そういちコラム

数百文字~3000文字で森羅万象を語る。挿絵も描いてます。世界史ブログ「そういち総研」もお願いします。

2023-01-01から1年間の記事一覧

津田梅子・不自由な「母国」で道を切りひらいた女子留学生

明治4年、数名の少女が国費の留学生として米国に渡りました。その最年少が6歳の津田梅子(つだうめこ、1864~1929、元治元年~昭4)でした。彼女は通訳である藩士の娘で、父親は自分の娘に特別な教育(完全な英語力など)を与えたいと考えたのです。 津田梅…

「あの戦争」を何と呼ぶか・太平洋戦争の呼称

太平洋戦争(1941~45)などの昭和の戦争の名称に関しては、いくつかの立場があります。つまり、いくつかの呼び方がある。それは、政治的立場やそれと結びついた歴史観・世界観の相違を反映しています。 じつは昭和の戦争にかぎらず「歴史的事件を何と呼ぶか…

第二次世界大戦の犠牲者数・最も犠牲が多かった国は?

第ニ次世界大戦(1939~1945)による死者は、世界全体で軍人(戦闘員)2305万人、民間人3158万人、合計5400万人余りにのぼりました。これは、第一次世界大戦(軍人・民間合計で約1800万人)を大きく上回るものでした。 *ウッドラフ『概説現代世界の歴史』ミ…

ビッグモーターと前社長にこれから起きることは?「許認可」に注目

昨日、ビッグモーターの不祥事(自動車保険の不正請求など)について、テレビのワイドショーで「創業者の前社長に対し、どのような責任追及が可能か」を解説していました。 私は会社員時代に、法務・コンプライアンス関係の部署にいたことがあったせいか、こ…

映画『君たちはどう生きるか』は監督の自叙伝で、漫画版『ナウシカ』最終巻の映像化

*以下、映画についてのネタバレを含みます。まだこの映画をご覧になっていない方は、できるだけ予備知識なしでみることをおすすめします。 そもそも巨匠監督の作品を「どんな映画か」まったく知らずにみるなんて、今の時代ではなかなかできない、贅沢なこと…

すぐれた読みやすい自伝・坂本龍一『音楽は自由にする』

今年3月に亡くなった坂本龍一さん(1952~2023)の自伝『音楽は自由にする』(新潮文庫)を読みました。2009年に新潮社から出版された単行本を、つい最近(2023年5月発行として)文庫化したもの。 編集者の鈴木正文さんを聞き手として坂本さんが語ったことを…

生成型AIは「人間の精神」と「外界」のつながりを歪めるかもしれない

ChatGPTに代表される生成型AIというのは、情報の検索や整理、アイデアの検討などに役立つ道具です。そういうものとして使いこなせる人は、ぜひ使えばいいと思います。 その一方でChatGPTは「人間の精神・認識」と「外界」の関係をかく乱したり、歪めたりする…

モハメド・アリ 私たちに多くを与えてくれたアスリート

6月3日(この記事をアップした日)は、ボクサーのモハメド・アリ(1942~2016、アメリカ)の命日です。このブログでは、コンテンツの一部として、その誕生日や命日などに偉人を紹介する記事をたまにのせています。 モハメド・アリは、ボクシング史上最も有名…

チャップリン・独創ではないからこそ長く残った

山高帽、ダブダブのズボン、大きなドタ靴、ちょびヒゲ。「喜劇王」といわれた俳優・映画監督チャーリー・チャップリン(1899~1977、イギリス出身、おもにアメリカで活躍)のおなじみの扮装です。 でも、この扮装は彼の独創ではありません。その各パーツは、…

子どもたちの楽しみにおける「物語」の地位低下

「今の子どもに“物語”の楽しさや価値を伝えたい」――これはこのあいだ少しお話することがあった、ある若い国語の先生が述べていたことです。 この先生は、つぎのような話をされました。 「今の子どもは、自分が子どもだった頃(10年~10数年前)以上に、イン…

「個の力を削ぐもの」を除去するリーダー・2人の代表監督の仕事ぶり

組織のリーダーの重要な役割として、次のことがあると思います。 「“メンバー個々人が能力を発揮するうえで妨げとなる要素”が組織のなかで大きくならないように、その発生を抑えたり、小さな芽のうちに除去したりすること」 これは、サッカーワールドカップ…

久しぶりに(テレビで)野球観戦・ムダな時間を心ゆくまで楽しむ

今回のWBCで、私は久しぶりに野球の試合を(テレビの中継ですが)心ゆくまで楽しみました。 今50代後半の私は、子どもの頃(1970年代~80年頃)には、よくプロ野球のナイター中継をみたものです。とくに野球ファンというわけではなかったのですが、野球を…

プーチンの「被害者意識による正当化」という思考回路

先日(2023年2月21日)の年次教書演説など、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナでの紛争を煽り、犠牲を拡大させたのは、西側の権力者とウクライナの現政権だ」という発信をくり返しています。 それは要するに「自己正当化」ということですが、その「正当…

「公助」を使うのも主体性・「間違った自助努力」に気をつける

自分で頑張るだけでなく、周囲や、あるいは社会による支援に頼ることをどう考えるか? 「自助」「共助」「公助」という言葉もありますが、それらの関係や優先順位についてどう考えるか? これは、現代社会において人生に大きな影響をあたえる事項のひとつで…

素人が「科学とは何か」を考えるための本・『サイエンス・ファクト』

ガレス・レン&ロードリ・レン『サイエンス・ファクト 科学的根拠が信頼できない訳』(塚本浩司監訳・多田桃子訳、ニュートン新書、2023年)という本を読みました。イギリスの生理学者である父と、科学社会学的な分野の研究者である息子による共著。 サイエ…

ベンジャミン・フランクリン 近代社会を精いっぱい生きた最強の独学者 

1月17日は、ベンジャミン・フランクリン(1706~1790、アメリカ)の誕生日です。 フランクリンは、ワシントン、ジェファーソンと並ぶアメリカ独立の功労者で、電気学などの科学研究や、さまざまな社会事業で活躍しました。哲学や社会科学の分野でも業績があ…

いつまでもいると思うな・高橋幸宏さんの言葉

「いつまでもいると思うな高橋幸宏」――これは先日(2023年1月11日に)亡くなったYMOの高橋幸宏さん自身が数年前に述べた言葉です。 2016年11月に、バンドMETAFIVEの一員として生出演した朝のワイドショー『スッキリ‼』で、高橋さんはそう言っていました(ど…

「初詣」の歴史・じつは鉄道が生んだ新しい伝統

今年の初詣は、歩いて10分ほどの近所にある小さな神社に、元旦にお参りしました。 その神社に初詣に行くのは初めてのことで、「小さな神社だから空いているだろう」と思っていました。 しかし、かなりの人たちが(おそらく近所から)集まって行列になってい…

【新年の名言】星新一 ことしもまたごいっしょに宇宙旅行をしましょう

星新一(作家、1926~1997)がある年に友人たちに送った年賀状にはこう書かれていたそうです。 ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル…