天職とは?天職の条件を見つけ、天職に就くための方法をキャリアカウンセラーが解説

今の仕事にやりがいを持てず、「天職を探してイキイキ働きたい」と考える人もいると思います。しかし、そもそも「天職」とは一体何なのか、どんな仕事を指すのか、つかめていない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、天職とは何か、そして自分にとっての天職の条件やその見つけ方、天職に就くための方法などを、キャリアカウンセラーの山田英子さんが解説します。

「天職」について考えるビジネスパーソンのイメージカット
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天職とはそもそも何を指す?適職との違いは?

まずは「天職」とはどのような仕事のことを指すのか、詳しく解説します。

天職とは?天職に条件はある?

「天職」とは、文字通り「天から与えられた仕事」のこと。この仕事をするために生まれてきたと思えるほど、やりがい、充実感、多幸感を得られる仕事のことを指します。
それだけのやりがい、喜びを感じられるということは、自分の生まれ持った性質や強み、持ち味などに合っているということ。そのため、人によって天職の条件は異なります。

天職と適職との違い

天職と似たような言葉に「適職」がありますが、意味合いは大きく異なります。
「適職」とは、自分の能力や持ち味に適していて、主に成果が出せている仕事のことを指します。一方の天職は成果を出せているかどうかよりも「自分に合っていると感じられるかどうか」がポイントとなります。

天職と適職の一番の違いは、適職は「自分に適した仕事だからと言って、本当に自分のやりたいこととは限らない」という現象が起こるのに対し、天職は「本当に自分がやりたいことができている」という充実感を必ず得ることができる、という点。つまり、天職は自分に合っていると実感でき、やりがいも感じられる仕事、適職は向いている仕事、と捉えることができます。

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今の仕事は天職?判断する5つのポイント

天職は「自分に合っている仕事」ですが、「合っている」の定義はさまざまです。そのためゼロから「自分の天職」を見つけるのは難易度が高いもの。まず今携わっている仕事をベースに考えていきましょう。

最初に、今の仕事について、次の2つに当てはまるかどうか考えてみてください。

  • 人より得意で、自信を持って臨めているか?
  • 強みや持ち味、個性を活かせているか?

もし、この2つを満たしているのであれば、今の仕事は経験やスキルに合っていて力を発揮しやすく、少なくとも「適職」の条件は備えていると考えられます。

さらに、次の3つについても考えてみましょう。

  • 仕事が楽しいと感じ、熱中できているか?
  • この仕事が好きで、強く「やってみたい」と思っているか?
  • やっていることに意味や価値を感じられているか?

この3つを満たしているのであれば、今の仕事は「天職」もしくは「天職に近い仕事」であると判断できるでしょう。

ただ、あなたが今「天職を見つけたい」と考えているのであれば、上記の5つの条件をクリアできている可能性は低いと思われます。

そこで、「条件が満たされていないことに最も不満や不安を感じたのはどの項目か」を考えてみましょう。その項目が、あなたにとっての天職を探す上での重要なキーワードになります。

例えば、もし「やっていることに意味や価値を感じられていない」ことに最も不満を感じ、失望感を覚えていると気づいたのであれば、「意味や価値を感じられる仕事」が天職の条件を見つけるヒントといえるでしょう。

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自分だけの「天職の条件」を見つける5つの方法

天職は「天から与えられた」と思えるぐらいの仕事であり、一朝一夕には出会えないものです。多くの場合は、仕事でさまざまな経験を重ねていく中で、いつか「これが自分の天職だ」と実感できる瞬間が訪れるものだと思います。

ただ、今から天職に出会うための準備をすることは可能です。準備をしておけば、さまざまな仕事をしていく中で「もしかしてこれは天職に近いのでは?」など気づきやすくなると思います。

次のような5つの方法で自分と向き合ったり、情報収集をしてみたりすると、「自分にとっての天職の条件」を見つけることができるでしょう。

自己分析を行い強みや持ち味から考える

適職かどうかを判断する「強みや持ち味、個性を活かせているか」は、天職のベースにもなるものです。
自己分析を行い、自分の強みや持ち味は何か、改めて洗い出してみるといいでしょう。

