本シリーズは、所有しているミラーレス機の詳細を世代別に
紹介して行く記事だ。
今回は、ミラーレス第一世代=登場期(世代の定義は第一回
記事参照)のSONY NEX-3(2010年)について紹介しよう。
使用レンズは本機NEX-3の特性に合う物を2種類準備している。
まず最初のレンズは、SONY E30mm/f3.5 Macro (SEL30M35)
(ミラーレス・マニアックス第72回、補足編第2回)
を使用する。

これは、2010年代のEマウント(APS-C型/NEX用)専用の
純正準広角(標準画角)AF等倍マクロレンズだ。
以降、本システムで撮影した写真を挟みながらNEX-3を
紹介していく。
ちなみに、非常に輪郭が固いという描写特性(欠点)を持つ
レンズである、今回は出来るだけその問題を回避する使い方
をしていこう。

さて、まずは本機を取り巻く歴史の説明だが、
本機NEX-3は、SONY初のミラーレス機である。
2010年、カメラ界では既にPANASONIC Gシリーズ、OLYMPUS PEN
シリーズというμ4/3陣営がミラーレスの市場を独占していた。
これらの2メーカーは、2000年代中頃はフォーサーズ陣営で
あり、ニコン、キヤノン等の一眼レフ陣営に比べ、後発で
あるが故に、一眼レフ市場ではビジネス的に厳しかった状況
であったのは、他の記事でも説明した通りである。
SONYも後発だと言える。
元来のαを開発したミノルタは、デジタルカメラの分野に
おいても、コンパクト機のDimageシリーズ等を早目に展開して
いた方であり、コニカミノルタになった際にもα-7 Digital,
α-Sweet Digitalと、他のカメラメーカーにひけをとらずに
デジタル一眼レフを展開していた。

ここで、2004年頃に発売された各社デジタル一眼の機種名を
あげてみよう、
CANON:EOS-1D/s MarkⅡ,EOS 20D
NIKON:D2H,D70
KONICA MINOLTA:α-7 Digital
PENTAX:*istDs
OLYMPUS:E-300
と、ちょうど2004年頃に各社からデジタル一眼レフが
出揃っている。
なお、FUJI,RICOH,CASIO,PANASONIC,SANYO そしてSONYは、
この時代は、デジタル・コンパクト機のみの展開であり、
京セラCONTAXは、一眼のN Digitalを2002年に発売した物の
商業的に失敗し、2005年にカメラ事業から撤退している。
SIGMAも一応2002年よりデジタル一眼レフを展開していたが
市場ではあまり一般的では無かった。
この2004年時点を見れば、各社のデジタル一眼レフの水準は、
ほぼ横並びであるように見える。
(まあ実際の所、使っていたセンサー部品も、その殆どが
600万画素CCDで各社共通であった)
CANONは自社CMOSを利用した高級機1Dシリーズで、他社より
先行していたし、中級機EOS 20Dは完成度が高かった。
(デジタル一眼レフ・クラッシックス第5回EOS 30Dの記事で
少し紹介)
NIKONは高級機D2H(デジタル一眼第1回記事)は商業的に
失敗したが、中級機D70(デジタル一眼第4回記事)では
成功を収めた。
KONICA MINOTLTA α-7Digital(デジタル一眼第3回記事)
は、ボデイ内手ブレ補正を初搭載するなど先進的であった。
PENTAX *istDs(デジタル一眼第2回記事)は、
当時、最も安価なデジタル一眼として人気があった。
OLYMPUS E-300(デジタル一眼第8回 E-410の記事で紹介)
は、やや後発だが、マニア受けはしていたと思う。
すなわち、各社似たりよったりの状態で、いずれも一斉に
デジタル一眼レフ競争のスタートラインに着いた所である。
このような状況であるので、SONYがこのデジタル一眼市場に
参入しても、十分にやって行けると思われた事であろう。

