コストパフォーマンスに優れ、かつマニアックなレンズを
カテゴリー別に紹介するシリーズ記事。
今回第14回目は、AFマクロレンズを4本紹介する。
本記事での「マクロレンズ」の定義だが、銀塩(フルサイズ)
換算で「1/2倍以上の撮影倍率をレンズ単体で得られるもの」
とする(アタッチメントを使ったり、デジタル拡大機能を
使わなくてもレンズだけで近接・拡大撮影が出来るもの)
まずは、最初のシステム、
カメラは、PENTAX K-5
レンズは、TAMRON SP90mm/f2.8 Macro (72E)
(中古購入価格 20,000円)
ミラーレス・マニアックス第31回記事で紹介した、
1990年代のAF単焦点中望遠マクロレンズ。
同型のレンズをマウント違いで持っていて、
α用は、ミラーレス第63回記事で紹介している。
銀塩MF時代の1979年から40年近くも続く超ロングセラー
シリーズのマクロレンズの1本であり、カメラマニアで
いずれかの「タムロン90マクロ」を持って居ない人を
探す方が難しいかも知れない。
その歴史を述べていくと長くなるが、AFハージョンに
なってからだけでも、
52E(1990)→152E(1994)→72E(1996、本レンズ)→
172E(1999)→272E(2004)→F004(2013)→F017(2016)
のように何度もモデルチェンジが繰り返されている。
ちなみに、数字とアルファベットの組み合わせの型番は
TAMRONの定義するレンズ型式の番号であり、これは流通業界は
もとより、マニアの間でも、どのバージョンのレンズかを
明確化する為に、この型番で呼ぶ事も多い。
バージョンは多いが、ただ、近年のタイプは手ブレ補正や
超音波モーターが内蔵されて高価になってきているのが
ユーザーから見た課題だ。(付加価値をつけて、値段を高価に
して利益を得ない、開発費の回収ができず、次のレンズの
開発が出来ない、という理由もあるだろう)
で、私がPENTAXとα(A)の2マウントを用いているのは、
これらはボディ内手ブレ補正が効くから、というのも理由の
1つではあるが、そもそもマクロレンズの場合近接撮影では、
手ブレよりも被写体ブレの方が大きな問題となり、さらに言えば、
人間のブレは近接撮影においては被写体に対して前後(距離)
方向に発生する場合が多い。
こうした「距離」のブレは、現代の手ブレ補正機能では止める
事が出来ないので、要は手ブレ補正機能が入っていても殆ど
意味が無い。
超音波モーターもしかりであり、その機能はAFで使った際に
合焦速度や精度などを向上できる「可能性がある」ものだが、
そもそもマクロ撮影ではAFに頼る事は殆ど無い。
何故ならば、AF測距点は、いくらその点数が増えたとしても、
近接撮影で、ある1点にピントを合わせたい場合に測距点での
制約が出るのは好ましくなく、つまり画面内の何処にでも
ピントを合わせれる状態にしたいから、AFではなくMFを用いる。
そして、そもそも近接撮影における被写界深度は極薄であるから、
AF機構では精度が足りないのだ。
具体的には、本レンズの最短撮影距離29cmでの等倍撮影の場合、
絞り開放f2.8での被写界深度は、概算で約1.7mmしかない!
