学生の進路において大きな岐路のひとつである「文理選択」。最近では、STEM*分野と呼ばれる理系や技術系のフィールドで活躍する女性も、どんどん増えてきています。東京都では、さらなる女性活躍を推進するため、女子中高生向けオフィスツアーを開催。学生がSTEM分野で働く方々や現場に触れることで、自分がやりたいことや関心のあることを見つける機会を提供します。 *Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字をとった言葉


AIなどの先端技術を駆使して経営や社会の課題を解決する、フューチャーを訪問!
フューチャー株式会社は「お客様の未来価値を最大化し、自らも新たな価値を創造すること」をミッションとし、最先端技術を駆使してITコンサルティング事業をベースにさまざまな事業を展開しています。今回のツアーでは、グループ会社の社員の方も参加し、女子中高生たちを笑顔で迎えてくれました。
グループ人材戦略室の木下尚美さんによる業務内容の説明から、オフィスツアーはスタート。「コンサルティングとは、企業や組織の課題を解決するために、専門家(コンサルタント)が分析・助言・支援する仕事です。フューチャーはさまざまな企業のコンサルタントとなって、経営課題の解決策を指南し、現状分析や改善策の提案、戦略的なアドバイスをしています」

「コンサルティングってどんな仕事だと思いますか?」と問いかける木下さん(左)
木下さんの分かりやすい説明で、コンサルティングという仕事について漠然としたイメージを持っていた参加者たちも「なるほど」と理解を深めていました。
自由で心地よいオフィスと女性活躍のメッセージが込められた会議室
続いて実際に社員の方々が働いているオフィスの見学へ。オフィスデザインに関する賞を受賞しているというオフィスは、フリーアドレス制で好きな場所に座って仕事ができるようになっていました。
次に訪れたのは会議室。各部屋には、『マイ・インターン』などの女性が活躍する映画に登場するヒロインの名前が付けられ、内装もその世界観を体感できるデザインに統一されています。「女性の活躍を応援したいというメッセージが込められているんです」と教えてくれました。

飲食もできるラウンジスペースも、開放的で明るい雰囲気です
美容×AIのシステム体験や開発者のお話に、参加者も興味津々!
オフィス見学から戻ると、システム体験のワークショップへ。フューチャーのグループ会社であるフューチャーアーキテクト株式会社 公共サービス事業部の上野貴史さんが自ら開発した美容×AIの技術について解説してくれました。
「このシステムは、スマホやタブレットで撮影した顔を分析してパーソナルカラーと理想的な眉毛の形を診断するものです。パーソナルカラーはAI学習を使用し、理想の眉毛は目鼻などの位置から理想の座標(眉頭・眉山・眉尻)を算出します」

数学の知識を応用したシステムに触れ、学校で学んだことを将来のビジョンに繋げていました
「これには学校の授業でも習う、直線を求める方程式や二次関数が応用されているんです」という上野さんの解説に、参加者たちは実際にノートパソコンを使って診断しながら驚いている様子でした。
悩みながらも理系を選び、やりがいある仕事と出会えた先輩たち
続いて先輩社員による学生時代の経験や現在の仕事についてのトークが始まると、参加者は熱心に聞いていました。

左から、コードキャンプ 川西里佳さん、フューチャー 木下尚美さん、フューチャーアーキテクト 江口未紗さん、馬原柚香さん
- Q.
-
理系進学を決めた理由はなんですか?
- A.
-
自分は圧倒的な文系脳の持ち主と自負していたのですが、高校の情報の授業が思いのほか楽しくて、大学は苦手だった理系の情報工学部を選択しました。(江口さん)
高校時代に理系と文系でかなり悩みましたが、「もし大学で理系に進みたくなったときに文系科目しかやっていないと受験が難しそう」と考えたのと、「化学を学びたい!」という思いが、理系選択を決断した大きな理由です。(馬原さん)
- Q.
-
ITコンサルタントにはどのような性格、スキルを持った人が向いていますか?
- A.
-
スキルよりも性格が大切だと思います。ITというのは先が見えない、ゴールがわからないことが多いので、それにめげない性格の人が向いているかもしれません。(馬原さん)
- Q.
-
どのように仕事と家庭・育児を両立していますか?
- A.
-
全てを完璧にやろう、と思わずに優先順位をつけることを意識しています。「やりたいこと」と「やらなければならないこと」はやる、「やりたくないこと」や「やらなくてもいいこと」はやらない、つまり「全部やらなければダメ」という考えをやめました。取捨選択をすることで、楽しく仕事と子育ての両立ができています。(川西さん)
オフィスツアー参加者の感想

