1巻100撰。 フジモリ@三軒茶屋の場合

1巻で完結するオススメマンガの紹介が流行っているとのことです。
●全1巻オススメ漫画100選(予):良いコミック
●【やじうまWatch】「全1巻のオススメ漫画」の紹介エントリが100選を目指して奮闘中 ほか - INTERNET Watch Watch
●http://alfalfalfa.com/archives/914417.html
というわけで流行に乗っかるのが好きなフジモリが、以前ご紹介した1巻100撰*1をアップデートして再掲してみることにしました。
自分も経験あるからわかるのですが、全1巻の本を100冊選ぶのって、けっこう大変なのですよ。
しかしながら他の方の紹介記事やオススメマンガを読むと、やっぱりマンガの世界は広大だなぁ、と感じたり。
今回は2010年時点でのオススメ100撰で、比較的あたらしめのマンガもランクインしています。
TOP10は100撰のなかでも10傑なのですが、項番11以降はランキングではなく順不同でのご紹介です。
コメントなどは順次アップデートしていきますですよ。それではどうぞ。

1)リンガフランカ/滝沢麻耶

リンガフランカ (アフタヌーンKC)

リンガフランカ (アフタヌーンKC)

互いに心に傷を持つ主人公二人が「漫才」という共通項でつながり、心の交流を深めていくマンガ。
「漫才」という形態を細かく噛み砕いて分析しながら、「心の交流」に昇華させている作者の手腕に脱帽。
【書評】三軒茶屋本館 フジモリの書評『リンガフランカ』

2)FLIP-FLAP/とよ田みのる

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

ピンボールというマイナな題材に作者お得意の直球ラブコメが見事に絡み合い、読後感爽やかな「良作」に仕上がったと思います。
あーもーフジモリも山田さんとピンボールやりたいなぁ!
【書評】とよ田みのる『FLIP FLAP』講談社 - 三軒茶屋 別館
【書評】『FLIP FLAP』に見るマイナジャンル漫画の「文法」 - 三軒茶屋 別館

3)邪眼は月輪に飛ぶ/藤田和日郎

邪眼は月輪に飛ぶ (ビッグコミックス)

邪眼は月輪に飛ぶ (ビッグコミックス)

「見られた生物全てを死に至らしめる」フクロウ・ミネルヴァと、マタギ・杣口をはじめとする人間たちの戦いを描く活劇マンガ。
「藤田和日郎、ここにあり!」とでも言うべき「熱い」マンガ。1巻完結だが続編を出してほしいぐらい面白かった。

4)おひっこし/沙村弘明

竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)

竹易てあし漫画全集 おひっこし (アフタヌーンKC)

『無限の住人』の沙村広明が竹易てあし名義で描いた処女短編集。
表題作はモラトリアムのなかラブでコメる大学生の男女たちをギャグ(小ネタ)いっぱいに描いた作品で、未だに「これが沙村広明の最高傑作」と評する人も多いです。
弾けるテンション、まぶされるサブカル小ネタなど、マンガ好きならマストバイ。

5)死刑執行中脱獄進行中/荒木飛呂彦

死刑執行中 脱獄進行中 (愛蔵版コミックス)

死刑執行中 脱獄進行中 (愛蔵版コミックス)

『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦の短編集。
「奇妙」を描かせたら右に出るものはいない(←独断)作者・荒木飛呂彦の魅力が堪能できる一冊。

6)召喚の蛮名/槻城ゆう子

召喚の蛮名―学園奇覯譚 (Beam comix)

召喚の蛮名―学園奇覯譚 (Beam comix)

神智科という魔法使い養成学級に編入した主人公・栃草緋不美がさまざまなトラブルに巻き込まれる、クトゥルー神話を下敷きにした学園異能マンガ。
クトゥルーというオカルト心をくすぐる題材であり、非常に骨太の作品であり、個人的に続刊を最も待ちわびるマンガです。

7)平成よっぱらい研究所/二ノ宮知子

「のだめカンタービレ」でおなじみの二ノ宮知子の赤裸々な酔っ払い私生活を描いたエッセイマンガ。
「酔っ払い、かくあるべし!」とでも言うべき豪快な酔っ払いぶり。読むとなぜか、たけいの姿が目に浮かびます(笑)。

8)アップフェルラント物語/ふくやまけいこ

田中芳樹の小説を原作とした、架空の国を舞台にしたボーイ・ミーツ・ガールな冒険マンガ。
ルパン三世 カリオストロの城』 や『天空の城ラピュタ』が好きなら楽しめる良作。