これだけ浅い被写界深度だと、優秀なAFシステムを用いても
(あるいはMFでも)まずピントは合わない。
こういった状況なので、私の場合約20年も前のバージョンの
90マクロから買い換えていないのだ。
あえて新しいものにリプレイスするのならば、レンズ後群の
テレセントリック特性を若干変更した272E型を狙う程度で
あろうか? そのマイナーチェンジは、従来はフィルム用に
光路が比較的拡散する特性であったのだが、デジタルの撮像
素子の場合、できるだけ垂直に光を進入させないとならない。
つまり、デジタルでは斜めから撮像素子に当たる光は効率良く
集光する事が出来ない為、レンズ後群からの光路を、
より垂直に近くする為の光学系の変更を行ったという事だ。
(注:272E型発表時にはそう書いてあったと記憶しているが、
後年になって「後玉に反射防止のコーテイングを施しただけ」
という話も出て来た模様だ)
でもまあ、特にそういった仕様変更に神経質になる必要は無い、
昔から、いつの時代でもタムロンの「90マクロ」は、高性能な
レンズとして評判が高かったのだ。
中古で買うならば1万円台から6万円台まで、前述した通りの
各世代におけるバージョンのレンズが予算に応じて、よりどり
みどりだ。
「どれが良いか?」なども野暮な質問だ、どれでも問題ない、
あくまでマウントと予算に応じて選べば良いだけの話だ。
だが、本レンズ(72E型)に関して言えば、多少のクセは理解
して使う必要はあるだろう。
72E型は、旧来の開放f2.5版(52BB等、ミラーレス第8回記事)
に比べて近接撮影での性能は圧倒的にアップした、
すなわち、MF版あるいはAF版でも52E等の開放f2.5版では
撮影倍率が1/2倍であったのが、72Eから等倍となったのだが
その代わり開放f値は僅かに暗くなりf2.8となった。
まあ開放f値に関しては僅かな差だ、最も大きい差異は、
等倍マクロ仕様となった際に、近接撮影で最良の性能(解像力
やボケ質)を発揮するようにレンズ特性が変化した事だ。
それ以前のf2.5版は、中距離の撮影でも優秀な描写力を発揮
する設計であり、TAMRON自身も「ポートレートマクロ」と
それを呼んでいた。
逆に言えば、新しいf2.8版では、中距離撮影での描写力は
旧f2.5版より劣ってしまう、という事だ。
具体的にはボケ質が若干汚くなる等がある。
全ての撮影距離で最高の性能を発揮するようにレンズを設計
するのは極めて困難なので、このように何処かを良くすれば、
逆に何らかの性能が犠牲になるのはやむを得ない。
この問題の回避については、ボケ質破綻の手法うんぬんよりも、
「きっちりと被写体を分けて」考える事が賢明であろう。
つまり、f2,8版は、できるだけ近接撮影専用のレンズにして
しまえばよい、それがレンズの長所を最大限に発揮できる方法
という事になると思う。
近年のF004/F017では、このような特性になっているかどうかは
不明だ、が、近年の60マクロ(G005、後述)の描写を見ていると、
過剰な程シャープネスが高い要素もある。
そうなってくると、もはや「撮影距離によりけり」ではなく
「被写体の状況、及び、どう撮りたいかによりけり」という
感じになってくるであろう。
どんなに優秀で、定評のあるレンズであっても「万能のレンズ」
は存在しない、だから複数のレンズがどうしても必要になる。
そこでの「複数」という意味は、90mmの焦点距離の(マクロ)
レンズは1本あれば良いという訳ではなく、同じ仕様(焦点距離
等)でも特性の異なる複数のレンズが被写体によっては必要に
なるという意味である。
つまり、仮に同一のシリーズであっても、新型を買えば旧型は
不要になる、という単純な話では無い場合も多々ありうる、
という事だ。
まあでも、TAMRON「90マクロ」は、どのバージョンであっても、
最低どれか1本は必携のレンズであろう。
余談だが、2000年代、「90マクロ」のバージョンアップが
約9年間も停滞した時期がある。これはAPS-C機を中心とした
初期デジタル一眼レフにおいては、銀塩時代での90mm相当の
本レンズは「焦点距離が長すぎる(画角が狭すぎる)」
という問題点が言われていたからであろう。
(だから、APS-C機専用の60mm/f2(G005)が発売された)
