フィリピンから嘉手納基地に向かう途中の米軍ヘリ3機が5月18日、天候不良のため宮古空港に緊急着陸した際、米兵22人が検疫を行わないまま外出し、宮古島市内のホテルで1泊滞在していた事が分かった。
空港での検疫は検疫法第5条で義務付けられており、米軍人の出入国などを定めた日米地位協定の9条では日本側が検疫すると定めている。
通常、検疫は飛行機の機長が搭乗者の体調を把握し、全員分の健康状態をまとめた「明告書」にサインをする。感染症の流行地域などから入国する際はサーモグラフィーでの体温確認なども実施する。今回、フィリピンでは感染症の流行は確認されていなかった。
宮古空港には検疫の常設施設はなく、必要があれば那覇検疫所から検疫官が出張し検疫する事などで対応する。
宮古空港管理事務所によると、米兵は米軍機の着陸直後、滑走路に降り、一時、空港内に滞在。横田基地とやり取りし、空港内に宿泊施設がない事から市内のホテル2カ所への宿泊を決めたという。その際、県との調整などで混乱していたこともあり、同管理事務所の職員が検疫の実施の確認や空港から出ないよう求める事はなかった。
那覇検疫所は翌日、米兵22人が検疫をせず市内に滞在した事実を把握。同所の職員が米兵が利用したホテルやタクシー会社を調査し、米兵と接触のあった29人を特定し健康調査をした。多くの感染病の潜伏期間とされる1週間を過ぎてからも健康不良を訴える報告はなかったという。
琉球新報の取材に対し、嘉手納基地は「今回の着陸は計画されたものではなかった。空港に検疫設備はなく、日本側が通常とる隔離などの手続きもなかった。兵士たちは嘉手納基地に戻り検疫を受けた」とした。
宮古島市の長濱政治副市長は「このような事態は県内どこでもありうる。ルール作りを徹底してほしい」と求めた。
県空港課は「緊急着陸というまれな出来事で、今回は連絡がうまくできなかった」と説明した。那覇検疫所は「検疫は絶対しなければならない。できる限りのフォローをした」とし今後、県との連携強化を確認した、と明らかにした。(清水柚里)