アイデア発想術10「よりよいブレインストーミングの七つの秘訣」
今回の参考文献
発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
- 作者: トム・ケリー,Tom Kelley,ジョナサン・リットマン,Jonathan Littman,鈴木主税,秀岡尚子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/07/25
- メディア: 単行本
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アイデアを発想するための方法としてはやはり『ブレインストーミング』が最も有名かつ分かりやすいのではないでしょうか。
しかし、シンプルな方法であるがゆえに、ある水準以上の成果を得ようと考えるならば何かコツや秘訣のようなものが必要となってきます。同じやり方で数をこなしているうちは同じ質・量のアイデアが出るだけです。
というわけで、参考文献で挙げられている『よりよいブレインストーミングの七つの秘訣』をご紹介。
秘訣1:焦点を明確にする
まずは問題の焦点を絞ったテーマを提示することを考えます。問題を限定して明確に表現されたテーマを考えることは意外と難しいものです。
たとえば、「中身がこぼれないコーヒーカップの蓋」というのは、ブレインストーミングのテーマとして好ましくない。あまりにも限定されていて、すでに答えがわかっていることだからだ。また、「自転車用カップホルダー」というのは、あまりに味気なく、製品に焦点がおかれすぎている。(中略)もっと自由でよりよいテーマは次のようなものだろう。「自転車に乗る人が、こぼしたり舌を火傷したりせずにコーヒーを飲めるようにする方法は?」(p.68)
また、テーマとしては、組織の目標に焦点をおいた内向きのものよりも、顧客のニーズやサービス強化に焦点をおいた外向きのもののほうがよいようです。
- ダメ:どうしたらX社から市場占有率を奪還できるか?
- ダメ:どうしたらY社よりもよいサーチ・エンジンを構築できるか?
- OK:ダイヤルアップ・モデムを介して検索する顧客が最初の結果に行き着く時間をどうしたら短縮できるか?
秘訣2:遊び心のあるルール
出されたアイデアを批判しないことはブレインストーミングの鉄則。
それでも批判する者がでてきた場合、その人を無視するのではなくその批判を脇へそらすことが必要なのだそうです。
そのために例えば会議室の壁に大きくブレインストーミングのルールを提示しておき、ブレインストーミングが普通の会議になってしまいそうなときはそのルールに目をやって軌道修正する、といった方法が挙げられています。
秘訣3:アイデアを数える
とてもシンプルだけど意外とやっていないのではないでしょうか。
出されたアイデアを数えることで
- ブレインストーミングの前やその最中に参加者を刺激する道具になる
- ブレインストーミング終了後に、今回の進行度合いをはかる尺度になる
といった利点が挙げられています。
経験から言って、一時間に一〇〇のアイデアがでるブレインストーミングは、流動的で質の高い場合が多い。一時間に一五〇のアイデアがでたら、それはスピードの限界ぎりぎりだ。(p.69)
あなたの会社のブレインストーミングでは、一時間にいくつのアイデアがだされていますか?
秘訣4:力を蓄積し、ジャンプする
「蓄積する」タイミングと「ジャンプする」タイミング。よいブレインストーミングは、初めにゆっくりと力が蓄積されていき、次に急上昇し、それから平坦になっていくものだそうです。ちょうどS字に近いカーブを描くイメージでしょうか。
蓄積段階では軽い感じで進行し、カーブを描きはじめたら流れのままアイデアを出しつつ、ときに別のアイデアやバリエーションを持ち出してみる。議論の流れの勢いが衰えてきた頃合いで視点を変えて「ジャンプ」したり、前の道に戻ってみたりする。
エネルギーを持続させるために何をするにしても力のカーブの次の段階に進むことが大事です。
秘訣5:場所は記憶を呼び覚ます
アイデアの流れを何かに書きとめて、グループのメンバー全員に見えるようにします。個々人にメモをとらせてはいけません。
壁にポストイットを貼っていったり、テーブルに大きな紙をひろげて書き込んだり。
IDEOではブレインストーミングを始める前に壁と平面をほとんど紙でおおっておくそうです。
アイデアを書きとめたりスケッチしたりしながら部屋中を移動すると、ある相乗効果が生まれる。チームのアイデアを素早く書きとめておくことは、力を蓄積したりジャンプしたりする過程で、立ち戻るべき価値のある事柄の心の覚書になるのだ。アイデアをとらえた壁のその場所に戻ると、そのときの記憶が呼び覚まされ、アイデアが最初に生まれたときの心の状態をもう一度とらえなおす助けになるのである。(p.71)
秘訣6:精神の筋肉をストレッチする
メンバーが初対面だったりあまりブレインストーミングをしたことがなかったりするときには、ブレインストーミングを始める前にウォーミングアップする方がよいようです。そうでない場合でもやっておいた方が効果が上がるかもしれないそうです。
ウォーミングアップとしてはメンバーで言葉遊び等をして心を白紙に戻したり、テーマに関連する調査を宿題で出しておいたり、といったことが挙げられています。
事前宿題については、資料や文献を調査させたグループよりも、実際にテーマに関連するお店に出向いて観察してきたグループの方がよりよい結果を出したとのこと。
秘訣7:身体を使う
すぐれたブレインストーミングは非常に視覚的である。(p.74)
第一に、競合する製品、他の分野で見られるあざやかな解決方法、問題に応用できそうなテクノロジーといったあらゆるものをブレインストーミングの場に持ち込むこと。
第二に、ありあわせの材料を使って、概念を表現する大まかなモデルを作ること。
第三に、「ボディストーミング」を活用すること。現在の行動パターンと使用パターンを身振りで表現し、それがどのように変えられるかを見る。
二次元を超えて三次元へ進むことがよいブレインストーミングには必要なのだそうです。