The Spirit in the Bottle

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地獄の扉を開いて NY心霊捜査官

 多分去年の暮から今年の前半にかけて当ブログで最もアクセス数の多かった記事って「死霊館」の感想じゃないかと思うのだけれど(これは体感だけれどたまにアクセスログ見ると「死霊館」の記事が多く、更にいうとそのほとんどは「三角絞め」さんの記事からのリンク)、あれの困ったところは「実録心霊ホラー」という実際にあった話、を謳い文句にしていたこと。僕は何度か書いているが(主にフィクションの)題材としては幽霊や超能力と言った超常現象は大好きだけれど、実際の存在としては全く信じていない。だから「これは本当の話なんですよ!」と言われて見せられても逆に「ふーんどうせ嘘なんでしょ」と思って楽しめない部分もあるのだ。それでも「死霊館」は逆に幽霊の存在をガンガン出して見せない演出でなく開き直って見せていたのは良かったけれど。で、今回観たのもそんな「実際に起きた事件」を謳った心霊ホラー。「NY心霊捜査官」を観賞。

物語

 ニューヨークの刑事の夜は長い。ラルフ・サーキ刑事はその夜も路地で赤ん坊の死体を見つけ、DVを起こす夫を逮捕し、締めは動物園で我が子をライオンの檻に投げ入れた母親の捜索。停電で静まり返る動物園の中で母親を保護するがその姿はまるで何かに取り憑かれているかのようであった。そして母親に暗示をかけたのではないかと疑われる謎のペンキ屋。彼はライオンの檻の中へ消えていった…
 次の日、サーキはラップ音に悩まされるという家族の事件に何かを感じてその家に赴く。地下で彼は腐乱した死体を発見。その死体は先日の母親の夫でペンキ屋の同僚。そして死体とペンキ屋とDVを起こした男はかつて海兵隊としてイラクに赴任した同僚だったのだ。この事件は全てつながっているのか。母親の後見人だった神父メンドーサから助言を受けサーキは徐々に核心に迫っていく…

 原題は「DELIVER US FROM EVIL」で「我らを邪悪なものより救い給え」みたいな感じ。邦題はもっと実録路線を印象づける感じか。原作はラルフ・サーキその人でしかも舞台となっているのは2013年というごくごく最近。「死霊館」以上に眉に唾つけて観る事となった。とはいえ、最初に「この映画は実際の刑事の事件にインスパイアを受けて制作された」と出るのであくまで元にしたフィクション、という趣なのかな、と思ったら最後がっつりサーキ刑事のその後やら出てきてどうやらマジもん(として制作されている)らしい。
 ただ、冒頭でイラクが出てきたり刑事と神父のコンビが悪魔憑きの事件に取り組みクライマックスは悪魔祓いであったりと僕はアップデートされた「エクソシスト」という印象を持った。特にメンドーサ神父はかなりエクソシストのカラス神父に外見などがかぶる。刑事目線の「エクソシスト」とでもいう感じか。
 実際悪魔憑きを描いていはいるが、よく考えるとこの作品、超常現象を抜きにしても解釈はできるような事件。説明の付かない事態も映画の中では起きるが事件自体はペンキ屋が普通に起こせそうな気もする。
 ただ作品のトーンは「死霊館」のどこか見世物小屋めいた雰囲気とはかなり異なり、どちらかと言うと「セブン」あたりと近い気もする。これ事前の知識は予告編を観たぐらいで殆どなかったのだが(主演がエリック・バナというのも当人が出てくるまで忘れていた)、深刻な暗いトーンが続く。全体的に画面が暗く(普通に警察のシーンでさえ照明が落とされていて暗い)時折訪れる明るいしシーン(サーキの家の昼間のシーン)などが程よいホッと一息つけるポイントとなっていたりする。

 主演はエリック・バナで代表作は色々あるけれど僕にとってはやはりアン・リー版「ハルク」のハルクことブルース・バナー。今回も彼特有の神経質そうな表情で悩める刑事を演じています。このサーキという刑事は原作者でもあるのである程度割り引いて考える必要もあるがいわゆる霊感、第六感的なものに優れた人。NY市警に山のように持ち込まれるくだらない案件の中から鼻を利かせて変な事件を引き当てる。
 あと警察の方のサーキの相棒バトラーがずっとリンプ・ビズキットのフレッド・ダーストだと思いながら観ていたのだがジョエル・マクヘイル。ぬいぐるみ映画「テッド」*1に出てたらしいが特に覚えていないや。
 もう一人の主人公がメンドーサ神父でこの人は若い頃はかなりやんちゃだったがそれを反省して神父になった、というようなイマイチ信用出来ない人物。サーキは時にバトラーと組んで表向きの仕事をし、次にはメンドーサと組んでオカルト方面からアプローチするみたいな感じ…だったらもうちょっと面白かったかな。

 劇中で印象的に使われていたのがドアーズで。その「扉」というバンド名がそのまま地獄(魔界?)の扉を開けるみたいな意味合いで言及されていた。「Break On Through」とかが使われていたかな(すでに記憶危うし)。

 この映画ではいわゆる明確な、クリーチャー的な悪魔・モンスターは出てこない。映画でこそ超常現象?と思われる現象もあるが普通にサイコサスペンスと見れないこともない。ただ「エクソシスト」の悪魔なんて少女に取り憑いてゲロ吐いたり下ネタ披露したり神父の暴露話したりする程度だが(それは物理的に人間をどうこうするというより精神的に人間に挑戦するという意味合いが強いのであろう)、本作で取り憑くのは元海兵隊。そりゃ少女よりは海兵隊員のほうが色々便利だよなあ悪魔的にも、とか思ったりした。取り憑かれた人はなんかヤク中のパンクな人ッて感じで中々面白かった。

 で、観終わった後知ったんですが、この映画の監督スコット・デリクソンは2016年公開予定の「ドクター・ストレンジ」の監督に決まっているそうです。多分マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ3としての作品でしょう。「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」でも名前だけは言及されていたマーベルの誇る魔術師ヒーローですね。僕はこのキャラクターを存在は知っていても単独での物語は詳しくは知らないのだけれどなるほど言われてみれば基本は現代風「エクソシスト」でありながらちょっとヒーローものっぽい感じもした。その辺は観ている時には単に刑事物としての要素もあるから、だとか製作にジェリー・ブラッカイマーが名を連ねているからかなあ、などと思っていたのだけれど。
 ラストはサーキが刑事を辞め現在はメンドーサ神父とコンビを組んで活躍してる、などと字幕が出てきて、この作品のノンフィクションな部分に関しては僕は限りなく胡散臭いものを感じるのだけれど、フィクションと割り切って観ればなかなか面白い作品でもありました。

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一応実録心霊ホラーを謳った作品。

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*1:あんまり関係ないけれど「テッド」の印象は時間が経つに連れて悪くなっていくのはどうしたわけだろう?