自分の名前の「読み仮名」にこだわる人は多いが、実は、法律上は規定がなく「本人がそう名乗っている」という扱いだ。だが、デジタル社会では、読み仮名が本人情報として重要になり、位置づけがあいまいでは弊害がある。そこで、政府は戸籍法を改正し、読み仮名を法的に位置づけて戸籍に記載し、社会インフラとして活用することになった。その意味や背景を考える。
戸籍や住民票は「システム上利用」
日本では「本人」を公証する制度に、戸籍と住民基本台帳がある。戸籍は「出生から死亡まで」の親族関係と国籍を証明する。住民基本台帳は市区町村が作る住民票をまとめたもので、本人が「そこに住む」ことを証明する。
意外に思う人がいるかもしれないが、戸籍や住民票には、氏名の記載はあっても、読み仮名はない。ともに読み仮名の記載を法律で規定していないためだ。戸籍には、かつて「ふりがな」を付けることはできたが、1994年の戸籍電子化で廃止された。
社会では相手の「名前の読み方」に注意を払うのは基本マナーだ。例えば「上田さん」に「ウエダさん」と話しかけたが「ウエタです」と返され、気まずい思いをしたような経験を持つ人は少なくないだろう。
だが、法的にみると話は違ってくる。読み仮名は公証されていないため、「ウエタ」でも「ウエダ」でも、どう名乗るかは本人の自由となる。氏名の変更は家庭裁判所の許可がいるが、読み仮名の変更は自由にできる。
「そんなはずはない」と思う人はいるだろう。行政手続きでは、氏名とともに読み仮名を求められることが普通だからだ。
これには事情がある。戸籍や住民票には読み仮名を記載していない。だが、氏名に使われる文字は…
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