だが、実際にSONYがαを引き継いだのは、この時点から
2年程過ぎた2006年初頭、そして、そこから2007年までの間は、
コニカミノルタとの共同開発と思われるα100の1機種のみで
ラインナップを支えていた状態で、SONY独自の一眼レフを
発売したのは、α700(2007年、デジタル一眼第7回記事)
が最初である。
そして、このちょっとした僅か数年のもたつきが、進化の
極めて速いデジタル機器市場では、大きな差となってしまう。
CANONとNIKONが、この間(2005~2007年)開発を先行させ、
完成度が高い様々なデジタル一眼レフをリリースしていた。
(例:EOS 5D,EOS 40D,EOS kiss Digital X
NIKON D2X,D3,D300,D80)
他社は、この2強になんとか対抗しなければならない。
オリンパスとパナソニックの4/3陣営は、デジタル一眼市場
での追従は困難と見たのか、μ4/3規格の準備を始める。
リコーは、2005年にマニア向けの高級コンパクト機
GR Digitalを発売、この分野に特化していく。
(2009年にGXRシステムを発売、本シリーズ第2回記事)
サンヨーは、自社ブランドの商品こそ少ないが、この時代の
各社のデジタル・コンパクト機の大半をOEM生産していた
隠れた巨大メーカーであった。しかし2000年代後半の
事業再編、パナソニックとの合併等の事情で、カメラ部門は
後に独立してXacti(ザクティ)社となり、現代に至るまで
各カメラメーカーにデジタルカメラ内部部品等をOEM供給
している。
PENTAXは、HOYAやRICOHとの合併で揺れていたが、
まあ、一眼レフは順調に展開を続け、ややマニアックな路線
で正常進化していた。まあでも、少しだけマニア路線を
攻めていかないと、オーソドックスな一眼での勝負は厳しい。
(例:K10D,2006年,デジタル一眼第6回記事)
このころから既に、QシステムやK-01等のミラーレス化の
構想を進めていたことであろう。
本題のSONYだが、2004年頃の時点では、さほどメーカー間の
差異が無かった状況であったのが、そこから数年での競争激化、
特に2強の激しいデッドヒートと急速なデジタル一眼レフの
普及の状況を見て、一眼レフ市場での後追いは不利と見たのか、
2000年代後半より、ミラーレス機への展開および、新型αを
これまでの一眼レフとは全く異なる構造へと進化させる為の
準備を進めていただろうと思われる。

それが2010年にSONYより発売されたミラーレス機である本機
NEX-3と同時発売のNEX-5であり、さらには同年、一眼レフでも、
独自のコンセプトによる、一眼とミラーレスのハイブリッド的
な機種であるα55をリリースしている。
まあ実際には、SONYのデジタル一眼展開は、この2010年が
「元年である」と言えるであろう、それ以前は、良い意味でも
悪い意味でも、従来のデジタル一眼の常識の枠内でしか
動けなかったようにも思える。そして、それでは後発メーカー
は、どうしてもビジネス的に厳しい、自ら新しい市場を創造
していかないと現代のビジネスシーンでは生き残れない訳だ。
さて、SONYの独自マウントによるミラーレス市場への参入を
見て、これまでμ4/3の市場に懐疑的であった他社も
この後、続々とミラーレス機を発売する、が、それは、
「第二世代」の話であるので、続く記事で紹介するとしよう。

