12月2日、バンダイナムコエンターテインメントはバンダイナムコ未来研究所にて現在開発中のPvPvEシューター『SYNDUALITY Echo of Ada』(以下、『Echo of Ada』)のメディア向け体験会を実施した。
クローズドネットワークテストや各種体験会が現在まで複数回にわたって開催されている本作だが、今回は新たに実装されたシングルプレイモードを試遊することができた。
さらに「SYNDUALITY」プロジェクトの企画、原案、プロデューサーを務める二見鷹介氏から、「人間とAIのすれ違い」を描くという本作のコンセプトや開発にまつわるエピソードを聞くこともできたので、あわせて本稿でお届けしていく。
※ゲーム画像は開発中のものです
編集/anymo
AIパートナー「メイガス」が戦況を切り拓く。難易度高めなPvPvEモードと、世界観をより深く知るシングルモードを搭載
『Echo of Ada』は、テレビアニメ、小説、漫画、プラモデルなど、多方面で展開中の新規大型SFプロジェクト「SYNDUALITY」の最新作として開発された3人称視点型のPvPvEシューター。
人類が滅亡しかけた危険な地上を舞台に、プレイヤーはAIパートナーの「メイガス」とともに、二足歩行メカのクレイドルコフィンを駆使してエネルギー源を求める「ドリフター」として、数多くの戦いに身を投じていくことになる。
本プロジェクトにおけるテレビアニメ『SYNDUALITY Noir』(以下、『Noir』)は、すでに計24話が放送されており、『Echo of Ada』と共通する世界設定やキャラクターが登場する。
テレビアニメでは作中時代の2242年に発生した一連の出来事が描写され、ゲームである『Echo of Ada』では、その20年前にあたる2222年が舞台となる。
本作において、ゲームプレイの基礎となるのはマルチプレイ専用のPvPvEモードだ。死亡時の所持品や装備の全ロストを前提に、他プレイヤーを倒して所持品をすべて奪ったり、対人戦をうまく避けてコツコツと「AO結晶」を回収して装備を整えたりと、PvPvEシューターのオーソドックスな体験を楽しめる。
今回試遊したのは、シングルプレイのPvEモードである「旧アメイジア調査」。
「旧アメイジア調査」での装備品やアイテムは、PvPvEシューターのマルチプレイモードから独立しており、マルチプレイで獲得した装備品やアイテムを「旧アメイジア調査」で活用することはできず、「旧アメイジア調査」で得たアイテムをマルチプレイに持ち越すことはできない。
ステージクリア形式のミッションが複数登場し、ステージごとに機体の性能、メイガスの性能、装備、持ち物などが変化していく。いわば用意されたお題を次々にこなすタイプのシングルモードだと言えるだろう。
機体の操作感や射撃方法をはじめとした基本的なシステムはすべてマルチプレイと共通しているが、ミッション内の弾薬や回復アイテムが有限なので、ステージ内の探索と無駄打ちしない正確な射撃が必要となる。
アニメの作中でも登場した「伝説のドリフター」ことアルバ・クゼと相棒のメイガスであるエイダ(Ada)が、『Noir』の舞台である2242年までの間にどのような事態と直面していたのかを、ボイスログやビデオログといったアーカイブを集める形で知ることが可能だという。
このほかにも、2222年に崩壊した「アメイジア」という地下都市の真相を探ったりと、本作の根幹に迫る設定を掘り起こすことが可能だ。
本作の機体にはHPや弾薬に加えて、スプリントやすばやいステップの過度な連続使用を制限するゲージがあり、そこまで俊敏には動けないように設計されている。
特徴的なのが機体の重厚感。本作の機体にはHPや弾薬に加えて、スプリントやすばやいステップの過度な連続使用を制限するゲージがあり、俊敏なだけではないどっしりとした操作感を楽しめるように設計されている。
5〜6m級のコンパクトな機体サイズも背景とのスケール感がわかりやすく、リアル寄りのメカが好きなプレイヤーにとってはうれしいポイントが満載だ。
また、画面の左上でプレイヤーが自由にカスタマイズした「メイガス」がアシスタント表示され、つねにフィールド内の様子を知らせてくれるのも本作の特徴的な部分だ。
一般的なPvPvEシューターは、敵キャラクターや他プレイヤーの視認性もリアルテイストになっていることが多く、システム上の性質から待ち伏せで他プレイヤーを狩る上級者に悩まされることも多い。そのため、基本的に身を隠すことや索敵が非常に重要になる。
しかし本作では「メイガス」が敵の位置やマルチプレイマップの交戦履歴に合わせて避けるべき地帯を教えてくれたりもするので、既存の作品とは大きく異なるプレイを体験できるようだ。
それはシングルプレイの「旧アメイジア調査」でも同様で、ゴール地点までに出現する奇怪な化け物の「エンダーズ」や地上にはびこる人間の「盗賊団」といった敵の位置をメイガスが教えてくれる。さらに、実際にプレイヤーの行動を学習して適切なアドバイスを与えてくれるのだという。
なお本作では、ネットワークテストごとに寄せられたユーザーからの意見を大きく反映し、それぞれのテスト版ごとに敵の強さや戦闘時間もかなり変化しているとのこと。
「旧アメイジア調査」も目下調整中とのことで、今回の試遊では「盗賊団」が非常に強力な敵として感じられた。