自分の通う学校には文理コースの選択がないので、どうしたらいいのか悩んでいましたが、「どの段階でも遅いということはない」というアドバイスで、気持ちが楽になりました。また、コンサルタントという仕事は自分の勤める会社だけでなくいろいろな会社の人と一緒に仕事ができる、とても有意義な仕事と感じました。

AI技術と日常の融合体験!
NVIDIAオフィスツアーを紹介
世界中にオフィスを持つグローバル企業のNVIDIA。もともとはゲームのグラフィックボード開発などを行っていましたが、現在はAI分野において世界をリードする企業の一つになっています。今回のオフィスツアーは、そんなNVIDIAの日本オフィスで開催されました。

日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝さんが登壇し、参加者へ挨拶しました
オフィスツアーがはじまると、まずはNVIDIA日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝さんが挨拶。NVIDIAの、AIをはじめとした「未来に向けた取組」などについてお話し下さいました。
その後の会社説明では、NVIDIAの歴史について解説がおこなわれたほか、本社をバーチャルツアー形式で紹介。特にAIによる車の自動運転やロボティクスの進化、最新ゲーム機にNVIDIAの技術が使われていることに参加者たちは興味津々な様子でした。
AI技術を実際に体験!
続いては「AIデモツアー」に参加し、AIが私たちに何をもたらしてくれるのかを体験・見学しながら学びました。
「AIデモツアー」でおこなわれた体験・見学は3つ。最初はインテリアデザイン体験です。仮想空間の部屋のデザインについて、AIのサポートを受けながら家具や観葉植物などを配置していきます。おしゃれな部屋に仕上がった際には「おぉ!」という歓声があがっていました。

インテリアデザインを体験
続いては企業向けコンピュータの中身を観察。内部の部品である大型のGPU(グラフィクス処理ユニット)とCPU(中央処理装置)を参加者たちは持ち上げてみたり触ったりしながら、興味深くチェックしていました。

企業向けコンピュータの中身を観察する参加者
そして最後に、2007年に発売された名作パズルゲーム『Portal』のリマスター版『Portal with RTX』を使ってゲーミングPCの性能を比較しました。オリジナル版とリマスター版の違いや、NVIDIAの最新AI技術「DLSS 4」がON/OFFのときで画面の動きや画質がどう違うかなどを体験。最新のゲーミングデモをプレイしたときの、圧倒的に滑らかな画面の動きに参加者たちもビックリ!ゲーミングPCの進化にもAI技術が関わっていることを体感し、NVIDIAの仕事や取組について興味を深めた様子でした。

ゲーミングPCの性能比較の様子。「全然違う……!」と驚きの声があがっていました
女性社員が仕事のやりがいやAIとの向き合い方を語る!
最後に、女性社員への質問会「Ask me anything」が行われました。参加者たちがグループに分かれて、さまざまな質問を社員に投げかけました。
- Q.
-
NVIDIAに入社して良かったことは何ですか?
- A.
-
世界中の人と仕事ができることです。自分が所属している以外のチームと仕事をしたり、海外のチームと協力し合ったり、すごく貴重な経験ができています。
- Q.
-
仕事をしていて、やりがいを感じた瞬間を教えてください。
- A.
-
車の自動運転に、自社の技術が使われたときです。時代が変わった瞬間に立ち会えて、非常に嬉しかったです。
英語を使う仕事を通じて、自分の語学スキルが活かされていると感じる瞬間です。そして、さまざまな国の人と協力して仕事を進めることで、新しい視点やアイデアを得ることができ、自分の成長を実感できることにも大きなやりがいを感じます。
- Q.
-
中高生の頃にやっておいたほうが良かったことは何ですか?
- A.
-
アルバイトやボランティア活動です。私は漠然と勉強ばかりやっていましたが、もしこれらの経験ができていたら、もっと将来の夢を描きやすかったのかなと思っています。

「Ask me anything」の様子
- Q.
-
AIは難しそうですが、どのようなときに楽しく感じますか?
- A.
-
一見難しそうに感じるかもしれませんが、実験と同じような考え方だと思っています。私たちの研究は、AIに「同じAという指示を出したのに、以前とは違う結果になる。ではなぜそうなるのか」「Bという指示を入れた場合にはどうなるのか」と試行錯誤を重ねるものなんです。すぐに結果が出るようなものではないですが、少しずつ積み重ねていけば、だんだんと楽しさを感じられるようになります。
オフィスツアー参加者の感想