9)すべてがFになる/浅田寅ヲ

森博嗣のミステリィ小説『すべてがFになる』を漫画化。孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む・・・という話。
犀川先生がかっこよすぎるのが難だが(笑)、雰囲気はよくでています。マンガを読んで小説に、という流れでも可。
以下は小説の書評です。
●三軒茶屋本館 フジモリの書評『すべてがFになる』

10)暁の歌/藤田和日郎

暁の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-22))

暁の歌 (小学館文庫―藤田和日郎短編集 (ふD-22))

個人的に藤田和日郎の最高傑作短編だと思っている「美食王(ガストキング)の到着」が収録されています。
他の作品もオススメ。

11)夜の歌/藤田和日郎

『うしおととら』という大長編の物語を紡いだ作者が、短編というフィールドでもみごとなストーリーテラーであることを証明した処女短編集。
一見粗いように思う筆致が、幻想的な雰囲気に非常になじむことを再確認させられる。

12)週刊石川雅之/石川雅之

週刊 石川雅之 (イブニングKC)

週刊 石川雅之 (イブニングKC)

『もやしもん』作者による短編集。こういう奇妙なペーソスのお話が得意なんだなぁ、と思わせます。

13)ネムルバカ/石黒正数

ネムルバカ (リュウコミックス)

ネムルバカ (リュウコミックス)

『それでも町は廻っている』作者による、インディーズ歌手とモラトリアムを満喫する女子大生の掛け合いによる青春マンガ。
「駄サイクル」や「売れるためのショートカット」など、「芸術」というジャンルに一歩踏み込んだ棘と毒がほのかに痛い、「これぞ1巻完結」という名作。

14)黒猫の三角/皇なつき

森博嗣の同名小説のマンガ化。作者の徹底した世界観の読み込み・咀嚼消化により、原作ファンも納得できるコミカライズとなった。

15)女王の百年密室/スズキユカ

森博嗣のSF小説『女王の百年密室』を漫画化。200年後の未来、「クルマ」の事故で女王が統治する街に迷い込んだ主人公、サエバミチルとパートナのウォーカロン・ロイディ。幸福で平和な暮らしが営まれている、犯罪のないこの街で密室殺人が起こり・・・という話。
作者の繊細なタッチが茫洋とした物語の世界観と非常によくマッチする。マンガを読んで小説に(以下略)

16)あずまんがリサイクル/あずまきよひこ

『あずまんが大王』『よつばと!』でおなじみのあずまきよひこが過去に発表した作品をまとめたもの。
現在の作品の萌芽が見られる、資料的価値のある一品。

17)ダイホンヤ/とり・みき

ダイホンヤ

ダイホンヤ

SFギャグ漫画家とり・みきによる、『書店法』成立に伴う本の特殊化が引き起こした書店の凶悪犯罪と「書店管理官」を描いたSFギャグの快作(怪作)。
ハードボイルドに描けるのに、密度の濃い小ネタ含め、読者をくすぐる要素が満載でまさにエンターテイメントに徹した一冊。

18)ももんち/冬目景

ももんち (ビッグコミックススペシャル)

ももんち (ビッグコミックススペシャル)

冬目景の描く1冊完結のラブコメ漫画です。
冬目景のエッセンスが詰め込まれた珠玉の一冊。
●冬目景『ももんち』小学館 - 三軒茶屋 別館

19)変人偏屈列伝/荒木飛呂彦・鬼窪浩久

変人偏屈列伝 (愛蔵版コミックス)

変人偏屈列伝 (愛蔵版コミックス)

「エジソンに敗れた男」ニコラ・テスラや「異能の大リーガー」タイ・カッブなど様々な偉人かつ変人を描く短編集。
「狂気と天才は紙一重」という言葉が「言葉ではなく心で!」理解できるマンガ。悪役として出てくるエジソンの異常さがスゴイ。

20)ALIVE/高橋ツトム

殺人犯・八代天周は刑執行の直前、ある組織の条件により処刑を回避する。隔離された天周の隣部屋に“異次物”の憑いた美しい女が…というサイコ・サスペンスマンガ。
凄惨で粗笨で生々しい高橋ツトムの作風が凝縮された一作。映画化もされました。

21)シャーリー/森薫

シャーリー (Beam comix)

シャーリー (Beam comix)

「メイドを描かせたら日本一(←フジモリが勝手に認定)」の漫画家・森薫によるメイド短編集。
メイド萌えとは一線を画す執拗なまでのメイドの描き込みや、メイドと主人たちのやりとりの妙が満喫できる。同じ作者の代表作『エマ』も良いが、こちらもオススメです。