就活時の自己分析のように、これまでを振り返りながらモチベーショングラフや自分史を作成して洗い出す方法もありますが、自己分析診断ツールを活用するのも一つの方法でしょう。

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これまでの仕事で熱中できたものから考える

社会人になってからの経験を振り返り、熱中できた仕事、達成感を得られた仕事を書き出して「なぜ熱中できたのか」「達成感が得られたのか」と深掘りしてみましょう。深掘りする過程で、自分が熱中できる条件が見えてきます。それが天職を見つける上での重要なヒントになるでしょう。

なかなかピンと来ない、思いつかない…という人は、先輩や同僚、上司など、自分の仕事ぶりを良く知る人に聞いてみるのも有効です。「こんな時に楽しそうだった」「熱中し没頭できていると感じた」など、思わぬ自分に気づけるかもしれません。

そもそも、社会人になって何かに熱中できたような経験がないという場合は、学生時代に遡って、どんなことに夢中になってきたのか考えてみるのもいいと思います。仕事に捉われない自身のコアな「好きなこと」が見えてくるでしょう。

自分には合わないと感じた仕事から考える

やりがいを持って熱中できたこと、達成感を覚えたことがどうしても洗い出せない場合は、逆の発想で「合わないと感じた仕事」「嫌だった仕事」から洗い出すのも一つの方法です。

これまで携わった仕事を振り返り、能力的・精神的にきつかった仕事、意義が見出せなかった仕事などを書き出してみましょう。そして「それらの逆」を考えてみることで、自分の仕事に対する価値観が明確になるでしょう。

たとえばですが、「知らない企業にいきなり飛び込み営業するのがつらかった」のであれば、「一つひとつの顧客とじっくり信頼関係が築ける仕事が好きなのかもしれない」などの気付きがあるかもしれません。

人脈を広げて得た仕事やキャリアに関する情報から考える

若手ビジネスパーソンの場合、まだ職務経歴も浅いうえ、社外の知り合いもそう多くはないと思われます。目の前の仕事だけに向き合っていると、なかなか視野が広がらず、天職のヒントにも出会いづらいでしょう。

手っ取り早いのは、仕事のセミナーや、同業種・異業種交流会などに参加してみること。打ち込んでいる趣味があれば、それに関するコミュニティに参加するのもいいでしょう。多くの人と交流を持つ中で、これからの人生についてのヒントをもらえたり、イキイキと毎日を過ごしている人から刺激を受けたりできる可能性があります。

「こういう仕事が天職なのかも」とすでにあたりが付いている人は、その「あたり」に沿ったコミュニティに参加して、実際にその仕事に就いている人からリアルな声を収集することをお勧めします。詳しい仕事内容や仕事のやりがいなどの情報が得られ、自分のイメージは果たして合っているのかどうか、検証することができるでしょう。

10年後、20年後のなりたい姿から考える

仕事を含めた人生全体という視点で、「10年後、20年後はこうありたい」という未来設計図を描いてみるのもいいでしょう。

変化の激しい今の時代、未来が想像しづらいという人もいるかもしれませんが、「何歳ぐらいまでに○○をしていたい」というざっくりとしたもので構いません。「自分が叶えたい未来」は当然ながら好きでワクワクできる未来であり、それが自分にとっての天職のヒントである可能性があります。

そして、例えざっくりとしたものであっても、目標を立てることで「この将来像を実現するために、今何をすればいいのか」が見えてきます。その仕事に邁進することで、天職の条件の一つである「やっていることに意味や価値を感じられる」機会も増えると思われます。

 

「天職」イメージカット
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今の仕事を見つめ直し天職に就く方法

前述のような方法で天職に出会う準備を行い、自分にとっての天職の条件が見えてきたら、実際に天職に就くために行動してみましょう。

まず試してほしいのは「今の仕事を見つめ直す」こと。その上で、次の項目のうちどの状態に近いのか、考えてみてください。その状態別に、天職に就くためにどのように行動すればいいのか、説明していきましょう。

