日本一の図書館をつくろうプロジェクト、先日、ひとまず全5回の講演会を終えました。 ひとつ、はっきりとわかったこと、それは、講演いただいたような魅力的な図書館には、明確なコンセプトがある。 この明確なコンセプトを決めることが、豊橋のまちなか図書館を魅力的なものにする上で、まず初めにやらなきゃいけないこと、だというのがよくわかりました。



ところで、コンセプトとは何か。 例えば、まちのコンセプト。仮に、「緑いっぱいの笑顔あふれる街」なんてのは、何も言っていないのと同じ。 一方、僕が知る限り、これまで一番しびれたコンセプト、
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「母になるなら、流山市。」 

正確には、これはコンセプトを反映したコピーだけど、細かい話は省略。 このコピー、たった11文字で、流山市がどういう方向性を示し、そして、どういう人をターゲットにしているかが、はっきりわかる。

余談ですが、豊橋市の場合、現在の総合計画(第五次)の表紙には、「輝き支えあう水と緑のまち・豊橋」と書いてあります。 何も言ってないのと同じ。 残念です。 でも、流山市も総合計画(後期基本計画)の表紙の言葉は、「都心から一番近い森のまち」と、豊橋よりはよいけど、コンセプトというより事象が書いてあるだけなので、総合計画とはそういうものなのかも。 東京10年住んでいても、「都心から一番近い森のまち」と言われて、流山市は思いつきませんが。



さて、話戻して、よいコンセプトというのは、ちゃんとターゲットが伴っているもの。 場合によっては、先にターゲットが決まっていることも。 つまり、明確なコンセプトを決める、ということは、ターゲットがどんな人たちかを決めることにも通じる。 これは非常に重要なことで、ターゲットが決まれば、その後の考えた方の優先順位も決まってくる。

例えば、豊橋のここにこ(こども未来館)。 名前の通り、子どもや子育て世代の方々をメインとした施設ですが、少し前、くっそー、と思った出来事が。 ここで、ソチ・オリンピック、フィギュアスケートのパブリックビューイングが行われました。 日付も変わっているような深夜の時間。 もちろん、そんな時間だから、子どもは来ては行けない。 にも関わらず、館内でアルコールはダメ(もちろん持込も)。 なぜなら、「ここは子ども向けの施設だから」。 頭固いなー、と思う一方、さすが、とも。 優先順位が決まるというのは、こういうこと。 公共施設だからアルコールがダメ、ということではない。 だって、豊橋のプラット(穂の国とよはし芸術劇場)では、平時からビールが売ってるし。



では、図書館のターゲットは一般的に誰なのか。 これはおそらく決まっていない。 一般的に、図書館は読書をするところなので、静かにしなきゃいけないということになっているが、だから、子ども連れでは行きづらい。 こわいおじさんがじろっと見たり、うるさいおばさんが「自分の子どもを静かにさせることもできないの」なんて言ってくるかもしれない。 でも、これが、子育て世代をターゲットにした図書館ならきっと話が違ってくる。 「子どもは多少うるさいのが当たり前、だから大人が我慢しよう」、となるかもしれない。

全ての人に居心地のよい空間、というのは難しい。 だから、コンセプトを決め、ターゲットを決め、優先順位を決める必要がある。 だから、必ず揉める。 だって、誰もが自分をターゲットにされた(自分向きな)図書館をつくってほしいから。 でも、誰にでも魅力的な図書館を目指したら、誰も魅力を感じない図書館になってしまう。 コンセプト、ターゲットが明確だからこそ、魅力的なサービスに繋がる。

だから、図書館の基本計画(あるいはその委託事業)の成果なんて、本当はA4一枚で十分。 そこに、これから豊橋のまちなか図書館が進む、明確なコンセプトが書かれていれば。 文字にしたら、たった一枚の内容でも、そこにあと半年の時間をかける価値は十分にある。 そのくらい、誰がターゲットか、そしてその裏の誰がターゲットじゃないか、を決めることは難しいこと。 特に、公平公正がお題目の行政機関では。

間違っても、「誰にも愛される、みんなが大好きな図書館」、なんてコンセプトにはなりませんように。

では。