クリスマスの思い出
子供の頃、プラモデルが欲しくて欲しくて仕方なかった。
「ガンダム」とかがはやっていた頃だ。
欲しくて欲しくてどうしようもなかったけど、誕生日だって両親はそれを買ってくれたことはなかった。
そんなあるクリスマスの日、朝起きたら、プラモデルが枕元にあった。
それは欲しくてたまらなかった「ガンダム」のそれではなかった。
「日本丸」という帆船のものだった。
それでも私は初めて手にした「プラモデル」というものがとても嬉しかった。
後にして思えば、それは教育の一環だったのかもしれない。
そう、自分のお金が使えるようになって買った「ガンダム」のプラモデルなんて作るに容易い物だった。
沢山の帆、そしてそれに張り巡らさなければいけない糸の多さ。小学生には少し難しい物を選んだのかもしれない。ボトルアートに使われるようなものだったのだろうから。
きっと両親は、私が凝り性だということを判っていてそれを選んだのだろう。
毎日丁寧に丁寧にそれを作り上げて行った。
家族に、「今日、ここまで出来たよ!」と見せびらかしながら。
そして、ついに舳先とマスト頂上に糸を渡せば、全てが完成するはずだった次の日。
ちょっとした地震があった。
崩れた本棚の下に、そのプラモデルはあった。
私は泣き叫び荒れ狂った。なんで!なんで!と
両親は口々に、「かずはよくやっていたよ。」といった。
私は言った。「出来なければ意味がないよ。」と。
「やんなければいみないよ!」と。
泣き虫だ泣き虫だと言われていた私は、それ以降殆ど泣かなくなった。
両親は、私が真摯に言い出したことには、何も言わなくなった。
クリスマスはいろんなことがあって、今でもあまり好きになれないけど、あのときのことは忘れられないし、自分の原点なのかもしれないと思う。