ミニ特集:免疫をめぐる腸内細菌と寄生虫
『失われてゆく、我々の内なる細菌』
『寄生虫なき病』
『わたしたちの体は寄生虫を欲している』
『すべての不調をなくしたければ除菌はやめなさい』
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』
『失われてゆく、我々の内なる細菌』
マーティン・J・ブレイザー みすず書房
●抗生物質を投与された乳幼児は、のちにアレルギーなどの免疫系トラブルを抱えやすくなる!?
腸内細菌の不具合が、さまざまな現代病を引き起こす!?
NHKが「腸内フローラ」の呼称を巷間に投下して以来、注目が集まる腸内細菌叢。その科学がたっぷり。
原著は2014年。
1850年のアメリカでは、生まれた赤ん坊の4人に1人が1歳の誕生日を迎えることなく死亡した。
今日(こんにち)のアメリカにおいて、1000人のうち1歳の誕生日を迎える前に死亡する赤ん坊の数はわずか6人にすぎない。
今読んでる『失われていく、我々の内なる細菌』ていう本、『寄生虫なき病』と同じノリかと思って読み始めたんだけど、全然違う。この作者すごい場数踏んでる。
— はむの (@hmpydmpt) 2016年5月8日
『寄生虫なき病』
モイセズ・ベラスケス=マノフ 文藝春秋
●体内に本来いるはずの寄生虫がいないから、われわれはさまざまな難病に苦しんでいる!
そんな知見を手がかりに、「人体投入用の寄生虫」を各種販売する民間業者の実態、そしてその寄生虫の体験記など、ややドギツめの濃厚科学ルポ。
原著は2012年。
「寄生虫を導入する免疫療法」が、巷間でどのように受容され、どのような形に「暴走」していくのか、の強烈な実録とも言える。
藤田紘一郎さんにもちょこっと言及。
「スシ・ファクター」日本の子どもたちにアトピー性皮膚炎が増えていた1990年代、ボルネオ島で調査に当たっていた藤田紘一郎は、ボルネオの子どもたちにはアトピーもアレルギーもないことに気づいた。
また、ボルネオの子どもたちは多くの寄生虫に感染していた。この二つの事実には何か関連があるのだろうか、と藤田は考えた。
ヤツネンコとゴードンは、日本人の腸内細菌叢が海藻を消化する独特の能力を持っていることを発見した。『ネイチャー』誌はこれを、「スシ・ファクター」と呼んだ。
『寿司因子』については、↓ のページに特集を置いてあります。
『私たちは今でも進化しているのか?』 日本人の腸内フローラ
産業革命前にはほとんどの人が一種類ないし数種類の精製されていない主要作物(たとえば欧米ではコムギ、オオムギ、ジャガイモ)から熱量を得ていたのに対して、
現代アメリカ人は熱量の四分の三を精製された砂糖及び穀類、植物油、乳製品から摂っている。このような食生活は、進化の歴史から見ても生物学的に見ても未曾有のものである。
男の胎児の免疫系のほうが、免疫の刷り込みも受けやすかった。母体が炎症を起こしていた場合、子どもが炎症傾向を示す確率は、その子が男児だった場合のほうが高かった。
自閉症の疫学的特徴は、衛生仮説の他のパターンとも一致している。アメリカ、オーストラリア、イギリスでおこなわれた調査から、自閉症児は二番目以降に生まれた子どもよりも第一子に多いことが分かった。
『発達障害の原因と発症メカニズム』
┗ 発達障害の原因に環境汚染・胎内汚染がある可能性を検証する
●…本書の「民間で、勝手に良さげな虫を自己責任で売買する、コアな人たち」という図は、
『ミミズの話 人類にとって重要な生きもの』
にいろいろ登場した「作物に良さ気な土壌細菌を自己責任で売買するコアな人たち」の姿と強くデジャブる。
「効果があるといわれるが、その効用は心象しだいで曖昧」なほど、熱烈に支持する層が憑きやすい…。
本を読むのが遅すぎて、またしても返却期限までに読み終えることができない
— ジャングル探検家 (@autumnstayer) 2016年5月2日
寄生虫なき病という本だが、原題はAN EPIDEMIC OF ABSENCE
寄生虫だけでなく細菌やウイルス、原虫など寄生生物全般の不在が自己免疫疾患の原因になっていると、豊富な事例から解き明かしていく