ツアー全体を通じて、AIのすごさが身に染みてわかりました。また、パソコンの技術やテクノロジーの未来についての内容でワクワクしました。進路はまだ迷っているところですが、今日のツアーを通じてAIを扱っている企業にも少し興味が湧きました。

「やっちゃえNISSAN」の開発拠点を訪問!
今回訪問したのは、「他のやらぬことを、やる」というキャッチコピーで知られ、自動車の製造、販売をメインにしている日産自動車株式会社。“技術の日産”を生み出す貴重な現場を見学しました。
オフィスツアーは、DEI推進室の小林さんによる会社説明からスタート。
「世界各地に会社や工場がある日産自動車は、従業員もお客様も多種多様です。そのため、会社としてその多様性や価値観を尊重する文化の醸成を目指しています。情熱をもって車づくりをしたい、新しいことをやってみたい人は、ぜひ日産自動車を選択肢に入れてください」と、小林さん。

会社の紹介をする小林さん
異世界のような実験棟で風を使って車の性能をテスト
続いて、自動車の研究開発を実際に見学。カスタマー パフォーマンス&第二車両実験部 熱エネルギーマネジメント・空力・風音実験グループの中川さんと車両計画・性能計画部 空気流・風音性能計画グループの大貫さんが空力実験部の建物を案内してくれました。ここには一周210メートルの風洞があり、直径8メートルのプロペラで風を送り出すことができます。

このプロペラを使って、最大270km/hの風を作れる
「私は、車が走ったときに空気の影響をどのように受けるかを研究しています。この施設では道路を走行中の状態を風を流すことで再現し、空気抵抗を計測しています。天秤の上に車を設置する必要があるため、走りながらではできない実験です。空気抵抗を少なくし空力性能を良くできるよう検討しています。あの巨大なプロペラは大量の電力を消費するので、事前に綿密なシミュレーションによる検討を実施して、できるだけ実験の回数を減らせるように日々頑張っています」(中川さん)

ホースから出した煙をさまざまな角度から車体に当てて、煙の流れを観測します
大貫さんの仕事は、自動車が走行しているときに、自動車の周りで風によって発生する音が小さくなるように、風音性能を高めること。空力性能や風音性能は、風の流れをどうとらえるかがポイントです。そのため煙を使った風の流れの可視化や、車内に人が乗った状態での音のデータの記録などを実施しています。

ガラス張りになった床下から、「車体の下の空気の流れがどうなっているか」を観察できるようになっています
普段は限られた人しか入れない施設に、参加者たちはワクワクが止まらない様子。中川さんと大貫さんへの質問タイムも大盛り上がりでした。「仕事のやりがいを感じるのはどんなときですか?」という質問には、中川さんは「研究して世の中にない技術を見つけたときです。一つの分野のプロフェッショナルになれることに楽しさと誇りを感じます」と回答。大貫さんも「作ったものが最終的に商品となったときですね。みんなで実現したものが街中などで走っているのを見かけると、嬉しくなります」と笑顔で答えてくれました。
エンジニアの先輩とトーク 会社選びの理由、苦手科目にどう取り組んだ?
実験設備を見学した後は、カフェテリアへ移動。待っていたのは、エンジニアとして働く吉田さん、加藤さん、長谷部さん、江場さん、大津さん、檜枝さんです。グループに分かれての座談会では、進路選択や働き方について活発に意見を交わしました。

左から、吉田さん、加藤さん、長谷部さん、江場さん、大津さん、檜枝さん
- Q.
-
どうして日産自動車に入ろうと思ったんですか?
- A.
-
一番の理由は“人”です。リクルーターとして大学に来ていた方が、すごく良い人だったんです。それが決め手になりました。配属された部署も上司や同僚が良い人ばかりで、良好な関係を築けています。(檜枝さん)
- Q.
-
理系に決めたのはいつですか?理系はセンスがないと無理でしょうか?
- A.
-
学生時代に、歴史のテストで下から数えたほうが早い順位を取ってしまったことがあって。そのときに「あ、自分は理系のほうがやりたいんだな」と思いました。センスがあるか(得意か)どうかというより、「やりたい、楽しい」と思えれば勉強が辛いときも踏ん張れると思うので、興味があるかどうかで決めたほうがいいと思います。(長谷部さん)
- Q.
-
高校1、2年生のときはどのように過ごしていましたか?
- A.
-
ごくごく普通に過ごしていました(笑)。「勉強漬けでした……!」という感じではなく、塾に行って、部活もやって、オープンキャンパスにも行ったりしました。1、2年生はとにかく基礎が大事で、応用は3年生からでも大丈夫だと思います。(江場さん)
オフィスツアー参加者の感想