前置きが長くなったが、そんな時代背景の中で本機NEX-3の
発売である。
私が本機を購入したのは、実は2回目だ、
最初は2011年頃にNEX-3A(E16mm/f2.8レンズ付き)の赤を
中古購入、しばらく機嫌よく使っていたが、2012年頃に
エステ店舗の撮影中、誤って足湯の桶に水没させてしまった。
数日間自然乾燥させたが、カメラもレンズもアウトであった、
カメラは一応写真が撮れるまで復活したのだが背面モニターが
まったく写らない。EVFの無い本機では、これでは写真が撮れず
やむなく廃棄処分、すぐさまNEX-5の中古を購入したのだが、
専用AFレンズが無いとやっぱり不便だ、NEX-5をすぐに譲渡して
もう一度NEX-3Aセットの赤を買いなおした次第だ。
2012年頃の相場では、E16/2.8レンズ付きで19000円位と
かなり安価に入手できた。毎年のように新機種が出て型遅れ
となっていたのが幸いしたのであろう。まあミラーレス機の
中古市場の特徴(相場の下落が速い)とも言える。
その後、2014年頃に知人がNEXを買い、「レンズが無い」と
言うので、水没したE16/2.8を2年ぶりにNEX-3に装着した所、
なんと完全に動作するでは無いか! もしかすると本体がダメ
になっていたので、レンズまで動作しなかったのかも知れない。
カビなども無かったし、実質何も問題が無いが、
「水没レンズなので、いつ壊れてもおかしくないよ・・」
と言って、知人に無償で譲渡した。
後日「お礼に」ということで、高性能ヘッドホンを頂いたの
だが、こちらの分が良い話で、知人にはちょっと悪かったかも
しれない(まあでも、その知人はオーディオマニアで、
ヘッドホンは多数余っていた模様なので、五分五分か?)
ここでレンズの話をちょっとするが、NEX-3Aでのキットレンズ
16mm/f2.8はフルサイズ換算24mmの広角レンズだ、ビギナーが
ここまでの単焦点広角を使いこなすのは困難であろうが、
プレシジョン・デジタルズーム機能と組み合わせる事で、
24mm~最大240mm相当のデジタル・ズーム機として使える。

ただし、ミラーレス・マニアックス記事で何度か検証した
ように、画像処理タイプの(画素補完では無い)この機能は
拡大率が4倍程度までが実用範囲で、それ以上では画質劣化が
甚だしい。
なお、NEX-3と同じ2010年に発売されたPANASONIC DMC-GF2
でも、GF2CのKITではG14mm/f2.5の広角単焦点が付属して
いて、こちらも28mm相当の広角画角で初級者には使い難い
と思われるのだが、これもまたデジタルズーム機能により
NEX-3Aと同様なコンセプトだ。
何故、同じ時期に、同じような広角単焦点+デジタルズ-ムの
機種が出てくるのか?もしかして開発情報が漏れているのか?
はたまた、GR Digital(2005年~)やGXR+A12 28mm/f2.5
(2009年)では28mm相当広角+デジタルズームが既に搭載
されていたので、それからヒントを得たのか?とも当時は
考えていたのだが・・
後から思えば、恐らくだが当時のNEXやGF2では、
コントラストAFしか搭載しておらず、大口径レンズや
焦点距離の長いレンズ、マクロレンズ等の被写界深度が浅い
レンズではピント精度が出ない。だから、AFでもピントが
合いやすい16mmや14mmの(超)広角単焦点をキットレンズと
して、AFが合わないという問題点を少しでも回避しようと
していたのだろうと推察される。
(ちあみに、2009年のOLYMPUS E-P1+17mm/f2.8も同様)
その根拠として、E16/2.8もG14/2.5も保有しているのだが
これらは確かに初期のミラーレス機のコントラストAFでも
なんとかピントが合い、AF精度や速度が不足している印象は
無い、けど、前記事LUMIX DMC-GF1と、そのキットレンズの
G20mm/f1.7では、近接撮影になると殆どピントが合わない。

