芝原暁彦『おせっかいな化石案内

 化石をまとまって展示している博物館の紹介本。個人的には、2章、3章がおもしろい。


 紹介する博物館は、福井県立恐竜博物館、徳島県立博物館、天草市立御所浦恐竜の島博物館、三笠市立博物館、山形県立博物館、地質標本館、大阪市立自然史博物館、群馬県立自然史博物館、国立科学博物館など。「ご当地化石」という概念がいいねえ。


 第一章は、「化石産地」に注目。
 押しも押されぬ日本最大の恐竜化石産地手取層群を擁する福井県立恐竜博物館。展示のリニューアルが行われて、最新の研究を反映した変更が行われているとか、実物化石を取り出して、CTスキャンにかけたり、ティラノミムスといった福井県産の新しい恐竜の化石の展示など。
 徳島県、あんまり恐竜関係の話題を聞かない場所だけど、中央構造線の南側の西南日本外帯、往時は海であったはずのところで、恐竜のボーンベッドが発見されているというのがすごい。しかも、日本最古級の化石とか。あとは、瀬戸内海から上がるナウマンゾウの化石とか、アルゼンチンのラプラタ大学から寄贈された南米の大型動物の実物化石が。
 そして、最後は島を丸ごと博物館化している天草市立御所浦恐竜の島博物館。アンモナイトやトリゴニア、さらに新生代のコリフォドンの化石も出土している。泊まりがけで行きたいなあ。
 コラムは、全身骨格が出土したむかわ町穂別博物館と、カラフトから出土したニッポノサウルス擁する北海道大学総合博物館。


 第二章は「日本が誇るすごい化石」ということで、おもしろいチョイスの博物館。
 最初は、北海道の三笠市立博物館。圧倒的アンモナイト。中央部の蝦夷層群からは、保存状態の良いアンモナイト化石が大小出土。異常巻きアンモナイトの「規則性」もおもしろい。あんまり激しく動くような生態ではなかったのだろうなあ。あとは、モササウルスの仲間、タニファサウルスとか。
 山形県立博物館は、900万年前のヤマガタダイカイギュウの化石がメイン。上半身の骨格が出土している。海牛類のミッシングリンクを埋める化石と。ヒトデの化石やマムロガワクジラの化石など。
 地質標本館は、異常巻きアンモナイトやデスモスチルスの全身骨格など。ここがすごいのは、まあ予測できる話だよな。ニッポニテスのぐねぐねは、入り口が上や下を向きすぎないように調整しているのね。
 大阪市立自然史博物館は、マチカネワニ。阪大の豊中キャンパスの工事中に見つかった巨大ワニ。他にアケボノゾウや8000年くらい前と割と最近のカツオクジラの化石とか。
 コラムは「ご当地化石」ということで丹波竜擁する丹波市立丹波竜化石工房、フタバスズキリュウ擁するいわき市石炭・化石館ほるる、埼玉県立自然の博物館のカルカロドン・メガロドンを紹介。巨大サメ、メガロドン、一個体のセットで出土したので、大きさを推測できるのが貴重、と。


 第三章は「日本で見られる世界のすごい化石」ということで、海外産のすごい化石を紹介。
 群馬県立自然史博物館は、アメリカはヘル・クリーク層群のトリケラトプスのボーンベッドのジオラマを展示しているが、その産状を示しているのが実物化石というのがすごい。持ってくるのにお金かかりそうな。ご当地化石はヤベオオツノジカ。
 国立科学博物館からは、トリケラトプス対ティラノサウルス。ティラノのほうはしゃがんだ姿勢に復元されているのが独特とか、トリケラトプスも関節がつながって、立ち姿の復元に影響を与えたものとか。ティラノはレプリカで、トリケラトプスは保存状態の良い実物化石が輸入されている、と。
 コラムは、バージェス頁岩を擁する蒲郡市生命の海科学館、ディメトロドンの実物化石を擁する群馬県立自然史博物館、北九州市立自然史・歴史博物館いのちたび博物館のディプロドクス。


 附録は、街中の石材に見られる化石の探索のお話。ゾルンホーフェンの石材、ジュライエローという商品名でホームセンターで売られているのか。


 検索すると、ウィキペディアのトリケラトプス化石、いくつか個体単位の記事があるのね。科博のレイモンドで検索したら当たった。