けど、実は近接撮影での場合の焦点距離には、あまり重要な
要素は無く、背景の取り込み範囲とか、そんなものだから、
「長すぎる」という評価は本来は適切ではないだろう。
なお、フルサイズ機が一般的になりつつある近年においては、
F004,F017と、またバージョンアップが再開されている。
でもまあ、焦点距離の事とか「コスパ」をうんぬん言う前に、
「必要度」は最高ランクのレンズである事は間違いない、
ともかく「90マクロ」を持っていないと始まらないのだ・・
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さて、次のシステム
カメラは、SONY α700
レンズは、SONY DT30mm/f2.8Macro SAM(SAL30M28)
(中古購入価格 10,000円)
ミラーレス・マニアックス補足編第6回記事で紹介した、
2009年発売のAF単焦点準広角(標準画角)マクロレンズ。
DT型番なので、APS-C機専用レンズである、
α700等で使用の際は、45mm相当の画角の等倍標準マクロ
となる。
SAM型番は、DCモーター使用という意味だ、
α700との組み合わせにおいては1点注意点があって、
本レンズはOKだが、一部のSAMレンズではDMF機能が上手く
動かない。
DMF=ダイレクトマニュアルフォーカスとは、AFでピントが
合うと、そこでAFのクラッチが切れて、何も設定を変えずに
そのままMFに移行できる仕組みだ。ミノルタ時代の銀塩一眼
のα-7等あたりから採用された機能で、コニミノ製の
αデジタル一眼を経て、SONY製のα・Aマウントの一部の
デジタル一眼にも採用された機能である。
このDMFは、いったんピントが合ってから、という制限こそ
あるものの、そこそこ便利な機能なのだが、SAMやSSMといった
レンズ内モーター搭載のレンズでは一応MF移行は可能だが
フォーカスエイドが効かなくなってしまう等の課題がある。
そういう事からか? 近年のSONY製α一眼(Aマウント)の
一部の機種にはDMFは採用されていない。
まあもっとも、ミラーレスの記事では、本レンズをMFで
使用していたので、そのあたりはあまり関係なかったし、
本記事でも前述したが、マクロレンズはMFで使うのが基本で
あるから、AFやらDMFやらにこだわらず最初からMFで使えば
良いだけの話だ。α700にはミノルタα-7,コニミノα-7D
から続く、伝統的で使いやすいAF/MF切り替えの操作系が
存在している。
しかし、本DT30/2.8の「MF操作性」は正直良く無い、
ピントリングは狭く、回転角度も小さくて、厳密なピント
合わせが苦しい、そして感触も良くなく、スカスカで動いて
しまいやすい事を意識してピントリングを回す必要がある。
SAMのようなモーターを内蔵させると、その速度とトルクを
稼ぐために、どうしても、こういう仕様にならざるを得ない、
まあ、AF重視の仕様だ。だが、勿論AFはそこまで万能では
無いし、マクロであればなおさらだ。
この製品コンセプトの「ちぐはぐさ」が、本DT30/2.8の
最大の問題点であろう。つまり、マクロレンズと言いながら
近接撮影においては、AFでもMFでも、どちらも全然使いやすく
ないわけである。
ただまあ、コスパという概念から見ると、このレンズは
ともかくコスパが良い。なにせ1万円程の中古価格で買えて
しまうのだ、これはもともと「エントリーレンズ」として
開発・発売されているからであって、定価自体が安価なのだ。
しかし、実は、もっと凄い高コスパマクロが存在している。
それは、ミノルタ時代のAF50mm/f2.8Macroである、
1980年代より現代に至るまで、初期型、NEW型、D型、SONY型
と世代を超えたロングセラーだが、その間、レンズ構成には
殆ど変化が無い、最初から完成されたレンズなのだ。
ミラーレス・マニアックスでは第38回記事で紹介後、
名玉編第4回で、総合第4位となっている逸品だ。
現代における中古相場は、初期型であれば1万円弱くらい
つまり、本DT30/2.8と、ほぼ同じ値段だ。
ボケ質などを含めた描写力全般もAF50/2.8が優位であり、