22)猫田一金五郎の冒険/とり・みき

「斜めすぎる屋敷の犯罪」「Y2Kの悲劇」など、ミステリ好きにはたまらないネタ満載のパロミステリ漫画。
原作を知らなくても楽しめるが、知っている人はもっと楽しめる。京極夏彦との合作漫画もあるので、そっちのファンにもオススメ。

23)GOTH/大岩ケンヂ

GOTH (角川コミックス・エース)

GOTH (角川コミックス・エース)

乙一のサスペンス小説『GOTH』を漫画化。「殺すこと」に興味を持っている「僕」と「殺される」ことに興味を持っているクラスメイトの森野が繰り広げる「殺人者たちの」物語。
「あの」小説をよく漫画化できたと思います。小説に比べ「異常」な部分は薄まっているので、マンガを(以下略)。映画化されました。

24)監督不行届/安野モヨコ

監督不行届 (Feelコミックス)

監督不行届 (Feelコミックス)

「働きマン」の作者・安野モヨコと「新世紀エヴァンゲリオン」監督・庵野秀明との「オタクな」新婚生活を描くエッセイマンガ。
「薄い」オタクの安野モヨコが「濃い」オタクの庵野秀明に「汚染」されていく過程が面白い。夫婦に限らず、会話に共通項がある、ということは幸せなんだなぁ、と感じるマンガ。

25)アーケードゲーマーふぶき/吉崎観音

無敵の女子高生ゲーマー・ふぶきが繰り広げるゲームバトルギャグマンガ。
現代版・ゲームセンターあらし。「ケロロ軍曹」のキャラクタ(や名前)も一部登場するなど芸が細かい。

26)そっと好かれる/小田扉

そっと好かれる (F×COMICS)

そっと好かれる (F×COMICS)

変な女の子たちの変な日常を描く短編集。
とぼけたタッチで描かれる変な日常がシュールで良い。

27)黒博物館スプリンガルド/藤田和日郎

黒博物館 スプリンガルド (モーニング KC)

黒博物館 スプリンガルド (モーニング KC)

3年前にロンドンを賑わせた怪人「バネ足ジャック」が再び出没した。スコットランド・ヤードのロッケンフィールド警部は犯人を放蕩貴族ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイドと睨むが・・・という話。
藤田和日郎のエッセンスがぎゅっと詰め込まれた1冊です。
●藤田和日郎『黒博物館 スプリンガルド』講談社 - 三軒茶屋 別館

28)無敵鉄姫スピンちゃん/大亜門

無敵鉄姫スピンちゃん (ジャンプコミックス)

無敵鉄姫スピンちゃん (ジャンプコミックス)

1巻打ち切りとなってしまったものの、のちの作品につながる大亜門節(パロディのオラオララッシュ)は健在の一冊。

29)人斬り竜馬/石川雅之

人斬り龍馬 (SPコミックス)

人斬り龍馬 (SPコミックス)

坂本龍馬が「英雄化」される昨今のご時世ですが(笑)、その龍馬像を180度覆す、「悪役」として坂本龍馬を描くという挑戦的な短編。表題作以外にも短編を含んでいますが、歴史が持つ「哀」を切り取っています。

30)純情パイン/尾玉なみえ

純情パイン (ジャンプコミックス)

純情パイン (ジャンプコミックス)

鬼才・尾玉なみえのデビュー作であるギャグ漫画。尾玉ワールドにハマるかどうかのリトマス試験紙的な作品です。

31)おもいでエマノン/鶴田謙二

梶尾真治の同名SF小説のコミカライズ。
原作のイラストも鶴田謙二が担当しており、まさに小説そのままの美麗な世界が満喫できる一冊。

32)雪の峠・剣の舞/岩明均

雪の峠・剣の舞 (講談社漫画文庫)

雪の峠・剣の舞 (講談社漫画文庫)

『寄生獣』の作者による、戦国時代、江戸時代を舞台にした歴史漫画。
岩明均の新たな一面が見られる良質な佳作。

33)凹村戦争/西島大介

凹村戦争 (ハヤカワ文庫 JA ニ 2-1)

凹村戦争 (ハヤカワ文庫 JA ニ 2-1)

隔離された場所凹村(おうそん)を舞台にした、骨太のSF作品。「ゼロ年代」を代表する作品の一つ(だそうです)

34)魔少年ビーティー/荒木飛呂彦

魔少年ビーティー (集英社文庫―コミック版)

魔少年ビーティー (集英社文庫―コミック版)

改めて読むと、この漫画の特異性やのちの『ジョジョの奇妙な冒険』との共通点が見え隠れし、非常に面白かったです。
●『魔少年ビーティー』に見る『ジョジョの奇妙な冒険』への萌芽 - 三軒茶屋 別館

