Sault『Untitled (Rise)』

 

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 そういやこの前話題になってたな、聴くか…と聴いた作品ですが、よくよく確認してみたら話題になったのはもう一年以上前のことだったらしく、絶望しています…。

 

 グループの情報については上のエレキングの記事が詳しいです。当初はめちゃ匿名的に活動していて、その謎さに惹かれるところもあったらしい。メンバーのInfloことDean Josiah Coverはプロデューサーとしても活躍していて、今年のLittle Simzの新作が決定打となりまさしく時代の寵児的な扱いを受けている……ような印象。

 

 いたるところで触れられているけれど、ソウル、ファンク、ロックなど、複数の音楽ジャンルを跨いだ音楽性が特徴。中でもアフロ‐アメリカンの音楽をベースにしているところはTV on the Radioと似通っているかも。

 

 『Untitled (Rise)』ではさらにダンスミュージックの要素が大幅に増していて、そこが本作のユニークな点となっている。サウンド自体は他の作品と大きく変わっているわけではないけど、楽曲の構造が、展開の仕方がよりダンス・クラブに寄っている。ビンテージな質感の音色もあって、MoodymannやTheo Parrishのファンならあまり違和感なく聴けるんじゃないかと思う。

 

 

 

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 ただ……ここがこのグループの一番の特徴だと思うんだけど、もろもろのセンスが異常に渋いんですよね。いぶし銀とでも言うか。それは特に楽曲のポップさのバランスと、先ほども触れた(ビンテージな質感の)音色のチョイスに現れてると思います。センスとしてはバンドのSpoonが近いのかも。古い質感の音と現行の音をうまく混ぜ合わせることでモダンさを追求する、みたいな。実際、Saultの音楽になんの情報もなく触れたら(いわゆるめかくしプレイ)正確な年代を当てられる気がしない。

 

 ぶっちゃけ評論家向け……というかオタク向けの音楽だと思っている。究極的には色んなジャンル・質感を取り入れる「バランス感覚」こそがこのグループの肝だと思っていて、またその部分を評価する人って自然と色んなジャンルを聴いてるオタクに限られると思う。バランス感覚が中心ってことはある程度のトレードオフで、突き抜けたところがないということになるような気も。個人的な評価としても8.0~は固いけど8.5以上はどうやってもあげられないみたいな感じ。

 

 しかしまあいつものことですが自分の評価には歌詞などコンセプトの部分は含まれていないので、そこを勘案したらまた変わってくるのかも。なんとなくですが『Untitled (Black Is)』の方が強く怒っている気がする。『Untitled (Rise)』はまだ祝祭性みたいなものがあり、音楽性もより快感重視になっているので個人的にはこちら推し。Little Simzの作品もそうでしたが、ストリングスの音色や使い方にはけっこう記名性というか特徴があるように思います(個人的な好きポイントでもある)。そして実は?かなり音楽性のブレないグループっぽく、どれか一つ作品を気に入れば他の作品もすべて楽しめる感じ。蛇足として、もうちょい早く聴いてれば『Nine』をダウンロードで買ってたのにな…と思っています、今。