たとえば30発ほどの銃弾を当てきっても「盗賊団」の敵1体を倒し切ることはできず、敵1体を倒すまでに、武器を持ち替えるか、リロードをするか、爆破物を代わりに投げるかなど、必ずひとつ別の工程を挟む必要がある。
さらに「盗賊団」の機体による射撃は非常に正確で、中距離では相手の弾丸のほとんどが命中するため、正面切っての撃ち合いではステージクリアまでに回復アイテムが足りなくなってしまうことがほとんどだった。
必ず相手の撃ち返しタイミングで遮蔽物に隠れたり、遠距離から狙撃して相手の射程範囲外に逃げたりと、ステージクリアまでにさまざまな工夫が必要となり、一筋縄ではいかない骨太なゲーム性を体験することができた。
今回のテストプレイ版の難易度は、リアルテイストなメカ設定とシビアなゲーム性になりがちなPvPvEシューターのジャンル性が融合した結果、かなりの難しさを誇る内容になっていた。
その一方で、この難易度だからこそ、世界設定の重要な部分を担う「メイガス」の存在がプレイヤーの心の支えとなり、より深く「SYNDUALITY」の世界に没入できるようにも感じられた。
『Escape from Tarkov』と『風来のシレン』にも影響を受けた──『Echo of Ada』のコンセプトである「人間とAIのすれ違い」についても語る二見鷹介氏インタビュー
試遊の後には同社内にて、企画、原案、プロデューサーを一手に担う二見鷹介氏にインタビューを実施することができた。
「旧アメイジア調査」の詳細はもちろん、ネットワークテストの模様や『Echo of Ada』の開発コンセプトなどを企画の立ち上げから話を聞くことができたので、以下にお届けする。
──「SYNDUALITY」プロジェクトの概要と、プロジェクト内における『Echo of Ada』の立ち位置についてもお聞かせください。
二見鷹介氏(以下、二見氏):
「SYNDUALITY」プロジェクトは、「人とAIのすれ違い」をテーマにしたバンダイナムコグループが送るSFエンターテインメントです。
基本的にアニメとゲームを中心に、どの入り口からでも「人とAIのすれ違い」というコンセプトを体験できるものをお届けするように努めています。
たとえば『Echo of Ada』は、ほかのPvPvEシューターとは異なり、プレイヤーがパーティを組んでマップに入ることができず、必ずプレイヤーひとりと相棒の「メイガス」だけで探索することになります。
ほかのプレイヤーと遭遇したときには、敵対してもいいですし、交戦せずにおたがい慎重に離れてもいいでしょう。あるいは行動をともにしたり、突然裏切ったりしてもいいわけで、まずそこで「人と人のすれ違い」というものを表現しました。
そういった他人とのすれ違いを繰り返していく中で、唯一信頼できる「メイガス」との関係性が深まっていくのですが、いつかはその「メイガス」とプレイヤーの関係がすれ違っていく体験ができる作品となるように制作しています。
──ジャンルがPvPvEシューターだからこそ表現できる他人とのすれ違いですよね。
二見氏:
はい。昨今エクストラクションシューターと呼び方が定着しつつあるPvPvEシューターですが、私が企画を立ち上げたときには、いまやジャンルの代名詞である『Escape from Tarkov』(以下、『Tarkov』)を社内で知っているのは私だけという状況でした。
『Tarkov』がリリース後に好評を博していたこともあって、ジャンルとして『Echo of Ada』にPvPvEシューターの要素を取り入れることになりました。
──『Tarkov』がPvPvEシューターとして成功したからこそ、いまの『Echo of Ada』があるわけですね。
二見氏:
そうですね。また、もともと他人とのすれ違いを表現するための発想には、『風来のシレン』(以下、『シレン』)シリーズのイメージがありました。『シレン』には、ダンジョン内で死んだときに全ロストのシステムがあるので、まずは全ロストをゲーム内に入れていこうと。
そこでもし、『シレン』がオンラインゲームで、複数人のプレイヤーが同じダンジョンに潜っていたらどうなるのだろうという考えもありました。
──『シレン』をはじめとしたローグライク作品でおなじみの狭い通路をそれぞれのプレイヤーが譲り合って通るのか、正面切って争うのか、何もせずにすれ違うのか、たくさんの選択肢が生まれますよね。
二見氏:
それに他プレイヤーと直接出会わずとも、歩いていたら残骸があってアイテムが落ちているだとか、想像を膨らませるシチュエーションがいくつも思い浮かびます。
そういった発想をもとにしているので、『Echo of Ada』では12人のプレイヤーがひとつのマップに入るのですが、12人が同時にスタートするのではなく、各マップに他プレイヤーが出たり入ったりを繰り返すようなマッチングシステムになっています。
──マッチングしにくい時間帯が生まれず、好きなときに遊びやすいシステムですね。
二見氏:
そのあたりのストレスはほとんどないゲーム性になっています。
──ネットワークテストの開催時に寄せられたユーザーの意見がかなり取り入れられていると試遊中にお聞きしたのですが、そのあたりからもプレイヤーのストレスを減らす調整は加えられていますか?