35)夕凪の街桜の国/こうの史代

夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

原爆投下後の広島市を舞台とした、3世代にわたる家族の物語を描いた、優しい筆致ながらも重い作品。
実写映画化もされました。

36)燃えよペン/島本和彦

燃えよペン (サンデーGXコミックス)

燃えよペン (サンデーGXコミックス)

続編『吼えよペン』もありますが、『燃えよペン』は1巻で完結してますのでご紹介。
作者・島本和彦自身を思わせる、「熱い」漫画家のお話です。
「島本語録」と呼ばれるほどの熱い言葉が満載。

37)青春少年マガジン1978〜1983/小林まこと

青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス 週刊少年マガジン)

青春少年マガジン1978~1983 (KCデラックス 週刊少年マガジン)

命を削ってマンガを描く漫画家という職業に最大限の敬意を払える一冊。

38)失踪日記/吾妻ひでお

失踪日記

失踪日記

自らの失踪・ホームレス時代を淡々と描くエッセイマンガの傑作。
『バクマン。』では決して描かれない「漫画家」という職業の「リアル」をあくまで「エンターテイメント」として描く作者のプロ根性に感動します。

40)11人いる!/萩尾望都

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

宇宙大学の入学最終試験の会場である宇宙船を舞台とした、本格的なSF漫画。
ある意味、「SF漫画の祖」と読んでもいいと思います。

41)蓬莱学園の疾走!/米村孝一郎

蓬莱学園の疾走! (ドラゴンコミックス)

蓬莱学園の疾走! (ドラゴンコミックス)

知る人ぞ知るPBM(またはライトノベル)「蓬莱学園シリーズ」の舞台である、絶海の孤島に存在する巨大な学園・蓬莱学園の日常を描く短編集。
赤松健『魔法先生ネギま!』も蓬莱学園をモチーフにしたそうですが、大学園のハチャメチャな雰囲気が感じ取れる一冊です。

42)妖の寄る家/宇河弘樹

妖の寄る家 (ヤングキングコミックス)

妖の寄る家 (ヤングキングコミックス)

『朝霧の巫女』につながる表題作含め、さまざまな色のお話が詰められた短編集。

43)以下略/平野耕太

以下略

以下略

ダメ人間たちの「らき☆すた」。胸を張って他人に薦め「られない」マンガ。「これはひどい」が褒め言葉。
●平野耕太『以下略』ソフトバンククリエイティブ - 三軒茶屋 別館

44)BLUE DROP/吉富昭仁

Blue drop 1―天使の僕ら (チャンピオンREDコミックス)

Blue drop 1―天使の僕ら (チャンピオンREDコミックス)

『EAT−MAN』の吉富昭仁によるSF百合漫画短編集。
「SF」という観点からも「百合」という観点からもしっかりと描かれており、のちの作品含め「SF百合作家といえば吉富昭仁」と天下に知らしめるに不足ない作品。

45)僕らの変拍子/冬目景

僕らの変拍子 (バーズコミックス)

僕らの変拍子 (バーズコミックス)

「モラトリアム」という冬目景作品に共通するエッセンスが存分に描かれている、彼女のデビュー作。

46)ZERO/冬目景

Zero (バーズコミックス)

Zero (バーズコミックス)

冬目景の初長編作品。
とある女生徒の学校全体を巻き込んだ復讐劇とそれに巻き込まれる男子生徒を描いた、これもまた冬目景のテーマである「青春の鬱屈」が詰められた、これもまた王道の「1巻完結」漫画。

47)死にぞこないの青/山本小鉄子

乙一の同名小説のコミカライズ。
いわゆる「黒乙一」と呼ばれる方の「暗い」作品なのですが、原作の雰囲気が巧く出ています。

48)Worlds/藤崎竜

『封神演義』『屍鬼』の藤崎竜のデビュー作を含む短編集。
SFとこの作者の相性の良さはこの1冊からでもよくわかります。

49)魔法の少尉ブラスターマリ/池田恵

魔法の少尉ブラスターマリ (電撃コミックス)

魔法の少尉ブラスターマリ (電撃コミックス)

「ガンダム」+「魔法少女」という「混ぜるな危険」の2ジャンルが奇跡的に組み合わされた一作。
「1日ザク」という言葉は他の漫画で小ネタとして使われているので聞いたことがある人もいるかも。

50)怪奇版画男/唐沢なをき

怪奇版画男 (Big spirits comics―版画SPECIAL)

怪奇版画男 (Big spirits comics―版画SPECIAL)

