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アスリートこそが社会課題解決のリーダーとして活躍する存在に。「HEROs AWARD 2024」を受賞した、5組の活動とは?
posted2024/12/27 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Shigeki Yamamoto
トップアスリートたちが競技の枠を超え、持ち前の行動力と発想力、スポーツの力で社会課題に挑む「HEROs」。日本財団がアスリートとともに社会課題解決の輪を広げていくことを目的とし、優れた社会貢献活動のロールモデルたちを表彰する「HEROs AWARD 2024」の授賞式が12月16日に都内で開催され、8回目の今回はこれまでの最多となる453件の応募の中からプロボクシングの那須川天心さん、プロ野球の筒香嘉智さん、陸上競技長距離の福士加代子さん、日本ラグビーフットボール選手会、オットーボック・ジャパン株式会社が受賞した。
多くのトップアスリートが正装で集結
会場には社会貢献への思いを抱く多くのトップアスリートたちが華やかなイブニングドレスやタキシードに身を包んで続々と集結。授賞式が始まる前から互いに名刺交換をしてそれぞれの取り組みについて語り合うなど、熱気あふれる様子が会場に広がっていた。アワードを提唱した中田英寿さんやプロジェクトのアンバサダーを務める五郎丸歩さんも姿を現す中、授賞式がスタートした。
最初に登壇したのは、「よわいはつよいプロジェクト」を手がける日本ラグビーフットボール選手会だ。このプロジェクトは、強いメンタルを持っていると思われがちなアスリートが率先して弱さを開示することで、誰もが弱さを抱えていることや、それを開示することが本当の強さにつながることを伝える取り組み。自身の心の内側を日頃から他者へ開示して理解・尊重し合うことで日常的なメンタルケアが叶う社会づくりを目指している。発起人のひとりである川村慎さん(横浜キヤノンイーグルス)は社会人になってから壁に突き当たり、スランプを抜け出せずにいたが、あるとき偶然に人に悩みを聞いてもらったのを境にパフォーマンスが伸びるという経験をした。受賞の挨拶では「僕らラグビー選手に限らず、見た目が強そうとか、修羅場をくぐっていそうなアスリートがメンタルヘルスに関してオープンな場所で話をすることは、社会課題であるメンタルヘルス面で大きな影響を与えるのではないかと思っている」とスピーチした。
また、プレゼンターとして登壇した国際オリンピック委員会(IOC)の委員であるフェンシングの太田雄貴さんが「IOCもメンタルヘルスをアスリートの最重要課題としてとらえている。日本はこの分野では世界に劣っているが、逆にのびしろだと思う。私もこのプロジェクトを応援したい」と述べていたのも印象的だった。
続いて登壇したのは「下肢切断者向けランニングクリニック&パラリンピック修理サービス」を手がけるオットーボック・ジャパン株式会社の代表取締役である深谷香奈さんだ。同社が行なうランニングクリニックは下肢切断者に走る喜びを感じてもらうことを目的とした教室で、パラリンピックのメダリストが指導者となって2015年からの10年間でイベント参加者が通算100人を突破した。このイベントへの参加をきっかけに本格的に陸上競技を始めてパリパラリンピックに出場した選手もいる。