二見氏:
そこはディレクターと私のガチガチのやり取りがあって、ディレクターが難しくし過ぎたときは私が優しめのゲームにしたり、逆に最近は難しめの調整に舵を切ったりしています。
その一方で、難易度と関係ないプレイヤーへのストレスはできる限り減らすようにしています。一例としてはリロードが色々な行動でキャンセルされる仕様だったところ、テストユーザーからの声を受けてキャンセルがかからないようにすべて修正することもありました。
──『シレン』をジャンルに取り入れる案と「すれ違い」というテーマは、同じ時期から持っていたのでしょうか。
二見氏:
『シレン』については、企画の立ち上げ時にアイデアの例のひとつとして考えていました。「すれ違い」というテーマは、2014年ごろ「初音ミク」の話を聞いたときから着想を得ています。
いわゆる「初音ミク」の第1次ブームがあったときに、音楽プロデューサーから「いまの初音ミクの曲ってライブで歌えない曲になってるのを知ってますか?」と聞かれたんですよ。すごい早口で人が歌えない曲が多かったので。
そもそも「初音ミク」は、人間のように歌うために生まれてきたのに「なぜ人間っぽくないことをやらされているのだろう」と思ったり、「なぜ人は初音ミクに人間らしくないことを求めてしまうのだろう」と考えたりしていました。
そういった「すれ違い」をエンターテインメントで表現したいと思い、「SYNDUALITY」という企画にどんどん肉付けして入れています。
──ちなみに「SYNDUALITY」という言葉には、二見さんがおっしゃるようなコンセプトやテーマが込められていますか?
二見氏:
「SYNDUALITY」は造語で、「symphony」と「duality」を組み合わせています。「symphony」の共感する部分と「duality」の二重構造でズレている部分で、テーマを表現しています。
──「人と人のすれ違い」は、ゲームシステムの面から見事に表現されていると感じられますが、その先の表現目標である「人とAIのすれ違い」に関してはいかがでしょうか。
二見氏:
「旧アメイジア調査」のビデオログやボイスログで描写したアルバとエイダの関係性によって表現できたと思っています。
最初のステージクリア時に手に入るビデオログだと仲の良いシーンが流れますが、ほかの報酬でのビデオログだといきなり仲が悪いシーンから映像が始まることもあるので、物語体験としても興味を引く内容になっていると思います。
また、プレイヤーの相棒となる「メイガス」は、最初はズレがあるのですが、プレイを重ねるごとにゲーム内でプレイヤーに即したナビゲーションをしてくれるようになるので、そこでもAIとの関係性が深まっていく体験ができると思います。
──本当に自分だけの「メイガス」が形作られていくと。そういえばマルチプレイだと倒されたときに所持品を全ロストしてしまいますが……。
二見氏:
もちろん「メイガス」も奪われます。しかし最終的にはちゃんと帰ってきます(笑)。そのあたりはだいぶ前から社内で激しい議論があったのですが、奪われた「メイガス」が、他プレイヤーのことを学習したり、影響を受けたりすることはありません。
作品の設定としては、「メイガス」を預かる組織のようなものがあって、奪った側のプレイヤーは持ち帰った「メイガス」をそこに納品します。すると、組織のほうからお金がもらえるので、各プレイヤーはそのために他人の「メイガス」を奪うことになります。
──あくまでも納品して受け取れるお金のために奪っているだけで、ほかの目的はないわけですね。
二見氏:
そうです。わかりやすく言うと身代金に近いです。私は他プレイヤーの影響を受けるパターンがありでも良かったのですが、周囲の色々な人から反対されまして……(笑)。
本作には「ベイルアウト(緊急脱出)」というシステムがあって、いまのテスト版だと、いつでも使えるようになっています。倒されたときには、通常時と同じように所持品や装備は全ロストしてしまいますが、「メイガス」だけは逃がすことができます。
最初の機体だと倒されたときに、8秒ほど「ベイルアウト」可能な猶予時間が設けられていますが、機体の性能が上がれば上がるほど時間が短くなっていくので、良い装備を整えるにつれて「メイガス」を失うリスクは高くなっていきます。