全編「版画」というバカ怪作。
内容以上に、その労力のためだけに読む価値あり。

51)Spirit of Wonder/鶴田謙二

Spirit of Wonder (KCデラックス)

Spirit of Wonder (KCデラックス)

鶴田謙二によるSF漫画作品集。
百万回言われているかもしれませんが、チャイナさんがかわいいです。

52)暗黒神話/諸星大二郎

暗黒神話 (集英社文庫(コミック版))

暗黒神話 (集英社文庫(コミック版))

「伝奇マンガ」の第一人者、諸星大二郎のある意味「入門書」ともいえる作品。
彼の描く独特の世界は、まさに「唯一無二」だと思います。

53)スレイヤーズ/あらいずみるい

『スレイヤーズ!』をイラストレーターであるあらいずみるいがコミック化した一冊。
リナが貧乳じゃないことを除けば(笑)、小説の雰囲気そのままのマンガ。

54)ピコピコ少年/押切蓮介

ピコピコ少年

ピコピコ少年

あーこれなんてオレ。青春の蹉跌に心の古傷をえぐられます。「ファミコン」という会話の共通基盤を持つ自分たちは幸せだと思いました。
●押切蓮介『ピコピコ少年』太田出版 - 三軒茶屋 別館

55)刑務所の中/花輪和一

刑務所の中 (講談社漫画文庫)

刑務所の中 (講談社漫画文庫)

自ら収容された刑務所での経験を克明に描いた、異色の「獄中記録」漫画。
「知らない世界を知る」というマンガの持つ「力」をまさに体感できる一冊。

56)青い春/松本大洋

青い春―松本大洋短編集 (Big spirits comics special)

青い春―松本大洋短編集 (Big spirits comics special)

すべての世の中に対して反抗期な青少年たちを、独特の勢いのある筆致で描く、青春短編漫画の名作。

57)青い車/よしもとよしとも

青い車 (CUE COMICS)

青い車 (CUE COMICS)

『青い春』が「ポジ」なら、『青い車』は「ネガ」です。
青春に伴う「痛み」と「絶望」と「虚無」と「悲しみ」を乾いた筆致で描く、こちらもまた、青春短編漫画の名作です。

58)はれた日は学校をやすんで/西原理恵子

はれた日は学校をやすんで (双葉文庫)

はれた日は学校をやすんで (双葉文庫)

思春期の微妙な心を描く、西原理恵子の半自伝的なエッセイマンガ。
彼女の描く、「郷愁」とも「哀切」ともいえない独特な「もの悲しさ」は、彼女以外には描けないであろうと思います。

59)座敷女/望月峯太郎

座敷女 (KCデラックス)

座敷女 (KCデラックス)

正体不明の不気味な大女につきまとわれる大学生の恐怖を描く、ホラー漫画の傑作。
「ストーカー」という言葉が流行る前に出版された、という事実もまた興味深い。

60)孤独のグルメ/谷口ジロー

孤独のグルメ 【新装版】

孤独のグルメ 【新装版】

主人公が淡々と食事をする、それを淡々と描くことにより、普通の食事が「ドラマ」として映えてくるマンガです。おなかすいたー。
●『孤独のグルメ』と「モヤモヤさまぁ〜ず2」 - 三軒茶屋 別館

61)地底人の逆襲/いしいひさいち

地底人の逆襲 (双葉文庫)

地底人の逆襲 (双葉文庫)

4コママンガの名手であるいしいひさいちの作品集の中から、あえてこの一冊をチョイス。
馬鹿馬鹿しさの中にある奥深さが秀逸。

62)はまり道/吉田戦車

はまり道 (アスキーコミックス)

はまり道 (アスキーコミックス)

吉田戦車のゲーム4コマ漫画。
マリオを中年の水道工としてリアルに描き、ルイージと兄弟喧嘩させるという、「ゲームキャラそのものを戯画化した」さきがけ的なギャクマンガ。

63)ねじ式/つげ義春

ねじ式 (小学館文庫)

ねじ式 (小学館文庫)

歴史的資料として読んだ方が良いと思う一冊。不条理の世界は読んで眩暈がします。

64)おやじの惑星/桜玉吉

おやじの惑星

おやじの惑星

この作者は個人的に好きなのでピックアップ。
さまざまな媒体に掲載されていた作品をまとめたため内容が非常にカオスですが、そこがまた桜玉吉らしいかな、と思います。

65)アクアリウム/須藤真澄

アクアリウム

アクアリウム

お魚と話せる少女が主人公の連作短編。
絵柄はほんわかして「癒し系」な感じもしますが(実際その部分もあるけど)、「死生観」や「人のつながり」などが底に流れている独特な佳品。

66)家族のそれから/ひぐちアサ

家族のそれから (アフタヌーンKC)

家族のそれから (アフタヌーンKC)

『おおきく振りかぶって』作者による、「家族」を描いた物語。
「おおぶり」ではあまり描かれない(しかしひぐちアサの本質でもある)、奇麗事だけではない人間関係の「つらさ」がみっちりと描かれている。

67)今日の5の2/桜場コハル

今日の5の2 (ヤンマガKCスペシャル)

今日の5の2 (ヤンマガKCスペシャル)

『みなみけ』の桜場コハルによる、元気な小学生たちのおバカな物語。
ノリやお色気は『みなみけ』と同成分なので、安心して楽しめると思います。(←?)

