フジテレビ時代の講義に参加した若手制作者たちとは、一緒に番組も作った。片岡氏にとって在籍時最後の担当番組となった『567↑8』(21年3月29日放送)のディレクター陣の一人には、後に『ここにタイトルを入力』や『有吉弘行の脱法TV』といった話題のバラエティを手がけることになる原田和実氏もいた。

自身の“最後の弟子”である原田氏を思い、「面白いことに突き進む制作者にとって、守ってくれる先輩や上司というのは本当に必要なんです」と訴え、「僕で言うと吉田正樹さんでした。ADとして『ひょうきん族』が終わって、会社に言われるまま『いいとも!』のADに転籍させられて忙殺されていたところ、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』にディレクターとして引っ張ってくれた。めちゃめちゃしんどかったけど、結果としてみればそうやって会社から守ってくれたことに感謝ですし、あれがなかったら絶対に今はないので、吉田さんには足を向けて寝られないです」と語る。

また、「きっと『水曜日のダウンタウン』の藤井健太郎さんも、“あいつはこれでいいんだよ”と彼を守ってくれている上の人がいるはず」と推察した上で、「僕は各テレビ局に“あいつはこれでいいんだよ枠”が2つぐらいあるべきだと思うんです。そういう作り手がいると、他の人も“あいつが頑張ってるから、俺はこういう違うことをやってやろう”と刺激を受けるので」と、組織の活性化につながることを指摘した。

テレビ発のメソッドが垣根を越える「オリジナリティを作る素晴らしさを」

テレビ番組の企画作りを切り口に“言葉を使って伝える”術を伝授する片岡氏の講義は、フジテレビでスタートし、映画会社や通信会社を経て、今回のような映像制作会社にとどまらず、メーカーや商工会議所など、エンタメ業界外からもオファーがあるという。

「学生時代って、言葉もいらないくらいの気の合う仲間と集まるじゃないですか。でも社会に出たら、自分とは絶対に合わないなという人とも一緒にチームでものを作らなければいけない。その時に、この言語化が必要になってくるんです。いろんな人がいて作るもののほうが、幅が太くなっていろんな人に届いていくと思うので、チームのみんなを言葉の力で動かせるようにしたほうがビジネスとしても効果的だと思います」

この活動を通して、どの業種においても「“自分たちのオリジナリティを作る素晴らしさ”を幅広く伝えたい」という片岡氏。「どこかのポップスの1行の歌詞に反応して、勝手に自分の人生を当てはめるみたいなものだと思っていて、聴いてくれる方の想像力で自分の仕事につなげていただければ」と願っていた。

  • 『めちゃ×2メチャってるッ!』より (C)短い人で1年6ヶ月、長い人で3年間「メチャっていた」製作委員会

●片岡飛鳥
1964年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、88年にフジテレビジョン入社。念願の『オレたちひょうきん族』にADで配属され、『笑っていいとも!』では「テレフォンショッキング」冒頭での客席の「そうですね!」のレスポンスを生み出した。『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』でディレクターとなり、『新しい波』で出会ったメンバーと『とぶくすり』『とぶくすりZ』『めちゃ×2モテたいッ!』、そして『めちゃ×2イケてるッ!』へとつながる。『FNS27時間テレビ』では04年・11年・12年・15年を統括演出、『はねるのトびら』『ふくらむスクラム!!』『ピカルの定理』では企画監修を務める。22年に同局を退社し、とぶとりっぷ合同会社を設立。『めちゃ×2ユルんでるッ!』(FOD)、『アイカタ ~大切な人の【イイところ】撮ってきてください』(NHK)を手がけ、10月10日からはナインティナイン・岡村隆史を長期にわたり追いかけた番組『めちゃ×2メチャってるッ! ~Let's Do MECHA again!』(FOD)の配信がスタートした。