そのうち言及したい本、映画

最近読んだ本・映画に関して、そのうち言及したいなぁ、と思ってるけどなかなか出来なさそうなので、ざくっと備忘として書いておく。
ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い (中公新書)

ナチス政権や第二次大戦ではなく、ナチスの誕生から戦後ドイツにおける残滓まで1918年から1949年までを書いている内容。
軍事的・政治的に合理的でない選択をドイツが取った理由が思想的な合理性をもって説明されている感じ。
ナチスの暴力的・差別的性質をわかっていながら経済的な利益を理由にドイツ国民が漫然とナチスを支持したあたりの記述は、経済を理由に安倍政権を支持する現代日本を彷彿とさせるように感じた。


海軍の日中戦争: アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ

日中戦争から太平洋戦争に至るまでの日本海軍の「自滅のシナリオ」について書かれた本。大山事件を日本海軍の謀略とする説は、ほぼ同意できる*1。まあそもそも、大山中尉の車が虹橋飛行場前まで行ってたという時点で中国側の謀略は絶対にあり得ないし、西部派遣隊から海軍陸戦本部に向かう途中だったというのもデタラメだと明らかだけど、これまでの日本の通説では大山中尉が一方的被害者というものだったので、それを覆すには十分な内容だと思う。
上海事変以降の日中戦争における海軍側の好戦的な対応は、阿川本(山本五十六、米内光政、井上成美らの伝記*2)的な日本海軍認識を見直させるに十分だろう。
パネイ号事件などについても色々まとまってる。


ディファイアンス [Blu-ray]

エドワード・ズウィック監督による独ソ戦下の東欧ベラルーシでナチスから逃れて森の中に逃げ込んだユダヤ人らの話。実話ベースだが、終盤は特に映画的演出っぽい。ソ連におけるユダヤ人の立場なども興味深いが、個人的には森の中で1000人規模でユダヤ人が暮らす環境を作っていくあたりが、ロビン・フッド的にも感じたし、日中戦争における山岳地帯での解放区的にも感じた。


ジミー、野を駆ける伝説 [DVD]

ケン・ローチ監督による1930年代のアイルランドの実在の活動家ジミー・グラルトンの伝記的な映画。展開は地味だが、当時のアイルランド内部の政治状況などに詳しくなかったので非常に新鮮で興味深かった。日本の植民地下だった朝鮮も似たような雰囲気があったのかもなぁとか。


ヘルプ ~心がつなぐストーリー~ [DVD]

1960年代アメリカ南部を舞台にした黒人差別に関する話。「ヘルプ」とは黒人メイドのこと。フィクションだが、作者はアメリカ南部出身者で当時の黒人差別の状況について肌でよく知っている。しかし、「ミシシッピバーニング」のようなイメージで南部を語られるのに違和感があったらしい。ヘルプと主人の間に信頼や友情もあったことをちゃんと表現しつつも、差別の問題から目を背けてもいない。
中上流の白人家庭はヘルプを雇い、子守をさせるため、白人の子どもはヘルプにとてもよく懐くし、ヘルプも子どもを可愛がるわけで家族と言っていい絆もあるのだけど、育つにつれて黒人を差別するようになっていくそういう社会構造が上手く舞台として描かれていると思う。

*1:一点だけ気になるが

*2:重慶爆撃などについての記述などはほぼ皆無だったりする