事業縮小としてのクラウドという選択 for SIer
地位確立のためのクラウド
例えば WindowsAzure。Microsoft がクラウドに Azure を引き連れてきた理由は簡単で『クラウド分野においてもミドルウェアベンダとしての地位を確立したい』という狙いがあるため。だから Azure には Windows と名前が付けられ、WindowsAzure は PaaS と呼ばれている。
新たな金脈としてのクラウド
例えば AmazonEC2 や GoogleAppEngine。Amazon や Google にとって PaaS とは『自社のサービス構築基盤』であり『サーバの余剰能力をお金で買ってもらえる絶好の機会』だった。『システム構築の技術はあってもお金に変えられなかった部分を PaaS はお金にしてくれた』のが、SaaS ベンダである Amazon と Google にとってのクラウドの利点だった。
事業縮小としてのクラウド
それでは SIer がクラウドベンダになる利点は何か。元々 SIer はハードからソフトまでの一括納品という販売形態を持っていた。ハードの技術もソフトの技術も精錬されているが、元々一括納品がメインのビジネスモデルである以上、SIer にとってのクラウドとは
「一括納品」−「ソフトウェア」=「クラウド」
という図式が単に成り立ってしまう。技術の小売であるので、金額もこれと同じ数式になる。単純にソフトとハードが別売りになるので、一括納品という強みがすっかり薄れてしまう。SIer にとってクラウドとは負け戦に他ならず「当社のクラウドソリューション」という文言は「事業縮小します」という意味合いになってしまう。残念ながら。
一括納品としてのクラウド
ただし、SIer は一括納品という販売形態を捨てなかった。クラウドを織り交ぜてなお、ソフトとハードの一括納品を計画している。それは、最先端を行くクラウドベンダから見れば、非常に奇妙な販売形態として映るだろう。
オープン化の二の舞としてのクラウド
もっとも、この流れは十余年前にも起こっていた。安価でそこそこの性能の Linux マシンや Windows マシンが台頭しはじめてきた時、これまでソフトとハードを一括納品していた時代から、ハードとソフトを個別に売るという時代に一気に切り替わった。ただし SIer はそれを良しとせず『自作のソフトを Windows マシンに組み込んで、マシンごと一括納品する』という販売形態を取る道を選んだ。俗に言うオープン化である。