  1. 今の仕事に大きな不満はないが、物足りなさを感じる
  2. 責任や裁量のある仕事が少なく、ルーティンワーク中心で面白みがない
  3. 仕事はこなしているものの、やりがいや充実感、多幸感を覚えることがない

(1)今の仕事に大きな不満がないならば「今の仕事を天職に変える努力をしてみる」

「今の仕事に大きな不満があるわけではなく、まあまあ満足している」のであれば、適職の条件はある程度叶えられている状態でしょう。したがって、「今の仕事を天職に変える」という考えを持ってみるのもいいと思います。

この項目に当てはまる人は、おそらく「大きな不満はないけれど、何となく物足りなさもある」という状態かと思われます。その「物足りなさ」が何であるか明確化して、それを埋めるべく行動してみましょう。

例えば、「日々の仕事はうまくこなせるようになり成果も上げられているけれど、責任ある仕事を任せてもらえない」ことが物足りないのであれば、責任ある仕事を任されている人を観察するなどして、自分に足りない部分を洗い出し、それを埋める努力をしてみましょう。

もし実績が足りないのであれば、高い実績を上げるべく努力する、リーダー経験が必要なのであれば、積極的に後輩に教えたりフォローしたりする、などが考えられます。

(2)ルーティンが多く面白みがないならば「自分に足りないスキルを洗い出してみる」

日々の仕事に面白みを感じないのであれば、前述の方法で洗い出した「天職の条件」はどの部署、どの仕事で叶えられそうなのか考えてみましょう。

そして、異動願いを出したりジョブチャレンジ制度に手を挙げたりするなど、社内の人事制度を活用して、「天職の条件に合いそうな仕事」を経験してみましょう。実際にやってみることで、本当に自分にとっての天職なのか確認することができます。もし「ちょっと違った」と思ったら、それをもとに天職の条件をブラッシュアップするといいでしょう。

とはいえ、すぐには異動が叶わないケースが大半だと思います。その仕事に就くために今の自分には足りないスキルや経験を洗い出し、計画を立てて磨く努力をしてみましょう。

(3)やりがいや充実感がないならば「天職の条件に合う仕事を探してみる」

日々の仕事にやりがいや充実感を感じられず、「今の仕事では得られないような、大きなやりがい・充実感・多幸感を抱けるような仕事がしたい」と思っている場合は、前述の方法で洗い出した「天職の条件」をキーワードに、実際にそれに合った仕事を探してみましょう。

例えば、次のような方法が考えられます。

  • 「天職に当てはまるキーワード」をもとに転職情報サイトで求人を検索するなどして、転職先を探す。
  • 転職エージェントなど専門家に相談して、天職の条件を叶える仕事に就くにはどうすればいいか、客観的な視点でアドバイスをもらう
  • 仕事などを通じて培った人脈を活用して、「こんな仕事をやりたいと思っている」とアピールしておく

なお、自分にとっての天職の条件に合った仕事が希少であり、就くチャンスが少ないケースもあると思います。その場合は、独立・起業するなどして「自分で仕事を作る」という方法も考えられます。難易度は高いですが、一つの選択肢として覚えておきましょう。

天職を見つける上での注意点

自分にとっての天職を探す上では、いくつかの注意点があります。以下のことに留意しながら行動するといいでしょう。

「天職は特別なもの」と思いすぎない

天職というと、すごいもの、スペシャルなものと捉えがちですが、天職は身近にある可能性もあります。前述した通り、はじめはそう思っていなくても、さまざまな経験を重ねていく中で「今の仕事が自分の天職だ!」と実感できる瞬間が訪れる場合も少なくないのです。
中には、定年などを機にこれまでの仕事人生を振り返り、「自分の仕事は天職だったんだなあ」と初めて実感する人もいます。

つまり、平凡に思えるような仕事であっても、自分に合っていて力を発揮できているのであれば、それが天職ということもできます。
天職を見つける上で、視野を広げることは重要ですが、遠くばかりを見るのではなく、今の仕事を始め身近なところにもぜひ目を向けて、真剣に向き合ってみてください。

