リクルート進学総研は全国の全日制高校に新学習指導要領・ICT活用・キャリア教育・進路指導などの取組みに関する調査行い2025年1月9日、調査結果を公表した。新学習指導要領の進捗度を尋ねた設問では、3校につき1校は特に課題感のある教科はないと回答していることが明らかとなった。
高校教育改革に関する調査は2024年9月5日~20日、全国の全日制高校4,679校を対象に郵送調査とインターネット調査を併用して行われた。有効回答数は671件、うち75.0%は進路指導主事からの回答となっている。
「新学習指導要領」への対応の進捗度については、「授業」「教材」「評価」ともに「計画通りに進んだ」が8割前後。2022年と比較すると、いずれの項目も「計画以上・計画通りに進んだ・計」の割合が増加。特に「評価」は8ポイント増加した。
取組みにあたり課題感のある教科は「特になし」が30%と、およそ3校につき1校は課題がないと感じていることが明らかとなった。一方、課題感のある教科としてあがった中では、「情報」が41%を占めもっとも高い割合となった。
「総合的な探究の時間」の取組みは「導入・計」が前年同様、9割超え。ほとんどの学校が「探究活動」が生徒の進路選択へつながると回答した。取組みにあたり、もっとも難易度が高いステップは「課題の設定」が6割強、課題は「教員の負担の大きさ」が82%を占めた。取組みによる変化として、生徒は「主体性・多様性・協働性が向上した」(14%)、教員・学校は「地域など校外との関係ができた/深まった」(20%)とする意見が最多だった。
ICTは99%が授業、ホームルーム、探究などの教育活動に活用。現在の教育活動における具体的なICT活用方法・活用シーンは「宿題・課題の配信」が92%でトップとなった。ICT活用による変化として、生徒は「主体性・多様性・協働性が向上した」(38%)、「学びに向かう姿勢・意欲が向上した」(37%)が上位にあがった。一方、教員・学校は「授業の質が向上した」(56%)が最多となった。
今後の教育活動におけるICT活用方法は「宿題・課題等をオンラインで配布」(56%)がトップ。ICTの活用によって狙いたい効果・変化のトップは、「生徒の興味を喚起し、学習へのモチベーションを上げる」(59%)、ついで「生徒ひとりひとりが自分にあった方法や進度で学習できる」「先生方の負担軽減・校務の効率化」(各54%)。
AI活用については「教員個人で活用している」(50%)と「使い始めていない(活用はまだこれから)」(46%)の回答に二分された。 生成AIの活用場面のトップは「授業教材やテスト問題の作成」(43%)、ついで「挨拶文や保護者向けお知らせ文書の作成」(33%)、「課題の採点や添削」(25%)となった。
進路検討における「オープンキャンパス」参加の推奨度は96%。「強く推奨している」も6割を超える。推奨する理由は「入学後のミスマッチの防止・齟齬の解消」がトップ。2022年と比較して大きな変化はなく、依然として高水準となった。
「入試の早期化」については、「あまり好ましくない」が48%で半数近くを占め、「非常に好ましくない」とあわせると6割以上が「好ましくない」と考えていることがわかった。
また、これからの社会が「好ましい社会だ」とする割合は、2021年の6割の水準には届かなかったものの、2022年より増加。 教員からみて、今後の社会に特に必要とされると思う社会人基礎力は「主体性」「課題発見力」が上位。一方、現在の高校生にこれらが“備わっている”と感じる割合は低いことが明らかとなった。進路指導上の課題は「入学者選抜の多様化」が62%でトップ。ついで「教員が進路指導を行うための時間の不足」が60%、「学習意欲の低下」が55%で続いた。
キャリア教育に関しては、96%が「取り組んでいる」と回答。2022年と比較すると、「学校全体」での取組みが4ポイント増加した一方、「学年や課程・学科・コース単位」が10ポイント大きく減少し「組織的対応・計」では6ポイント減少して85%となった。今後の課題は「教員の負担の大きさ」が66%でやや突出した。
時間のかかる教員業務のトップは「授業準備」(30%)、ついで「部活指導」(19%)、「教材研究」(14%)。2022年と比較して大きな変化はなかった。ICTの活用で業務時間がもっとも削減されたと思う業務を尋ねたところ、「採点」27%、「特になし」24%、「授業準備」15%の順となった。
リクルート進学総研は、「スタディサプリ学習」「スタディサプリ進路」を展開するリクルートにおける、高校生や高等教育の調査研究機関。高・大・社をつなぎ、マーケット全体の動向を発信している。