「寄生虫なき病」以前から気になっていたことが書いてある。虫歯菌が移るのを嫌って口移しをしなくなっているが、そのためにEBVというヘルペスウイルスの一種に感染する機会を奪っているのでは、という。EBV感染を2歳までに終えないと、将来多発性硬化症になるリスクが高まるという。
— shinshinohara (@ShinShinohara) 2015年9月13日
「寄生虫なき病」がほんと面白い。SF小説の解説本を読むようなワクワク感がある。 pic.twitter.com/YmEjC1IK88
— 鼻声俊太郎 (@the_poor_poet) 2015年10月27日
『寄生虫なき病』ここ何年かでベストだわ。種々の免疫系疾患、果ては自閉症などまで、人を取り巻く環境が変わったことがそれらにどうやって影響してるか次々と合点が行く。現代人必読
— Asa Hero (@Piechha) 2015年8月14日
【2017年8月 LiveScience】
— 科学に佇む一行読書心 (@endBooks) 2017年8月10日
ドイツの食品衛生局、「寄生虫の卵(豚鞭虫 Trichuris suis)」をヒト用の食品添加物として認可するか否かを検討中https://t.co/Pqwj7aw1n3
タイの企業が販売し、すでにタイ国内では食品や飲料に認可済み
🍹🍔
『わたしたちの体は寄生虫を欲している』
ロブ・ダン
ポピュラーサイエンス 飛鳥新社
●タイトルは『わたしたちの体は寄生虫を欲している』だけど、寄生虫ネタ(上掲『寄生虫なき病』とかぶる内容)は序盤どまりで、全体に進化医学、進化心理学がらみのおつまみエッセイでふんわりとまとめた本。あくまでふんわり。
なお、『わたしたちの体は寄生虫を欲している』の原書は2011年、『寄生虫なき病』の原書は2012年。
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』
アランナ・コリン 河出書房新社
●体調不良の原因はその除菌?
常在細菌叢がアレになると人は太ったり病んだり心がアレになったりする…
海外で広まりつつある糞便移植治療についてはもちろん、肥満、糖尿病、腸炎、アトピー、喘息、そして自閉症の症状を左右する事例にも注目するなど情報量が多く、とても読み応えのある仕上がり。
原書は2015年。
なんでいちいち各書籍の原書の発行年を記しているかというと、この時期この分野の研究と言説が英語圏で急速に進展してきているから。
こちらで紹介
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』
…ということで、藤田先生の著作もいくつかあたってみたのだけれど、連発されている近作各種は「特定の見解を看板にして巷間を向きすぎる生活を長く続けた結果」研究者が陥りやすい***な状態になっているようで、たいへん紹介がしづらく(ry
『すべての不調をなくしたければ除菌はやめなさい』
Dr・ジョシュ・アックス 文響社
●腸内細菌啓蒙運動がこじれて漢方もどきな我流解釈を看板に商売しているちょっと…な先生の本。
原題は「Eat Dirt」。
まえがきは藤田紘一郎。
後半に出てくる「質問表へのリンク」はURL切れ。
で、紹介するのはやめとこうかなと思ってたんだけど、「Eat Dirt」つながりなこんなのが出てきたので参考資料としておいておきます…↓
Latest News from Science Magazine: Baboons’ gut makeup is determined mostly by soil, not genetics https://t.co/aZkzTqCuNG
— ScienceSeeker Feed (@SciSeekFeed) 2019年4月23日
『ミニ特集:免疫をめぐる腸内細菌と寄生虫』
『ミニ特集:心の健康と腸内フローラ』
『ミニ特集:寄生生物 その2』
『ミニ特集:寄生生物 その1』
『資料置き場:寄生虫トキソプラズマにご用心』