68)シスタージェネレーター/沙村広明

シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC)

シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC)

まさか『制服は脱げない』を単行本で拝める日が来るとは思わんかった。これだけで買い。あとはベタだけど『エメラルド』が白眉。

69)PRESENT FOR ME/石黒正数

Present for me 石黒正数短編集 (ヤングキングコミックス)

Present for me 石黒正数短編集 (ヤングキングコミックス)

石黒正数の初短編集です。
とぼけた内容、SF要素、伏線など練りこまれたストーリーと、短編作家としても実力が垣間見られる作品ばかりです。

70)さくらがんばる!/中平正彦

さくらがんばる!―完全版

さくらがんばる!―完全版

格闘ゲーム『ストリートファイターZERO2』からのスピンオフ作品。
作中のキャラである「神月かりん」がZERO3に逆輸入されたというエピソードはスト2ファンの間ではけっこう有名かと思います。

71)ほしのこえ/佐原ミズ

ほしのこえ (KCデラックス)

ほしのこえ (KCデラックス)

新海誠の同名の短編映画のコミカライズ。
原作の雰囲気が見事に一冊にまとめられ、「マンガの映像化に比べ、映像のマンガ化のほうが成功してる率は高いよなぁ」と再認識させる一作。

72)椎名大百貨店/椎名高志

椎名大百貨店 (サンデーGXコミックス)

椎名大百貨店 (サンデーGXコミックス)

『GS美神』『絶対可憐チルドレン』の椎名高志によるSFギャグ短編集。
どの短編集も外れがないのですが、最新のものをチョイス。
個人的には椎名高志は「短編の名手」だと思っているのですが、皆さんいかがでしょうか?(いきなりのフリ)

73)新装版 土曜ワイド殺人事件/ゆうきまさみ・とり・みき

いわゆる「二時間ドラマ」を、ゆうきまさみととり・みきが「これでもか!」とパロディ化した作品。
両者とも「パロディの名手」であり、その二人により突っ込みどころ満載の「二時間ドラマ」がパロディ化されたのですから、そのあるある感あふれる、そしてまたお約束を巧みにずらした「パロディ」っぷりはまさに必見。

74)屈折リーベ/西川魯介

屈折リーベ (ジェッツコミックス)

屈折リーベ (ジェッツコミックス)

メガネっ子を描かせたら五本の指に入る(とフジモリが勝手に思っている)西川魯介の、メガネっ子スキーにはたまらない一冊です。

75)ゴージャス・アイリン/荒木飛呂彦

ゴージャス★アイリン (愛蔵版コミックス)

ゴージャス★アイリン (愛蔵版コミックス)

当時のジャンプの表現規制がおおらかだったことがよくわかる一冊。わたし、残酷ですわよ。

76)ヘウレーカ/岩明均

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

ヘウレーカ (ジェッツコミックス)

古代ローマを舞台とした歴史マンガ。
先述した『雪の峠・剣の舞』もそうですが、歴史上のマイナーな1エピソードをこれだけ面白く描く技量は、ほんとスゴイと思います。

77)サンドランド/鳥山明

SAND LAND (ジャンプコミックス)

SAND LAND (ジャンプコミックス)

鳥山明の1巻ものはけっこうありますが、「冒険」が感じられるこの一冊を推薦。

78)探偵綺譚/石黒正数

探偵綺譚?石黒正数短編集? (リュウコミックス)

探偵綺譚?石黒正数短編集? (リュウコミックス)

「それ町」への萌芽が見られる短編集。
収録作「スイッチ」が『世にも奇妙な物語』で実写化されたことからもわかるとおり、奇妙で捻った作品が目白押しです。

79)遠藤浩輝短編集 2/遠藤浩輝

遠藤浩輝短編集(2) (アフタヌーンKC)

遠藤浩輝短編集(2) (アフタヌーンKC)

『EDEN』『オールラウンダー廻』の作者による短編集。
1よりも2の方が好きなのでこちらを。

80)6番目の世界/福島聡

6番目の世界 (Beam comix)

