フジテレビ『めちゃ×2イケてるッ!』(1996~2018年)の総監督として知られる片岡飛鳥氏(とぶとりっぷ合同会社代表)が、映像コンテンツ制作会社・UNITED PRODUCTIONSで講義を行った。片岡氏が手がけるナインティナイン・岡村隆史を長期にわたり追いかけた番組『めちゃ×2メチャってるッ! ~Let's Do MECHA again!』(FODで10月10日配信スタート)の制作に参加している同社は「日本一のコンテンツサプライヤーになる」というミッションを掲げており、企画開発のノウハウを片岡氏に学ぶ社員育成の場としてオファーし、実現したものだ。
今回の講義は、プロの制作者として“面白さを伝える言葉”を持つことをテーマに、1年目のADから17年目の部長まで、約40人の社員・スタッフが参加。全4日間、のべ10時間を超える濃密なやり取りで、これまでのテレビマン人生で培った経験から得たメソッドを、余すことなく伝授した。
講義の後にはマイナビニュースのインタビューに応じ、この活動を行う背景に、業界を問わず「オリジナリティを作ること」の素晴らしさを伝えること、そして自身を育ててくれたテレビ業界への「恩返し」の思いがあることを語った――。
なぜオファーシリーズが笑いと感動を生んでいたのか
『めちゃイケ』の名物企画の一つである、ナインティナイン・岡村隆史が無謀な挑戦に臨む姿を追う「岡村隆史にオファーが来ました」シリーズ。努力を重ねて本番で奇跡を起こす、笑いとドキュメンタリーを融合させたスタイルが毎回大きな反響を呼んでいた。
この企画の特性を言語化すると――岡村が、SMAPやEXILE、三浦大知とダンスをしたり、27時間不眠不休で具志堅用高とボクシング対決したり、1週間でホールインワンに挑戦したり、ラケットも握ったことのない状態から杉山愛とテニス対決をしたりと、常に片岡氏から「必死になれる状況」に「放り込まれ」、その結果の「喜怒哀楽のリアクション」が笑いと感動を生んでいた――と説明できる。
1つの企画を説明する際に片岡氏がこだわるのは、「頑張れる」よりも「必死になれる」、「状況に置かれる」よりも「放り込まれる」など、より最適な言葉を抽出すること。その作業を、「途方もない言葉の海の中から“探す”、その後に“選ぶ”、その先に“練る”、それでもまだムダがないかと“研ぎ澄ます”。そんな感覚があります」と表現し、「人に届けるものをつくるためには日本語のプロであるという意識を強く持ってほしい。言葉をたくさん知ってるほうが良いし、たくさん本を読んだり映画を見て、インプットもしてください」とアドバイスした。
講義では、この言語化の手法を明確にしたフォーマットを伝授。受講者たちは、『アメトーーク!』(テレビ朝日)、『水曜日のダウンタウン』(TBS)、『有吉の壁』(日本テレビ)という各局の人気バラエティで当てはめることを実践していった。
ちなみに片岡氏は、『水曜日のダウンタウン』の中で「板東英二さんの闇みたいなものが見えた回が大好きだった」とのことだ。
今は亡き天才放送作家…言葉一つ一つにあった重さ
新卒でフジテレビに入社し、『オレたちひょうきん族』にADとして配属された日の夜に、飲みに連れて行ってくれた師匠でもある三宅恵介ディレクターに言われたのが、「すべてのことを自分の言葉で説明できるようにしろ」。その真意を理解するには、自身の番組である『めちゃイケ』で経験を積むまで10年近くかかったと打ち明ける。
また、「“口先で上手に生きていけ”と言っているわけじゃないです」とくぎを刺した上で、「僕が天才だと思う(放送)作家なんだけど、2015年に死んでしまった渡辺真也という男はまあ寡黙なやつで。無駄口を叩かないし、ヨイショもしなければおべんちゃらも言わない。なんなら口下手で引っ込み思案だけど、その言葉の一つ一つに重さがあったんです」と紹介。
それを踏まえ、「皆さんが持っている<何をどう面白がるか?>を、正確な言葉にして出せるようにトレーニングをしましょう」と呼びかけた。