──「メイガス」を失ったときの出撃はどうなるのでしょうか。
二見氏:
「メイガス」がいなくても出撃自体はできます。ただマップも開けないし、敵の位置もわからないので、対人戦はかなり厳しくなりますね。それに「メイガス」のナビゲーションがないと寂しいと思います。
──ここまでのお話でAIとそれにまつわる「メイガス」へのこだわりをお聞きできたと感じているのですが、キービジュアルを見たときには「クレイドルコフィン」の印象が強く、テーマやキャッチコピーでなぜこちらのロボットを押し出していないのかと気になりました。
二見氏:
ロボットの定義から言うと、「SYNDUALITY」の世界では「メイガス」がロボットなんですよ。
──「クレイドルコフィン」はあくまでただの機械に過ぎないと。
二見氏:
普通のメカですね。機体の活躍に焦点を当てたロボットアニメが好きな方は、「クレイドルコフィン」に目が行ってしまうと思いますが、私個人としては自動車や戦車に近い感覚で描写しています。
そこに「メイガス」と二人で乗り込んで旅をするわけですね。
──ロードムービーに近いイメージですね。
二見氏:
そうです。コンセプトを紹介するキャッチコピーでは「これは、あなたとメイガスの二つとない刺激的な二人旅」と表現しています。PvPvEという観点に絞ると、自動車に乗った状態でほかの車とすれ違って、どこに向かうのかを短く語り合うようなイメージです。
その中には、いきなり幅寄せしてきて襲いかかってくるような相手もいるかもしれません。そこをゲーム内でどう演じるかは、プレイヤー次第です。
──『Echo of Ada』の世界設定的な軸としては、強さを競ってつねに争い続けるような雰囲気ではなく、人類が姿を消した地上を、AIパートナーの「メイガス」といっしょに細々と旅するようなイメージが先にあるということですね。
二見氏:
そういったイメージのほうが近いと思います。ほかのプレイヤーと協力もできますが、あくまでもインスタントで厳密なコミュニケーションも交わすことはできないので、本当に信頼できるのは「メイガス」だけという作品です。
あとはゲームシステム的にキルタイムが長めなので、2対1のときに人数が少ないほうがほぼ必ず負けてしまうこともあり、自由なパーティが組めないようにしています。
その一方で「賞金首」というシステムがあって、「賞金首」になると徒党を組んで野良プレイヤーを襲えるようになります。もちろんデメリットはあって、プレイヤーを倒せば倒すほど賞金が上がっていき、マップ内で居場所が通知されるようになってしまいます。
逆に「バウンティハンター」という「賞金首」を狩る勢力や「自警団」というシステムもあって、ゲームを進めたプレイヤーは必ず所属勢力を選ぶことになります。
──MMORPGでいうところのPKギルドとPKKギルドがゲーム上のシステムとして存在しているわけですね。
二見氏:
はい。とはいえ、必ずしも「バウンティハンター」や「自警団」が正しいわけではありません。
各勢力のミッションを進めていくと断片的にフレーバーテキストを読めたり、所属するキャラクターから話を聞けたりするので、そこからプレイヤー自身で判断していくことになります。
──そのあたりはメディアミックスの関連作品から類推することはできますか?
二見氏:
まったくわからないようになっています。
──なるほど。ゲームのオリジナル要素というよりも、もともとゲーム自体が関連作のオリジナルになる予定だったんですね。
二見氏:
現状の流れとしてはアニメで登場済みのアルバやエイダに着目してもらって、ゲームをプレイしてもらえると良いのかなと。
それがなくても『Echo of Ada』も『Noir』も、独立した物語として面白いので、ゲーム性やキャラクターデザインから入っていただいても楽しめると思います。
──最後にプレイヤーへのメッセージをお願いします。
二見氏:
2024年12月12日から12月20日までのあいだ、だれでも無料でプレイできる体験版のようなオープンネットワークテストが開催されます。
ひとりでプレイしてもひとりじゃない、知らない他人がいて疑心暗鬼になったり、緊張感があったりする世界を、ぜひ信頼の置ける「メイガス」といっしょに旅していただければうれしいです。