6番目の世界 (Beam comix)

福島聡の短編集。6作とも絵柄を変え、6つの「異なる世界」を描いている。
読者を選ぶかもしれませんが、「叙情派」と呼ぶのに相応しい作品です。

81)サイコスタッフ/水上悟志

サイコスタッフ (まんがタイムKRコミックス)

サイコスタッフ (まんがタイムKRコミックス)

『惑星のさみだれ』作者によるSF漫画。この1巻で完結する長編作品であり、かつ「セカイ系へのアンチテーゼ(あるいは、回答)」というテーマをきっちり含んでいる、まさに「全1巻完結漫画」の王道ともいえる名作。

82)みかにハラスメント/水兵きき

この100撰にもし「変態枠」というシード枠を設けるとしたら、この作品と後述の『葵DESTRUCTION』は確実に入ってくるでしょう。
基本はドタバタコメディなのですが、そのシチュエーションが「エロ斬新」です(笑)。

83)ブラッドハーレーの馬車/沙村広明

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

ブラッドハーレーの馬車 (Fx COMICS)

とある孤児院と刑務所との関係を描いた、子供には一切お勧めできない「残酷な」作品。
沙村広明の筆致と相俟って、凄惨で残酷な美しさが読者に刺さります。

84)小桧山中学吹奏楽部/米根真紀

小檜山中学吹奏楽部 (ラポートコミックス)

小檜山中学吹奏楽部 (ラポートコミックス)

今は亡き、雑誌「ファンロード」でおなじみラポート出版社から発行された吹奏楽部漫画です。
強烈な面白さ、というよりも吹奏楽部の日常を垣間見たい人にオススメできる漫画です。
●米根真紀『小桧山中学吹奏楽部』ラポートコミックス - 三軒茶屋 別館

85)バオー来訪者/荒木飛呂彦

バオー来訪者 (集英社文庫―コミック版)

バオー来訪者 (集英社文庫―コミック版)

本来は2巻なのですが1巻にまとまったため無理やりランクインしました(笑)。
擬音、構図、アクションなど荒木節炸裂で、しかも伏線回収含めうまく1巻でまとめていると思います。

86)失踪HOLIDAY/清原紘

失踪HOLIDAY (角川コミックス・エース (KCA170-1))

失踪HOLIDAY (角川コミックス・エース (KCA170-1))

乙一の同名小説のコミカライズ化。
原作の「せつない」雰囲気が出ています。

87)大平面の小さな罪/岡崎二郎

大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

大平面の小さな罪 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

良質なSFミステリー。
●岡崎二郎『大平面の小さな罪』ビームコミックス - 三軒茶屋 別館

88)げーせん/江崎ころすけ

げーせん (ミッシィコミックス)

げーせん (ミッシィコミックス)

ゲーセンを舞台にした業界裏話マンガ。なんだけど、絵柄含めほんわかした感じがgood。そーいや最近ゲーセン行ってないなぁ。
●古き良き「ゲーセン」の雰囲気を満喫できる一冊 江崎ころすけ『げーせん』宙出版 - 三軒茶屋 別館

89)風よ、万里を翔けよ/秋乃茉莉

田中芳樹の同名小説をコミカライズした作品です。
ディズニー映画「ムーラン」でも主人公となった、中国の男装戦士・花木蘭を描いた中華スペクタクル・ロマンです。
田中芳樹作品のコミカライズは、原作者が作画者を指名する場合もあるほどこだわっているため、この作品も内容と絵柄が非常にマッチしています。

90)葵DESTRUCTION/井上和郎

葵DESTRUCTION! 井上和郎短編集

葵DESTRUCTION! 井上和郎短編集

サンデーが誇る変態作家(←ほめてます)井上和郎による短編集です。
38歳だけど見た目はショタという親父が気になる不良息子・・・という時点で、「この作者(頭が)大丈夫か?」と思わせる設定なのですが、コメディの土台がしっかりしているため普通に面白いです。

91)江戸むらさき特急/ほりのぶゆき

江戸むらさき特急 (ビッグコミックス ワイド版)

江戸むらさき特急 (ビッグコミックス ワイド版)

本来は3巻ですが、全1巻にまとまったものが出ているので。
古今東西の時代劇をパロディにしたギャグマンガです。
なんと故・山城新伍氏監督で実写化もされました。

92)リストランテ・パラディーゾ/オノナツメ

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

従業員の全員が「老紳士」というローマの小さなレストラン(リストランテ)を舞台に描く人間ドラマ。
老紳士たちがかっこよく、マンガ評論家ブルボン小林などは『マンガホニャララ』で「『リストランテ・パラディーゾ』を好きという女性に注意しろ!」(←意訳)と言っていましたが、なんとなくその気持ちがわかります(笑)。