天職と言っても楽しいことばかりではない

今の仕事に対して強い不満がある人の中には、「どこかに自分にピッタリ合った天職があるはずだ!その仕事に就けたら人生バラ色だ!」などと過剰に憧れや期待を抱いているケースがあります。

しかし、どんなに自分に合っている仕事でも、必ずつらいこと、しんどいことがあります。天職だと思えた仕事に就いた後にギャップを感じないためにも、天職にだって苦労はつきまとうことを認識し、くれぐれも、天職を「現職からの逃げ」に使わないようにしましょう。

収入が伴わないこともある

自分にとって天職と思える仕事であっても、それが収入に結びつかない可能性はあります。一定の収入を得られないと、生活が困窮してしまうリスクもあります。

ただ、もし「収入が伴わなくても、どうしてもやりたい!」と思える仕事に出会ったのであれば、挑戦する価値はあります。例えば、ある程度の資金が貯まったら実現するなど、目標を決めて先延ばしにするのは一つの方法でしょう。あるいは、今の会社に副業や兼業を認める制度があるならば、まずは副業として小さくスタートしてみるという手もあります。

自分から能動的に行動することが重要

天職だと思える仕事をこれから探したいと思っている人も、すでに「これが天職だ」と思える仕事を特定できている人も、自分から能動的に行動することが大切です。ただ待っているだけでは、チャンスは訪れません。

例えば、在職中の会社で自分を磨き、パフォーマンスを上げる努力をしたり、人脈のネットワークづくりをしたり、「私はこれがやりたい」と情報発信したりすることが大切。行動すれば天職に関する情報も自然と入ってくるようになり、天職との距離も近づくでしょう。

天職を実感できるタイミングは人それぞれ。無理にすぐ見つけようとしなくてもいい

ここまで天職の見つけ方についてご紹介してきました。自分にとっての天職の条件を洗い出し、それを叶えるために行動し努力する過程で、きっとやりがいや充実感を感じられる機会も増えると思います。

ただ、個人的には「天職は無理に見つけようとしなくてもいい」と思っています。繰り返しになりますが、仕事でさまざまな経験を重ねていく中で「これが自分の天職だ!」と実感できる瞬間が訪れる場合もあるからです。

キャリアカウンセラーの仕事を通じて、さまざまなビジネスパーソンとコミュニケーションを取ってきましたが、イキイキと働いている、今の仕事が好きだと伝わってくるビジネスパーソンに共通しているのは、「現実を前向きに受け入れる柔軟性を持っていること」です。

会社勤めの場合、希望している部署になかなか配属されなかったり、自分の意に沿わない異動などで急に仕事内容が変わったりすることもあると思います。しかし、イキイキ働いている人は、望まない現状や予期せぬ変化などに抗うのではなく、まずはそれを受け入れ、与えられた仕事や環境の中で、ベストパフォーマンスを出すための努力をしています。

このような行動を重ねていく中で、「全く予期していなかった仕事が自分にとって天職だと実感できるようになった」というケースは大いに考えられます。もしくは、さまざまな経験を積み、スキルを身につけることによって、責任ある仕事に就けるチャンスが得られたり、つまらないと思っていた今の仕事で成果をどんどん挙げられるようになったりして、俄然楽しくなる…といったこともあり得ます。

今の仕事にやりがいを持てない、面白くないと思っていると、今の仕事から逃げたくなったり、適当にやり過ごそうと考えたりしがちだと思いますが、そう思っている人こそ、まずは今の仕事に真剣に向き合ってみましょう。初めはしんどいなと感じていても、真摯に取り組み続けることでいつか自分にとって納得の答えが見つかる時がやってくるはずです。

キャリアカウンセラー山田英子さんキャリアカウンセラー 山田英子さん

早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒業。 大手ファーストフードサービス企業、人材サービス企業を経て、IT系コンサルティングファームに入社。採用部門のリーダーとして新卒・中途採用業務全般に加え、就職セミナーでの講演等の広報活動や人事制度設計等に携わる。2005年5月に個人事業主として独立し、大学生の就職活動支援、社会人の転職支援などを中心に活動中。
【保有資格】国家資格キャリアコンサルタント。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー

EDIT&WRITING:伊藤理子

 

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