ようやく、といった感じですが、これからが大事

ハーグ条約関連法が成立し、年度内に日本がハーグ拉致条約加盟国として発効する見通しになりました。

ハーグ条約、年度内発効へ…関連法が成立

 国際結婚が破綻した夫婦の子どもの扱いを定めたハーグ条約加盟後の国内手続きを定めた関連法は12日午前、参院本会議で全会一致で可決、成立した。
 条約承認案は5月に国会承認されており、政府は関係法令の整備を経て年度内の条約発効を目指す。
 関連法は、子どもを日本に連れ去られた加盟国の親からの返還申し立てを、外務省が受け付け、当事者間の話し合いで解決しない場合、東京か大阪の家庭裁判所で返還の可否を判断することなどを定めている。
 家裁が返還を拒否できる事情について、条約は「子どもの心身に害悪がある」などと定めている。関連法では、家裁に対し、戻された国で子が暴力を受ける恐れがある場合は、返還について考慮するよう明記、家庭内暴力から逃れるため日本に帰ってきた母子らに配慮した。
(2013年6月12日12時45分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130612-OYT1T00488.htm

菅政権がハーグ条約批准方針を閣議決定*1してから2年、日米首脳会談で話題に上ってからだと3年近く経って、ようやく国境を挟んで引き離される親子を救うための法的枠組みができたわけです。
当時の菅政権のやること何でも反対のネトウヨらは菅政権のハーグ条約批准方針を口汚く罵っていましたが、安倍政権になってからは借りてきた猫のように大人しく傅いているのは、彼らの党派性を如実に物語っていて面白いですね。

それはさておき、ハーグ拉致条約は一方の親が国境を越えて子どもを連れ去った場合、子どもを元の居住国に戻すための条約です。ハーグ条約加盟後の第一の注目点は、海外から日本に連れ去られてきた子どもを実際に返還するか否か、です。日本ではDVの定義がやたら広く適用される場合がありますので、それを援用した場合、海外の親からの子の返還を求められてもほとんどの場合をDV扱いして返還しないということがありえます。
第二の注目点は、国境を越えた子の連れ去りに対して日本政府が協力するというハーグ関連法を、日本国内で連れ去られた場合に適用するかどうかという点。法律の条文としては適用しなくても良いと言えますが、その場合、日本国内での子を連れ去られた親に対して不当な差別を司法が許すことになります。例えば、国境を挟んで日本に子どもが連れ去られた場合、残された親は子の居所がわからなくても日本政府に返還・面会を求めることができますが、日本国内の連れ去りの場合、子の居所がわからなければ親権や面会交流を求める裁判を起せません。
第三の注目点は、第二に付随しますが、日本では母親が子どもを連れ去ると同時に父親をDV加害者だと行政に訴えて転居情報を非開示にすることができます。離婚裁判で親権獲得を確実にし、慰謝料・養育費を有利に分捕るための黄金パターンですが、これが国境を挟んだ連れ去りでも適用されるか、という点。つまり、海外から子どもを連れ去ってきた親が、残された親をDV加害者だと行政に訴えておくことで、ハーグ条約の枠組みで子の返還を求められても外務省が拒絶するのではないか、ということです。

他にも色々課題がありますが、来年度以降の動向を注視する必要があるでしょう。

*1:2011年5月20日、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結に向けた準備について」http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2011/kakugi-2011052001.html