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科学な本のご紹介: ミニ特集:高齢者犯罪とダニング=クルーガー効果

科学に佇む書斎







『老人たちの裏社会 万引き、暴行、ストーカー、売春…他人事ではない長寿社会のリアル』 新郷由起 宝島社


【受刑者 1300人に認知症傾向 60歳以上の13% 法務省推計】
■2016年1月 毎日新聞
2014年に刑務所に入所した2万1866人のうち65歳以上の高齢者は2283人(10・4%)。統計を取り始めた1991年は1・3%だったが初めて1割を超えた。
2014年末時点の受刑者に占める60歳以上の割合は10年前の1・60倍で、日本の総人口に占める60歳以上の割合の増加率(1・23倍)より高い。





● 犯罪が高齢者で増加する要因は、大きく2つに分けられる。
「社会的要因」と「脳の故障」だ。

● ひとつめの「社会的要因」は、経済的な逆境感の強まり(貧窮)と、それにともなう絆(きずな 人間関係)の劣化。
経済的逆境感(貧しさ)が強まると、同時に、人々とのつながりも心理的に薄れていきやすく、いきおい、孤立スパイラルに陥りがちになる。

● もうひとつの、「脳の故障」の影響がどのくらい出てくるのかは、高齢期の認知症の増加割合を考えてもらえば、わかりやすいと思う。


■2013年5月 読売新聞
【認知症、高齢者の15%に 厚労省調査、85年から倍増】

■2014年4月 NHKニュース
【認知症で「はいかい」不明 1年で1万人】
 国内の認知症の高齢者はおととしの時点で462万人、高齢者の15%に達すると推計

● 認知症での数値は、それこそ「治療などの処置を配慮しなければ生活が難しい」と判断されるほどの、重い事例についての数字になる。

● 明らかな認知症とまではいかない、軽度の「脳の故障」を抱える高齢者の割合は、認知症の割合よりはるかに多くなる。故障した脳がしでかす不適切な判断の結果、犯罪行為をおかしてしまう事例も増えてくる。

※ 壊れていない脳の、健常な高齢者も多くいることは忘れないでね。

● さて、どんな脳の故障が、犯罪を増加させてしまうのか。





● 脳の抑制機能が壊れて、暴走しやすくなる。
つまり、「こらえ性がなくなる」。

※ 壊れていない脳の、健常な高齢者も多くいることは忘れないでね。

● 脳の不具合を抱えた高齢者がしでかす暴走は、「我慢できない」系の細かい犯罪だけではない。




リンク運転し続けたい 〜高齢ドライバー事故の対策最前線〜
 NHK クローズアップ現代 2014年7月8日放送
 ┗ この『クローズアップ現代』は、「どうやって高齢者に運転免許を返上していただくか」の問題。
「自分は交通事故にあわない」と考える人の割合が 70代では50%を超える という異様なグラフがご覧いただける。(若い世代では20%もいかない)
 自分の能力を過大評価して、運転を続けたがる高齢者。これはまさに文字通りの「暴走老人問題」なのであって。




その3年後、50%超どころではない数値の報告も相次ぐ。






● 高齢者で増加する「自信過剰」は、
「以前の自分にはできた経験があるから、という感覚のままでいる」
というレベルのものだとみなしていると、事態を把握し損ねることになる。

● 「自信過剰」は、脳機能の劣化によっても発生するのだ。




リンクダニング=クルーガー効果 - Wikipedia Dunning–Kruger effect

●「自分はどのくらいの自信をもっていていいのか」のチェック機能が、高齢期には逝ってしまいやすい。
「以前の自分にはできた経験がなくても」自分にはできると思い込みはじめる。
ここ重要。

● どんな「異常な自信過剰」が発生するのか。

▶ これまで一度も社会的に成功したことがなくても「まだ自分は社長になれる、あいつらとは器が違う」と周囲をさげすむ元ホームレスの70代男性。
▶ どこの現場も歓迎していないのに、無理して雇用してくれている恩人を「クソな仕事ばかりよこしやがって。いくらでも転職先はある」とディスる高次脳機能障害男性。
(どちらの事例もendBooksの身内に実在し、手に余る)

● そこまで、「事態を把握する機能」が逝ってしまう。
壊れた脳ってのはそういうことだ。
だからこそ、70代では「自分は交通事故にあわない」が50%を超えるという異様なグラフとなって現れる。

2016年12月 産経新聞  なぜ?自信過剰の高齢ドライバー 衝撃データ…老いるほど強気「自分は大丈夫」

加齢で上昇する幸福度 〜アメリカ
2016年12月 LiveScience Golden Years: Americans Get Happier in Older Age
「特に高齢者に過信傾向が強い理由は何だろうか。
理由の一つは、加齢のパラドックスとか幸福(ウェルビーイング) の逆説と呼ばれる、高齢者特有の心理状態である。
これは加齢に伴い老いが進行すると、能力や健康などが損なわれるにもかかわらず、高齢者の心理的、身体的な幸福感は維持されたり、かえって上昇したりするという現象のことをいう。」

松浦常夫●本『高齢ドライバーの安全心理学』

2016-03 BBC News Rise in wellbeing found in late 60s
イギリスの全国調査: 70代に近づくと、60代だったときより人生の満足度が増大すると出た。

あと、これも関係あるかもしれない。

高齢者ダニング・クルーガー


● 元々、ヒト心理は何かにつけ、「自分の能力は平均以上である」と過剰な自己評価をする傾向がある。その自信過剰傾向を、周囲の評価を察知することでなんぼか抑えこんで(空気を読んで)暴走を食い止めている。
→『ミニ特集:あなたは平均以上の人間ですか』

● その高次な脳機能は、機能が繊細であるだけに、高齢期には逝ってしまいやすいのだ。

● とはいえ、学習能力が完全に逝っているわけではないので、周囲からのツッコミがそれなりにあれば、なんぼか事態は緩和される。
周囲からのツッコミがないと… 



● ツッコミがない環境にいる孤立高齢者は、暴走しやすくなる。
このへんを踏まえない(孤立を放置する)設計の社会では、高齢者の暴走は顕在化するばかりとなる。




「走行距離あたりの事故は75歳を境に急上昇する。」

松浦常夫●本『高齢ドライバーの安全心理学』





以上、資料メモ置き場です。

※ この稿の骨子は2016年に記したもの。
 当時はようやく「高齢者ドライバーの事故が多いぞ」と騒がれはじめた頃で、メディア上では「年をとっても昔の頃のままだと思ってしまうんですよね」という(実態調査無視の)解釈で沙汰されていたため、事態を確認させるべく【ダニング=クルーガー効果】を掲げて稿をまとめたしだい。
 その後、2018年半ばに至ってようやくメディア上でも「高齢者の異常な自信グラフ」が共有されるようになった。

※ 壊れていない脳の、健常な高齢者も多くいることは忘れないでね。








→『ミニ特集:高齢者は自分自身の未来 その2』
→『ミニ特集:高齢者は自分自身の未来 その1』
→『ミニ特集:高齢期を知る』

 




 No.2016,0229
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