない。
そこで、主力ブランド「お~いお茶」で緑茶飲料をけん引してきた伊藤園は、自販機のIoT(インターネット・オブ・シングズ)化を推進中だ。狙いは言うまでもなく、都内にある自販機の品切れ防止。2018年8月までに、約16万台ある伊藤園の自販機のうち、東京五輪の舞台となる首都圏を中心に全体の15%に相当する2万5000台のIoT対応を完了した。2019年4月末までには、3万1000台までIoT自販機を増やす計画である。
自販機部企画課の加治木浩則課長は「これまでは担当者が自販機の前まで行かないと、自販機内の在庫状況が分からなかった。それがIoTで、離れた場所からでも正確につかめるようになった」と話す。2018年7~8月に連日続いた猛暑の時期には、自販機の品切れ率が従来よりも大幅に改善するという結果が出ている。