イスラム世界はなぜ没落したか?

標記の件、時間ないので長らくほったらかしにしていた僕の疑問の一つなわけですが、たまたまtemjinusさんのところで興味深い記事を発見。多少表記を変えて引用させてもらいます。

ガーナ帝国、マリ帝国の発展を支えたスーダン金がイスラム諸国の金貨鋳造国の原料となっていた。13世紀末にはジェノヴァ人が、また他の欧州諸国は15世紀半ばに、この黄金を源泉において捕捉しようと試みた。ポルトガルがアフリカ西岸を着々と踏査したのはこのためである。ポルトガルは特にギニアにおいて南米のそれには及ばないものも、かなりの量の金を発見する。しかしながらギニアの金の産出量は1520年をもって下降する。

スーダン金がイスラム諸国へ向かわず、西欧へ向かったために、15世紀からイスラム諸国は財政危機を経験することになる。

V. M. Godinho, L'Economie de l'Emire portugais aux XVe et XVI siecle, p. 137
Gabriel Ardant, Histoire financiere de l’antiquite jusqu’a nos jours, idees/gallimard, p. 137
※出典については下記temjinusさんのコメント参照のこと(Dec. 22訂正・追記)
金融史:ドルの語源

これ、ルネサンスが14世紀頃始まったことと考え合わせると実に興味深いです*1。イスラム文化圏が失速していったのもやはり金融に原因があるんでしょうか。この視点は、本エントリと同名の某評判の悪い本のように精神論にその因を求めるよりもよほどスジが良いように思えますがどうなんでしょう。ってこれ僕が知らないだけで定説なんですかね。

前にも書きましたが、どうも歴史の話を読んでいると経済・金融の変化が外部要因として所与もしくは突然降って湧いた災厄(または政治的陰謀w)のように扱われていることが多いのが不満の種なわけです。良い本があったらご紹介いただけると幸いです。

*1:更に言うと、スペインがメキシコに上陸したのが1519年であること、またポルトガルがスペインに併合されたのが1580年であること、等等と考え合わせると面白さ倍増です。