宿泊付面会交流の実施状況の日豪比較(オーストラリア 49.2%、日本 6.9% の違い)

日本とオーストラリアの面会交流の実施状況を比較するとこんな感じになっています。

面会頻度(%) 日本(2011) オーストラリア(2012-2013)
月2回以上 6.9 47.8
月1回 11.1 7.0
年1回*1 17.1 13.9
それ以下/皆無*2 64.9 23.8

オーストラリアの2012-13年の統計
日本の統計

比べるのがバカらしくなるくらいの差がありますね。オーストラリアでは月1回以上の面会交流が5割を超えているのに対し、日本では2割にも達しません。逆に、日本では6割以上の世帯でほとんど面会交流が行われていませんが、オーストラリアではそのような子どもは2割程度しかいません。
千田氏のような論者に言わせれば日本の離婚後別居親の6割以上がDV加害者で、隙あれば子どもに危害を加えかねない犯罪者予備軍ということなのかも知れません。
あるいは、オーストラリアの面会交流実施率は、別居親に子どもを殺す機会を与えるように法律で強制されているからだと主張するのかも知れません。
「「オーストラリアの親子断絶防止法は失敗した―小川富之教授(福岡大法科大学院)に聞く(千田有紀) 」でのダーシー・フリーマン(Darcey Freeman)事件の取り上げ方は、そのような主張を補強するようなやり方でした。

さて、本題です。

宿泊付面会交流の実施状況

オーストラリアの場合

Overnight stays with non-resident parent

Data table - Children aged 0-17 who had a natural parent living elsewhere: Proportion of nights per year spent with natural parent living elsewhere (2012-13)

Proportion of nights with natural parent living elsewhere %
Nil night 50.8
1-9% 16.1
10-19% 15.5
20-29% 6.7
30-49% 5.2
50% or more 5.7
Total 100.0

Note: Excludes children with no information of frequency of face-to-face contact with natural parent living elsewhere.
Source: ABS (2015), Family characteristics survey, 2012-13, Catalogue no. 4442.0

https://aifs.gov.au/facts-and-figures/parent-child-contact-after-separation/parent-child-contact-after-separation-source-data

さすがに宿泊付面会は多数派ではありませんが、ほぼ半数の子ども(17歳以下)が年に1度は別居親と一緒に夜を過ごしています。年間の10%(36日)以上宿泊する子どもは全体の33%に達しています。驚くべきは、「50% or more」が5.7%もいることです。30%以上とあわせると、10.9%の子どもは夜もほぼ均等に両親との時間を取っていることになります。

日本の場合

「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」では面会交流時の宿泊の有無がわかりませんでしたので、調停・審判で面会交流が規定された場合について見てみます。
2011年の司法統計*3によれば、認容・調停成立した事件5133件中、宿泊ありが認められたのは753件(14.7%)です。この比率を面会交流を行っている世帯についても適用すると宿泊付面会交流が実施されている比率は、6.9%に過ぎません*4。

オーストラリア 49.2%、日本 6.9%

年に一度でも別居親を宿泊付面会交流を行っている子ども・世帯の割合は、オーストラリアが49.2%であるの対し、日本は6.9%という状況です。
月1回以上別居親と面会交流を行っている子ども・世帯の割合についても、オーストラリアが54.8%であるのに対し、日本は18.0%に過ぎません。

この違いについて、「「オーストラリアの親子断絶防止法は失敗した―小川富之教授(福岡大法科大学院)に聞く(千田有紀) 」の記事中では小川教授も千田氏も一言も言及していません。
オーストラリアの統計は、2012-13年統計であって2011年の法改正以降の状況を示しています。
小川教授が親子断絶防止法のオーストラリア版と呼んでいる2006年改正法で「高葛藤事例で、潜在的に様々な問題を抱えている人たちの面会交流が増えてしまった」原因となった条文が解消されたはずの2011年改正法下での面会交流の状況でも、日本の現状とは比較にならないほど充実した面会交流が実施されているわけです。

この差が何故生じているのかの説明を小川教授も千田氏も一切していません。
オーストラリアは、ダーシー・フリーマン(Darcey Freeman)事件という悲劇的な事件を経験してもなお、5割の子どもが月1回以上の面会交流と年1回以上の宿泊面会を行っているわけです。
オーストラリアは子どもの命を軽視しているのでしょうか?それとも日本の別居親が特別凶悪・凶暴な危険人物ばかりなのでしょうか?
それとも法制や社会認識の違いでしょうか?

社会学者であれば、その辺が考察されてしかるべきではないでしょうか。

*1:日本の統計で「2〜3ヶ月に1回以上」「4〜6ヶ月に1回以上」「長期休暇中」となっている世帯数の割合

*2:日本の統計で「別途協議」「その他」「行ったことがない」「不詳」となっている世帯数の割合

*3:http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/144/006144.pdf

*4:「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」によれば、調査総数1749世帯中、面会交流を「行っている」「行ったことがある」世帯は828世帯(47.3%)。この47.3%と14.7%の積として6.9%を算出。