さらに、本記事で使用中のE30mm/f3.5Macroにしても、
近接領域の特定範囲で、殆どピントが合わない。これは
明らかにコントラストAFの精度不足であるのだが、特定範囲
という点については、本システムはオートマクロになっている
模様で、距離エンコーダーから近接撮影の情報が入ると、
AF距離ステップテーブルを近接用のものに差し替えて精度を
高めようとしている様子が見られる。だから、中途半端な撮影
距離で撮影すると、コントラストAFの原理的なピーク検出の他、
距離テーブルの対応においても、ビットの狭間において精度が
不足するのだと思われる。
まあ、テクニカルな要素はともかく、レンズによっては、
AFではピントが合い難いという点は事実だ。
後述するが、MFでの使用オンリーに割り切ってしまう、
という問題点の回避手法もある。
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それと、NEX-3とNEX-5を初めて見た時の印象だが、小型の
割りに、マウント径が異常に大きく、ボデイからはみ出して
見える位であった事に驚いた。
「何故こんなに大きなマウント径とするのだ?」と考え、
「もしかしたらフルサイズ化するのか?」とも思ったが、
その後数年間は、Eマウントは同社製の業務用ビデオカメラと
共通化する戦略を行った為(注:SONYは業務用ビデオカメラの
シェアが高かった、もっとも、その点も2010年頃より、
一眼レフを業務用動画撮影用途にする事が一般的になった)
「ビデオとの規格共通化の為だったのか」とも思っていた。
が、2013年にα7が出てきた際には「まさか本当にフルサイズ化
をやるとは思わなかった、良くあのマウントに入ったなあ・・」
と、ちょっと関心したが、考えてみれば最初からフルサイズ化
を意識していたのならば、それが入る大きさのマウント径で
設計していただろうから当たり前の話だ。
(この構造ではセンサー周辺のテレセントリック特性が不足
する為、全て高価なFE型レンズになってしまったのは、少々
困った話である、又、オールドレンズも周辺収差が厳しく、
ゴーストも非常に出やすいのがα7の欠点だ→いずれ紹介予定)

さて、NEX-3のスペック等だが、例によって、そのあたりを
書いていくときりが無い。普及機とは言え2010年以降の
カメラは極めて多機能であり、とても限られた文字数では
書き切れ無い。それに、そんな情報はWEBにでも何処にでも
載っているので、有益な一次情報では無く、ここで引用しても、
情報的付加価値が無い。
目だった長所と短所のみ、伝えていくことにしよう。
まず長所だが、一眼レフと同等のAPS-C型センサーと
さほど酷くはないAF性能、優秀なピーキング機能、
そこそこの高感度(ISO12800)と、まずまずの連写速度
(通常は秒2.3コマだが、速度優先連写で秒7コマとなる、
ただし連続撮影枚数が最大16枚と物足りない)等の基本性能で、
かつ、一眼レフとは比べ物にならない程、小型軽量化されて
いる(本体重量約239g、これは前記事第3回のLUMIX DMC-GF1
よりもさらに軽く、最軽量記録を更新した)
知人のカメラマニアの女性は、それまで使っていたデジタル
一眼レフをNEXの登場から全く使わなくなり、NEX-3/5/7の
3台と数本の純正Eレンズ、そしてマウントアダプターと他社
レンズのみで、たいていの撮影をこなすようになっていった。
まあ、性能が一眼と同等で、比較にならないほど小型軽量で
あれば、そういう選択肢になるのも十分にありだろう。
今更、重たい一眼レフを持っていく気にはなれない・・
なお、本機NEX-3のボディカラーであるが、本機の発売時には
ターゲットユーザー層がSONYにも見えていなかったのでは?と
思われる。赤、白、黒の若干のカラーバリエーションがあり、
まあこれらは男女どちらでも使える色味だ、
上位機NEX-5は黒と銀のみで男性が主力ターゲットであろう。
後日、本機NEX-3には、銀色とピンクが追加され、後継機の
NEX-3シリーズも同様だ。本機発売後に、女性を意識的に
ターゲットとしたカラーバリエーション戦略に変えていった
という事なのであろう。
まあともかく、LUMIX DMC-G1の発売時(2008年末)では、
赤や青のボディは軟弱だとか違和感があるとか保守的な層から
色々言われていたのが、僅か2年後には、PENTAXではおよそ
何でもありのオーダーカラーシステムを始め、SONYですら
この時点でカラーボディだ。後年では、もう色付きボディは
常識となり、誰も文句を言うことは無くなった。
しかしながらNEX-3(あるいはLUMIX DMC-G1)が女性向け
のカメラであるとは、それは限らないと思う。
それは、その時代までの一眼レフユーザーというのは、
「女子カメラ」とか、なんだかんだと言いながらも、やはり
男性がメインターゲットであった訳だ、ミラーレス本体の
記事で良く書く「市場創出」というのは、新規のユーザー層も
掘り起こさないと意味が無い。従来の一眼レフユーザーが
ミラーレス機ユーザーに変わっただけでは「同じパイ」を
取り合っているだけで市場が拡大しない。そこでミラーレス
陣営は新規市場創出に合わせ、女性という新たなターゲット層
を主力と据えたのであろう、まあ、それはある意味成功して
いたとは思う、やはり無骨で大きく重いデジタル一眼は、
女性には似合わない。
ちなみに、私の知人友人でも女性カメラマンは多数居るが
彼女達は、ずっと大きく重い一眼レフを使い続けていた。
だから、女性だから(例えば体力的とか手の大きさなどの
体格的な面で)一眼レフが使えない、という差異は無いのだ、
あくまで、慣れや意識の問題が大きいのであろう。
「一眼レフは男性が使うもので、女性は体力・体格的には、
使いこなせない」というユーザーや市場での思い込みが、
むしろ一眼レフの女性への普及を妨げていたのかも知れない。
まあでも、ミラーレス機で重量もサイズも大幅に小型化した
事で、女性のミラーレス機ユーザーが激増した事は確かだ。
カラーボディが流行し、それが一眼レフまで飛び火するのも
わかる。女性とて、ミラーレス機では物足りず、一眼レフを
欲しいと思う人は多いだろうからだ。
自分自身の狭い価値観だけで、カラーボディは軟弱だ、とか
なんやかんや言ってはならないと思う、それもまた思い込み
の一種であり、そうした意識が市場の発展を色々と妨げて
しまう事も多い。本記事の前半にも書いたように、デジタル化
の時代における各メーカーの体制の変動は、まさしく激震で
あったと思う。現代2010年代後半では、カメラ市場全体が
縮退してしまっていて、各メーカーもビジネス的に厳しい。
細かい事に色々と文句をつけるマニア層も、もし各メーカーが
カメラ事業から撤退してしまい、今までのように好きにカメラ
が入手できないようになったら困るのではなかろうか・・?