93)イグアナの娘/萩尾望都

イグアナの娘 (小学館文庫)

イグアナの娘 (小学館文庫)

菅野美穂主演でドラマ化もされましたが、娘が「イグアナ」に見える母親とその娘との確執を描いた物語です。
作者の実体験と相俟って、コミカルな絵柄の中にシリアスな母娘の苦悩がある名作です。

94)陽炎日記/木尾士目

陽炎日記 (アフタヌーンKC)

陽炎日記 (アフタヌーンKC)

『げんしけん』木尾士目のデビュー作。のちの『五年生』に通じる、恋愛は奇麗事ではないということを存分に描いている「痛い」作品。

95)オトノハコ/岩岡ヒサエ

オトノハコ (KCデラックス Kiss)

オトノハコ (KCデラックス Kiss)

実写映画化される「土星マンション」の作者・岩岡ヒサエが「合唱部」をテーマに描いた青春マンガです。
甘酸っぱい恋のエッセンスをまぶした青春マンガですが、ほんわかした作者の筆致もあり非常に良い読後感を残します。
●心地よき合唱マンガ 岩岡ヒサエ『オトノハコ』 - 三軒茶屋 別館

96)学園夢探偵獏/滝沢麻耶

学園夢探偵獏 (アフタヌーンKC)

学園夢探偵獏 (アフタヌーンKC)

 漫才マンガ『リンガフランカ』の作者・滝沢麻耶が鹿島摩耶名義で書いた「ガクエンエロミステリアスコメディ」(講談社HPより)です。
●鹿島麻耶『学園夢探偵 獏』講談社 - 三軒茶屋 別館

97)この度はご愁傷様です/宮本福助

この度は御愁傷様です (モーニング KC)

この度は御愁傷様です (モーニング KC)

『拝み屋横丁顛末記』の宮本福助によるコメディです。
死んだ祖父に振り回される息子たちのドタバタ喜劇なのですが、 最近では「ホームドラマ」「ホームコメディ」というジャンルはめっきり少なくなったと思いますが、本書はそんな「古きよき」ホームコメディを見事に復活させていると思います。
●宮本福助『この度はご愁傷様です』講談社 - 三軒茶屋 別館

98)萌道/カラスヤサトシ

萌道 (バンブー・コミックス)

萌道 (バンブー・コミックス)

 自らの痛い過去をペーソスを交えながらもコミカルに描いた『カラスヤサトシ』の作者、カラスヤサトシが各地の萌えスポットを周ったエッセイマンガです。
 画風はほのぼのしているのですが、描いている内容は痛々しさ満載で、なんというか、「逆に笑ってしまう」マンガでした。
●カラスヤサトシ『萌道』竹書房 - 三軒茶屋 別館

99)君と僕のアシアト/よしづきくみち

実写映画化される『フレフレ少女』のコミカライズを担当している、よしづきくみちの短編集です。
商業誌、同人誌に掲載された短編が収録されており、高橋しんに似た絵のタッチで、線が細いながらもぷにっとした皮膚の感覚がよく出てると思います。
表題作は、「変えられないかもしれないけど、戻りたい過去」に対する焦がれる気持ちが読むものの胸を打つお話です、
線のタッチもあいまって繊細な心の機微を丁寧に描いている短編集です。
●よしづきくみち『君と僕のアシアト』集英社 - 三軒茶屋 別館

100)のろい屋しまい/ひらりん

のろい屋しまい (リュウコミックススペシャル)

のろい屋しまい (リュウコミックススペシャル)

魔法使いのヨヨさんとネネさんがひらいている「のろい屋」を舞台にしたほのぼのドラマ。
1コマ1コマ眺めるだけでも飽きず、また1巻完結でありながら、舞台となる世界の地図や歴史、登場人物の家計図はもちろんのこと、主人公である二人の魔女の階級や魔法の概念など、それだけでRPGが1本作れるほどの設定が盛り込まれています。
「世界」を味わいたい人、満喫したい人は必ずや満足できる一冊だと思います。
●物語世界を満喫できる傑作 ひらりん『のろい屋しまい』 - 三軒茶屋 別館


というわけでフジモリの1巻100撰のご紹介でした。
皆様のオススメマンガや皆様の1巻100撰などもご紹介いただければ幸いです。

*1:この場合「選」の漢字を当てた方が適切かもしれませんが、まあ、こっちの字のほうがかっこいいというか、ノリということで見逃してください。