そのコスパは圧倒的、必要性も高く、それ故に、名玉編で
第4位となっている訳だ。
まあでも、そのレンズは、名玉編にノミネートされた為
本ハイコスパシリーズでは「名玉編との重複紹介は避ける」
という方針があった為、紹介を見送った次第である。
それ以外、という視点においても、AFのマクロは激戦区だ、
50mmだけを見ても、PENTAXのFA50/2.8やSIGMAのAF50/2.8
は、どちらもミノルタAF50/2.8に追従する銘レンズだし
ミノルタでもAF50/3.5という弟分も存在する。
それらは、1万円台で購入できるハイコスパレンズな訳だ。
ただ、いずれも50mmという焦点距離である、
本レンズDT30/2.8の最大の特徴は、30mmという焦点距離で
あろう。まあ、とは言うものの、TOKINA,PENTAX,NIKON等で
APS-C機専用の35~40mmの焦点距離のマクロは存在して
いる(後日紹介予定)だからDT30/2.8が唯一という訳では
無いのだが、それらのレンズよりも本レンズの方が遥かに
安価な価格で入手可能だ。
弱点だが、ピント合わせがAF/MFともに問題有り、という点と、
作りの安っぽさだ、そして、描写力は最上級とは言えないが、
近接撮影をする上では十分であろう。
なお、SONYの「エントリーレンズ」シリーズには、
他に本ハイコスパ第1回記事で紹介の、DT50mm/f1.8
第10回記事のDT35mm/f1.8 、第13回記事の85mm/f2.8 SAM
がある、いずれも高コストパーフォマンスなレンズが故に、
本シリーズ記事で紹介している次第である。
ちなみに、SONYではこれらのレンズを「はじめてレンズ」と
呼んでいる、まあコンセプトからすれば、正しいネーミング
だとは思うが、課題として、WEB等での各レンズのキャッチ
コピー(説明文)には中上級者向けの専門用語がズラリと並び、
初級者には、それらの意味がわかりにくいかも知れない。
(注:初級者の持つ「写真関連専門用語へのアレルギー」を
消す為に、わざとそうしている可能性もある。つまり、これは
「教育」の一環という観点なのかも知れない)
また、業界の一部では、「エントリーレンズ」の事を
「蒔き餌レンズ」と呼ぶ事もあるが、レンズを「餌」扱いでは、
売る側にも買う側にも失礼な話で、この呼び方は賛同できない。
それと、SONY以外でも現在は殆どのメーカーで、このような
初級者に向けて、レンズ交換の楽しさを味わってもらう為の
安価で比較的高性能な(すなわちコスパが良い)レンズ群が
発売されている、これらを総称して本ブログでは
「エントリーレンズ」(入門用レンズという意味)と
呼んでいる。
なお、何故こういうレンズが市場戦略上必要か?といえば、
他の記事でも何度か書いたが、一眼レフやミラーレス機を
購入した初級ユーザー層の大半が交換レンズを買わないからだ。
メーカー側が、多数のレンズ群を開発し、生産し、販売する
いわゆる「ラインナップ」を継続する意味では、交換レンズが
売れないと、市場そのものが成り立たない。
もし、交換レンズ群が売れない、儲からない、とかなって、
それらが市場から消えてしまうと、多くのカメラユーザーが
非常に困るであろう。そういう意味では、できるだけ多くの
初級中級ユーザーに交換レンズを沢山買ってもらいたいのは、
メーカーや流通側だけの問題ではなく、ユーザーの1人として、
私も、その市場の活性化を希望する次第だ。
さもないと、また、2000年代にあったように、いくつもの
カメラ(写真)メーカーが、その事業から撤退してしまう
恐れもある。
それと、エントリーレンズは「コスパ」が良いのは明白だ、
そういう意味では、これらは「初心者用レンズ」と決め付ける
必要はなく、中上級者においても、コスパが要求される場合に
それを使うのも良いと思う。中上級者であれば、どのような
シーンで、こうしたレンズ群が存在価値を発揮できるか?は、
理解、あるいはニーズに応じた応用が可能だと思う。
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さて、次のシステム
カメラは、NIKON D300
レンズは、SIGMA Macro 105mm/f2.8 EX DG
(中古購入価格 25,000円)