開発拠点を見学して、働いている方々のお話を聞き、進路選択で悩んでいることを相談できました。将来の選択の幅が広がって、可能性を感じられました。

カメラやプリンターなど幅広い製品を扱う大手メーカー『キヤノン』で、最先端の技術を体感!
「自分たちの手で世界一のカメラを作りたい」という思いから、1934年に日本初の35mmレンジファインダーカメラの試作機「KWANON(カンノン)」が誕生し、カメラメーカーとしてスタートしたキヤノン。創業以来培ってきた光学技術を軸に、複写機、プリンターなどの事務機、半導体製造装置などの産業機器、医療関連機器など、多岐にわたる製品・サービスを提供し、技術イノベーションを追求しています。
実際にカメラ製品を手に取り、キヤノンの技術の奥深さに触れる!
キヤノン本社で行われた本イベントは、展示の見学からスタート。キヤノンの礎となった「KWANON」やキヤノンのカメラ2台を搭載した人工衛星のモデルなど、興味深い展示品の数々に参加者たちも前のめりになっていました!

キヤノンの歴史を聞いている様子
カメラ製品が展示されたスペースでは、学生たちはカメラを手に持ち、目の前に広がるジオラマを撮影しながら「こんな大きなカメラを持つのは初めて!」と大興奮。さらに、高い評価を得ているネットワークカメラの映像や、映像制作機器で撮影された8K映像を鑑賞し、その性能の高さを実感していました。
こちらの展示は一般には非公開となっており、貴重な体験となりました。

「どうやって撮るの?」と少し戸惑いながらも、一生懸命撮影しています
体験コーナーでは、学生がペアを組んでカメラの分解に挑戦!「1台のカメラがこんなにたくさんのパーツで構成されていたなんて知らなかった」と驚きの声があがりました。

社員の方にアドバイスをもらいながら、カメラの分解を楽しむ参加者たち
3D画像生成技術の体験では、カメラの撮影画像から3D画像を作成するソフトウェアを活用。この技術を用いれば、特別な機材を用いることなく、たった1度の撮影で高画質な3D画像を生成することができます。「こんな一瞬で3D映像ができるなんてすごい」と感嘆の声が上がっていました。

モニターに映し出された3D画像をタッチ操作しさまざまな角度から確認
学生時代の話から仕事のやりがいまで 女性エンジニアと座談会
最後は、4つのグループに分かれ、各グループにふたりの女性エンジニアが参加し、座談会を実施。すぐに打ち解けて、参加者たちも率直な質問を次々とぶつけていました。

自身の経験や仕事に対する想いを語る社員の方々
- Q.
-
エンジニアになったきっかけはなんですか?
- A.
-
私は小さい頃から好奇心旺盛なタイプで、手芸や学校のイベント企画など、0から1を生み出すのが好きでした。その影響で中学生のときから開発系の仕事に就きたいと思っていて、エンジニアを目指しました。(エンジニアAさん)
- Q.
-
仕事の好きなところと、やりがいはなんですか?
- A.
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自分が開発に関わったカメラが発売されて、それを使っている人を街で見かけたときに、「やってよかった!」と思います。(エンジニアBさん)
- Q.
-
学生のときにやっておくといいことはありますか?
- A.
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なんでもやってほしい!!私はダンスやゲームなど多趣味で、そこから開発のヒントを得ることもあります。いろんな経験をしておくと、社会人になってから役に立つことが増えますし、世界を広げるためにいろんな人の話を聞くことも大事ですね。(エンジニアAさん)
オフィスツアー参加者の感想

父がキヤノンのカメラを持っていて、私も写真を撮るのが好きなので、キヤノンのオフィスツアーに参加できてとても嬉しかったです。座談会では、「理系の科目やプログラミングが得意じゃなくて……」と相談をしたら、「得意じゃなくても、やってみて好きになれそうなら大丈夫だよ」と言ってもらえて、自信がつきました!
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