ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まって2年。
やはりロシアは粘り強い。その軍は野蛮ですが決して馬鹿ではなくむしろ自分の限られた手札でいかに戦うかについては昔からきわめて優秀です。経済も今のところ充分に保っています。そもそも経済が最優先の国ではない。
とはいえクレムリンがこの戦争に勝つことはないでしょう。もしウクライナの西部を割譲して停戦となっても、それは勝利を意味しない。クレムリンがなぜ開戦へ踏み切ったのか、詳細な分析ができるのは当分先のことになるでしょうが、少なくとも影響圏の維持、帝国の維持が目的だったはずです。
しかしゼレンスキーの排除と傀儡政権の樹立には失敗し、最低でも一世代は続く憎悪を両国民の間に生み出してしまいました。これではルースキー・ミールもなにもあったものではありません。ロシアの西部国境を多少西へ動かしたところで、それはクレムリンの考える帝国の維持とやらに充分でしょうか。
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強権的なプーチン体制もそう長くは保ちますまい。かつてソ連はたとえそれがかりそめのものでも未来と建設のビジョンを提示することができましたが、いまのクレムリンは過去に生きています。率先して国が規範を損ねているような国ではシニシズムが蔓延し活力は失われ、経済制裁も中長期的には効いてくるでしょう。少子化も止まりません。やがて中国のジュニアパートナーになる予測は説得力があります。
そのなかでの強権をいつまで続けられるか、はたして。現在、大方のロシア人がプーチンを支持しているとしても(積極的に支持しているのは少数でしょうが)……沈滞したロシア社会がそのままプーチン的なものを受け容れ続ける将来もあり得る気がしてきたな。いやいや。
ロシア人はスターリン時代を経ても活力と批判精神を忘れることはありませんでした。僕は期待します。
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しかしクレムリンが勝利できないことと、ウクライナが勝つことは別問題です。ましてウクライナ人はロシアの変革のために戦っているわけではない(ウクライナの勝利がロシアの変革を早めはするでしょうが)。ここまであからさまな侵略を良しとできるか、プーチン的なやり口を是とするか、できるわけはありません。ウクライナ人が勝利を目指して戦う限り、それを援助するのは義務なのです。
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ことここに至っては日本もウクライナへ武器援助をすべきだと思います。実に気に食わぬことです。断じて武器輸出反対という意見は本当にもっともです。それに一人ひとりのロシア人を殺すことへ自覚的に加担するのはやりきれない。
ただ、そのためには国政の場で真摯に議論せねばならず、また日本が依って立つ自由と民主と人権という価値観を国の内外へ向け真面目に再確認せねばなりません。パレスチナなどで西側先進国政府の倫理観は相当に怪しくなりましたが、それは自由と民主と人権の概念を損なうものではないはずです。
教育勅語を信奉するような与党議員や靖国神社へ参拝する自衛隊員を黙認などせず、大日本帝国的なものと決別を明言し、そこではじめて……と書くとやっぱりハードル高そうだなあ。いやいや。
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将来ロシア人がこの戦争をどう評価するのか、ロシア連邦が解体する可能性についてなど考えていることはいろいろあるのだけど、それはまた今度。
せめて国境なき医師団などへの寄付を今月も続けましょう。