ミラーレス・マニアックス第63回記事で紹介した、
2000年代のAF単焦点中望遠マクロレンズ。
本レンズは、ニコンF(AiAF)マウント版だが、
同型のレンズを異なるマウント(EF)でも所有している、
EOS用版は、ミラーレス第41回記事でも紹介しているが、
そちらはAF故障品で、5,000円という購入価格であった。
すなわち、最初に本レンズを購入したのだが、そこそこ
性能が良かったものの、発売から日が浅かった為に、
中古25,000円は若干高かった、と思っていた。
後に5,000円の半故障品を買い足した。合計取得価格は
30,000円となり、1本あたりの平均価格が15,000円だ。
これは「株」で言うところの「ナンピン買い」である。
私は日常的なスーパーでの買い物などでも、この手法を
使う事がよくある。例えば「即席やきそば」の5個パックを
328円で購入したが、翌日見ると同じ物が特売で268円まで
値段が下がっていたとする、ここで一般的な感覚であれば
「ああ、しまった、昨日、高い時に買っちゃったなあ・・」
と後悔しつつ諦めるのであろうが、私の場合は、平然と
その安くなったものを追加購入する。結果、平均購入単価が、
(328+268)÷2= 298円 となって、まあそれであれば
通常相場よりも安価なので、それで納得する訳だ。
生モノとか、消費期限が短い食品では使えない手法だが
即席やきそば等であれば、しばらく食べずにおいても問題は
無いので、沢山在庫しても大丈夫だ。
また、同じスーパーの食品でなくても、たとえばどこかの
店で何か商品を買って、その帰り道、別の店で同じ商品が
安く売っているのを見た時も、同じく「ナンピン買い」をする。
よくあるのが、USBメモリーとかSDカードとかで、安売りの
店を見つけたケースである。ある店で700円で買ったが、別の
店で500円で売っていたら、黙って追加購入、これで平均価格
は600円となり、まあ許せるレベルとなる訳だ。
さらに言えば、安売りの所で4個も5個も同じ商品を買えば
平均単価はどんどん下がり、最初に高く買ったミスは帳消しだ。
余談が長くなったが、本SIGMA105/2.8であるが、マクロ
レンズとしては一級品だ、TAMRONの90マクロに迫る高性能
マクロだと思う。
1990年代、元々SIGMAはTAMRONと同じ90mmマクロを販売
していたのだが、このレンズ、銀塩時代に購入して使ったが、
TAMRONと比較して勝負にならない性能で、早々に処分して
しまっていたのだ。SIGMAもTAMRONと同じ土俵で勝負する
のは得策では無い、と見たのか? 90mmマクロの生産をやめて
105mmと70mmのマクロに分散したのであろう。
TAMRON「90マクロ」と同様に、弱点は殆ど無い、
TAMRONに比べてあまり著名では無いSIGMAマクロであるが、
隠れた逸品であろう。
私は、NIKON,CANON,PENTAX,SONYの主要AF4マウントで、
SIGMA105、TAMRON90、それぞれ2本づつの中望遠マクロを
使用している。
なお、主要AFマウントの各純正100mm級マクロは、どれも
高価である、手ブレ補正や超音波モーターなどが加わって
「高付加価値化」しているのもその理由だ。
TAMRONとSIGMAのマクロも、2010年代以降のモデルでは、
手ブレ補正と超音波モーターが入って高価になってしまったが、
2000年代の旧型であれば、それらの、ある意味「不要な」機能
は入っておらず、結果的に価格も安価であり、中古相場と
しては、旧製品故に、さらに下落、いずれも安いものならば、
1万円台で購入可能であろう。
この価格帯であれば「コスパ」は非常に良いと見なせる。
TAMRON 90マクロに引き続き、SIGMA 105マクロも必携の
レンズであると言える。ちなみに、どちらが良いとか悪いとか
の比較はあまり意味が無い、どちらも十分な性能があるし
どちらも十分に安い。どっちを買っても不満は無いだろうし、
もし、”仔細な差異が気になる”という神経質な向きには
「安いので両方買ってしまえば?」という選択もありうる、
両方持ってしまえば、両者の差なんて、所有満足度の心理上
では、どうでもよくなる訳だ。良く特性の差を見極めて、