さて、と言いつつも、NEX-3の弱点を述べておくことは
公正な情報としては必要であろう。
弱点は、勿論いくつかある。
まずEVFが無い為、優秀なピーキング機能を用いたとしても
MFレンズによるボケ量、ボケ質まで意識した厳密なMF撮影は
厳しい点がある。
そして操作系だ、実は本機では、それまでのカメラには無い、
ダイナミック(動的に)にキーアサイン(ボタンの効能)が
変化する、という可変操作系の概念が存在している。
これは先進的な家電(TV等)で一部研究されていた手法であり、
悪い発想では無い。そして、UI(ユーザーインターフェース)
開発の専門部署があると言われているSONYならではの仕様だ。

しかし、その恩恵を受けられるのは純正レンズを使った場合
のみであり、アダプターでMFレンズを使うと、とたんにその
操作系は無駄が多く発生する使い難いものになってしまう。
ただ、これは弱点というより、確信犯である可能性も高く、
たとえば、(プレシジョン)デジタルズーム機能や、
(後年のNEXに搭載された)レンズ収差補正機能なども、
アダプター使用時には無効であり、つまりは自社製品のみに
特化し、他社製品を受け付けない仕様となっている訳だ。
こうした考え方はメーカーのビジネス優先的な方針においては
わからない訳では無いが、個人的には、あまり賛同できない。
SONY機やCANON機の記事では、毎回のように「排他的すぎる」
と苦言を呈しているので、まあこれ以上は書かないでおこう。
それから、後年のNEX-7では、さらに操作系が高度に複雑化
した、私はそれをとても高く評価しているのだが、残念ながら
一般ユーザー向けには難しすぎた模様であり、それより後、
NEXから名前を変えたαシリーズにおいては、より安易な操作系
にダウングレードされている。まあ「やりすぎた」のであろう。

