南北合同入場が行われた2006年トリノ五輪から北朝鮮の核実験までの間に米韓合同軍事演習が行われているんだよね

upは2/11。
「日米、韓国の対話傾斜に警鐘=対北朝鮮で3カ国協調(2/8(木) 7:10配信 時事通信)」の件。

トランプ政権は朝鮮半島か中東で戦争にでもなれば支持率回復を見込めるでしょうし、安倍政権も朝鮮半島で戦争が起これば悲願の憲法9条潰しができるでしょうから、日米双方とも朝鮮半島の緊張状態を歓迎し、内心戦争勃発を望んでもいるのでしょうけどね。
“圧力のみで対話はしない”ってのは、要するに戦争も辞さないってことですし。

戦争発生時の推定犠牲者は韓国・日本に多くなるわけですが、戦場から遠いトランプアメリカにとっては許容可能でしょうし、安倍日本にとっても支持率に影響しない程度の日本人死者なら許容するでしょうから*1、甚大な犠牲者数の予測は、日米首脳にとって戦争を回避するインセンティブになっていません。

これに対して、戦争になった場合に最も大きな犠牲を強いられる韓国ではいかにして戦争を回避するかが重要ですし、文政権の政策としても“対話無しの圧力一辺倒”などに賛同はできませんよね。仮に保守政権だったとしても“戦争も辞さない”なんて態度の圧力には賛同しないでしょうし*2。

そのような日米と韓国の立場の違いを理解せずに、時事通信はこんな記事を書いています。

 日米の視線は、2~3月の五輪・パラリンピック期間後をにらむ。北朝鮮の五輪参加には、核・ミサイル開発を進める「時間稼ぎ」の意味合いがあるとみているからだ。ペンス氏は共同記者発表で、2006年のトリノ冬季五輪で南北合同入場行進が行われた約半年後に、北朝鮮が最初の核実験に踏み切ったことを指摘。「挑発を継続した」と述べ、南北の融和ムードの打ち消しを図った。 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00000015-jij-pol

2006年のトリノ五輪で南北合同入場行進を行ったが「約半年後に、北朝鮮が最初の核実験に踏み切った」として、平昌五輪での「南北の融和ムードの打ち消し」を企図しているわけです。つまり、北朝鮮に対して「融和」しても無駄だから戦争に追い込め、という感じですね。

しかし、時事記事には、トリノ五輪と北朝鮮の核実験の間の重要な事実が抜けています。

2006年の時系列

2006年2月10日~26日:トリノ五輪
2006年3月2日:南北将官級会談(第3回)
2006年3月25日~31日:米韓合同軍事演習(フォールイーグル)2006*3
2006年6月26日~7月28日:環太平洋合同軍事演習(リムパック)2006
2006年7月5日:北朝鮮弾道ミサイル発射
2006年8月21日~9月1日:米韓合同軍事演習(乙支フリーダムガーディアン)2006
2006年10月9日:北朝鮮核実験

盧武鉉政権は金正日総書記との南北首脳会談を強く望んでいましたが、その実現は翌2007年10月までかかりました。
また、北朝鮮は前2005年2月に核兵器保有宣言をしており核開発の懸念は2006年初頭からありました。
米軍の軍事演習が絶え間なく繰り返され、それに対応する形で、弾道ミサイル発射や核実験が行われてきた感じです。軍事演習を延期するなどしていたら、南北融和が促進され、核実験を回避できたかもしれませんが、支持率の低かった盧政権にはそのような力がありませんでした。

今回も安倍政権が五輪終了後の米韓合同軍事演習をけしかけているのは、朝鮮半島で南北融和させず対立を煽りたいという日本の国策に沿った対応とも言えますね。

12年前と違うのは当時の盧政権よりも文政権の支持率は遥かに高いと言う点ですが、それが奏効するかどうかが要注目といったところでしょう。



日米、韓国の対話傾斜に警鐘=対北朝鮮で3カ国協調

2/8(木) 7:10配信 時事通信
 安倍晋三首相とペンス米副大統領は韓国訪問に先立ち、同国が北朝鮮との安易な対話路線に傾くことに警鐘を鳴らした。
 7日の会談では北朝鮮に「最大限の圧力」をかけ続けるため、日米韓3カ国が協調する重要性を確認。文在寅韓国大統領との会談では、日米間で擦り合わせた圧力路線の継続を求める方針だ。
 「日米同盟の強固な絆において、さまざまな課題に対応していきたい」。2時間弱に及んだ会談の冒頭、首相は日米の緊密連携を呼び掛けた。これに対し、ペンス氏は「北朝鮮の挑発に終止符を打ち、脅威がなくなるまで、(日米が)一緒にいることを強調したい」と応じた。
 日米は平昌冬季五輪を利用した北朝鮮の「ほほ笑み外交」について、国際包囲網を分断する意図があるとして警戒を強めている。ただ、文大統領は南北対話を重視しており、日米韓の連携を維持する上で懸念材料となっている。首相が来日したペンス氏と、ことさら同盟関係をアピールした狙いについて、政府関係者は「今後の圧力継続を日米であらかじめ確認することで、文大統領をけん制する」と解説した。
 会談後の共同記者発表で、首相は「日米で確認した方針を文大統領とも確認し、日米韓の強固な協力関係が揺るぎないことを示したい」と表明。「北朝鮮が核・ミサイル計画を執拗(しつよう)に追求している事実は直視しなければならない」とも強調した。
 日米の視線は、2~3月の五輪・パラリンピック期間後をにらむ。北朝鮮の五輪参加には、核・ミサイル開発を進める「時間稼ぎ」の意味合いがあるとみているからだ。ペンス氏は共同記者発表で、2006年のトリノ冬季五輪で南北合同入場行進が行われた約半年後に、北朝鮮が最初の核実験に踏み切ったことを指摘。「挑発を継続した」と述べ、南北の融和ムードの打ち消しを図った。 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00000015-jij-pol

米韓、合同軍事演習

2006-08-21 15:04:41 cri
 韓国軍と米軍は21日から、韓国領内で12日間にわたる2006年度合同軍事演習を始めました。
 韓米共同司令部は、今回の軍事演習の日程を朝鮮側に伝えました。
 韓国とアメリカは1975年から、毎年このような合同軍事演習を行っています。演習は軍事面と政府関係の二つに分かれています。この軍事演習の目的は、朝鮮半島で突発事件が発生した場合、共同軍事行動の能力を評価し、向上させることにあります。また、政府関係の演習の狙いは、両国政府の各部門や民衆の危機に対応する能力を高めることです。

http://japanese.cri.cn/151/2006/08/21/[email protected]

*1:韓国人・朝鮮人の犠牲者数についてはどんなに膨大になっても日本社会はむしろ歓迎するでしょうし、北朝鮮の弾道ミサイルによる通常攻撃の被害程度では日本人の対北朝鮮憎悪を煽るくらいの効果しかもたらさないでしょう。仮に日本が核攻撃されたとしても一撃だけなら国内左派と在日朝鮮人の弾圧の根拠になるくらいでしょうし。

*2:天安艦沈没事件(2010年)でも韓国は自制しましたし。

*3:http://www.rimpeace.or.jp/jrp/iwakuni/fe2006.html