状況に応じて使い分ければよい。
ちなみに、それこそ「ナンピン買い」をしても良いかも
知れない。
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次は、今回ラストのシステム
カメラは、SONY α65
レンズは、TAMRON SP AF60mm/f2 DiⅡ LD IF Macro 1:1
(G005) (中古購入価格 19,800円)
ミラーレス・マニアックス第75回記事で紹介した、
2009年発売のAF単焦点標準(中望遠画角)大口径マクロ
レンズ。
本レンズは、APS-C機専用である。
開放f2の等倍マクロレンズは非常に珍しい。
オリンパスのMF(OM)や、AF(フォーサーズ)で数本、
そしてコシナ・ツァイスで数機種だけ開放f2のマクロが
存在したが、いずれも1/2倍であった。
近年の海外製の特殊レンズを除き、恐らくf2級等倍マクロは
国産では本レンズのみであろう。
本レンズの描写力は極めて高い、本レンズを使った後で
他のマクロを見比べと顕著である。まあ、本レンズは
比較的新しい設計である事も理由であろう。
しかしながら、シャープネスが強すぎるのも逆に気になる、
2010年代の超高画素化あるいはローパスレス化していく
デジタル一眼レフの進化を見越しての設計と思われるのだが、
撮影機材や被写体によっては「パキパキ」に見えてしまう点は、
良し悪しあるだろう。
もっとも「パキパキ」と言っても、いくつかパターンが
あると思う、例えば、SONY E30mm/f3.5マクロ
(ミラーレス第72回、補足編第2回)では、輪郭強調した
ような不自然な固さがあって、それも「パキパキ」と呼んで
いたのだが、本レンズの場合、「カリカリ」と言う方が
より近いイメージかもしれない、これは輪郭に限らず、
被写体全般で、シャープネスが強すぎるように感じるからだ。
で、このような描写特性は、花などの自然物(ネイチャー系)
や人物撮影などには、あまり向かないのではなかろうか?
ただ、このあたりは、カメラ本体の仕様・設定や、PCによる
レタッチでも、なんとでもなるとも言える。
他の弱点だが、MF時のピントリングの感触が良く無い事だ、
これは内蔵モーターでのフルタイムMF機能を実現している
事で、MF時は、そのモーター駆動機構を引き連れて廻す
必要がある為、ヘリコイドのトルク感に影響が出るのであろう。
なお、この機構の為、αの各機種によるDMF機能(前述)は
使用できない。よって、今回は、最初からDMFを持たない
α65を使用している次第だ。
なお、α65は、EVF型ファインダーを持ち、一眼レフと
ミラーレスのハイブリッド機のような仕様のカメラなので
MF時にピーキングや画面拡大機能を用いる事ができる。
これは、フルタイムMFよりも、むしろ非常に役に立つ仕様
である為、思えば、本レンズをα(A)マウントで購入する
必要はなかったかも知れない、つまり、光学ファインダーしか
無い、NIKON機や、EOS用として買った方が、カメラ本体の
弱点を消しやすい、という事に繋がる。
つまり、α65はMF性能が高いので、MF性能が低いレンズと
組み合わせた方が良い訳だ、本レンズは、MF性能を高めよう
として結果的に別の弱点が発生してしまったレンズだから、
α65との組み合わせはベスト・ソリューションでは無い。
まあでも、MFの操作感触については重欠点とは言い切れず、
被写体を選ぶとは言え、総合的には、すばらしく性能の良い
レンズだ、おまけに価格(中古相場)も安い。
これはコスパ的には得点の高いレンズであるという事になる。
ちなみに、ミラーレスマニアックス記事では、本レンズは
実は名玉編の第16位にノミネートされたのだが、同順位には
PENTAX FA50/2.8マクロが入賞し、本レンズは、それよりも
一般的な(つまり著名な)レンズであるので、あえて紹介を
見送った次第であった。
本レンズSP60mm/f2(G005)は、文句無く「買い」の高コスパな
逸品である。
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さて、今回の記事は、このあたりまでとする。
次回は、MFマクロレンズを紹介していく事にする。