なお、MFレンズでのマウントアダプター互換性は高いのだが、
ボディ形状が小さすぎる為、大型レンズや望遠レンズの装着は
実質的に無理で、小型の他社レンズしか使えない。
(これは純正レンズでも同様、大型レンズはアンバランスだ)
他の弱点だが、クリエィティブスタイルは地味であり、実用的
なエフェクトというレベルにはまだこの時点では達していない。
スイングパノラマは面白い機能だが、画像サイズが大きすぎ、
その変更もできない。
後、JPEG記録時における圧縮率設定にバグがあり、適正と
思われるファイルサイズの2倍ほど大きくなってしまう。
それから、外付けのフラッシュが使い難い。
まあ目に見える弱点はそれくらいか?概ね悪い性能では無いが、
MFレンズのアダプター母艦とするには厳しく、その目的には
EVF搭載機である後年のNEX-7(2012年)やα7(2013年)
が良いであろう。
ただ、とは言えNEX-3を「トイレンズ母艦」とするのは十分に
有りだ。

ここでレンズを交換し、HOLGA 25mm/f8を装着する。
(ミラーレス・マニアックス第3回、第38回記事参照)

以降はこのシステムで撮影した写真を掲載するが、
ともかく、むちゃくちゃ写りが悪いトイレンズだ、
まあ、だからこそ個性的なのであって、その酷い描写力を
どのように作画の面白さに転化させるかも、トイレンズの
楽しみ方の要素であると思う。

さて、このようなトイレンズを使った場合、小型軽量なNEX-3は
なかなかの機動力を発揮する。レンズ込みでも300g前後の
重さしかなく、他のカメラシステムと合わせて持ち出しても
さほど苦にならない。

本機は中古相場も安価であるからトイレンズとの価格バランス
も不自然では無い(レンズよりカメラの方を高くしずぎる
組み合わせは、持論ではルール違反となり、本ブログでは
推奨していない)
しかしながらNEX-3には内蔵手ブレ補正機能が搭載されて無く、
ISO AUTOでは200~1600までの範囲でしか変化しない為
(注:例のSONY機全般での、高感度ノイズに対する厳し目の
安全対策的仕様である)開放f値の暗いトイレンズを暗所で
用いる場合には、手ブレに注意するとともに、ISO感度を
手動で設定する必要があるので、中級者以上向けだ。
なお、外付けフラッシュは装着が面倒なので実質的には多分
使用しない事であろう、暗所でフラッシュに頼る事は出来ない。

なお、トイレンズの中でも、f値が極めて暗いピンホール
(KENKO PINHOKE 02で約f220~f250=一眼レフ装着時
自作のピンホールでf180~f250程度)は、
NEX-3/5での使用は、やや厳しい。
(注;ピンホール母艦にはPENTAX K-01が望ましい、
デジタル一眼第14回記事等参照)

後、エフェクトが搭載されていない事はトイレンズ母艦
として使うにはやや不満である。

最後にNEX-3の総合評価を行ってみよう。
評価項目は10項目である(第一回記事参照)
【基本・付加性能】★★★
【描写力・表現力】★★☆
【操作性・操作系】★★☆
【アダプター適性】★★
【マニアック度 】★★
【エンジョイ度 】★★★
【購入時コスパ 】★★★☆ (中古購入価格:12,000円)
【完成度(当時)】★★★
【仕様老朽化寿命】★★
【歴史的価値 】★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
----
【総合点(平均)】2.6点
SONYのミラーレス参入の初号機である為、残念ながらまだ
細かい点で詰めが甘く感じる。
ただ、基本性能に係わる部分の完成度は、さほど低いとは
思えないので、使い方次第では現代に至るまで、大きな問題も
感じずに使えてしまう。
2013年より展開されているフルサイズのα7シリーズが
依然人気が高い為、現在、それ以前のNEXシリーズは、
中古市場では極めて安価だ。
しかし、考えてみれば、センサーサイズがAPS-Cであれば
他社の一般的なデジタル一眼レフと同等だ、画素数も
ISO感度も低いという訳では無いし、連写も色々制約があるが
そこそこ速い。
他社一眼レフでは高級機に匹敵するスペックのカメラが
僅かに1万円以下の中古相場で買えてしまうのだ。
このコスパは最強クラスであろう、マニアックな使い方をせず、
ただ単に日常写真を撮るという目的であれば、何ら問題の無い
優れたカメラである。
また、トイレンズ母艦としての用途にも適しているカメラだ。

次回記事では、第二世代のミラーレス機を紹介する。