バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

週刊朝日のEM・ナノ純銀批判記事

今週発売された「週刊朝日(2/1号)」が、『「菌と銀」で放射能を除去? 下村文科相が入れ込む“個性派”科学』と題して、EMとナノ純銀による除染を懐疑的に取り上げています。明確に批判と呼べるほどの強い論調ではありませんが、明らかに疑問を提示しています。誌面の都合で短い記事ですが、大手メディアが疑似科学を懐疑的に取り上げるのはいい傾向だと思います。特に、この問題は疑似科学と政治権力という最悪の組み合わせになりかねないので、批判を続けるべきです。

一部を引用します。詳細はご購入の上ご確認下さい。

  • 難題が続く教育行政のかじをとる下村博文文部科学相(58)。晴れて初入閣を果たしたものの、ブログが一部で物議を醸している。
  • 「EM」とは文中(引用者注:下村氏のブログの文章)にある比嘉照夫琉球大名誉教授(71)が提唱する概念で、「有用微生物群」のこと。
  • 比嘉氏は同書(引用者注:『新 地球を救う大変革』)で、EMが放射能にも効果があると主張する。
  • (引用者注:EMの理論について)現代科学の常識からすると、かなり“独特”な印象を受けるが……
  • 板橋区ホタル生態環境館の阿部宣男館長から聞いた「ナノ銀」による除染法について肯定的に紹介している。
  • この「ナノ銀」除染とは、阿部氏の著書『ホタルよ、福島にふたたび』によると、こんな理論だ。
  • (引用者注:ナノ純銀の理論について)こちらも相当な“個性派”
  • 果たしてこれらは本当に効果があるのか。そして、下村氏は大臣として「EM」や「ナノ銀」除染を推進するのか。下村氏の事務所に問い合わせたが、締め切りまでに回答はなかった。

ナノ純銀除染の推進者はテレビ朝日のニュース番組、「報道ステーション」の取材を受けていることを繰り返し強調していますが(資料1、資料2、資料3)、同じ朝日新聞の系列である「週刊朝日」が批判的に取り上げたという点が非常に面白いと思います。朝日新聞グループ内にどのような事情があるのかは知りませんが。

被災地を、被災者をさらに苦しめる疑似科学が根絶されることを切に願います。


追記

上の文章の最後になぜこのようなこと書いたかというと、私自身が阪神大震災の被災者だからです。また、東日本大震災の被災地の農村、農業の復興のために働いている方々とも仕事の上で多数付き合いがあります。被災地を、被災者をさらに苦しめる疑似科学はパブリック・エネミーに認定して排除すべきではないかと半ば本気で考えています※。ホメオパシー騒動の際のように日本学術会議に動いて欲しいところです。

週刊朝日の今回の報道を読むと、報道ステーションがナノ純銀除染関係者を取材しているのは、いつか批判的に報道するためではないか、という気がしてきました。もしそうならば、関係者は肯定的な報道を心待ちにしているようですので、「梯子を外された」、あるいは「後ろから撃たれた」という形になります。こうなることを祈っております。

ところで、昨年秋に、フジテレビの「スーパーニュース」という番組がEMを辛辣に批判したことがありました。その報道に対するEM側の公式見解がこちらです。何だかあまり真剣に考えていないような印象を受けます。一方の親玉の比嘉照夫の見解はこちらです。このインチキ科学者も深刻に捉えている様子がありません。それどころか、「例え批判的であっても大手メディアに報道してもらえるだけで宣伝になる」と喜んでいる節があります。

肯定的な報道でしたら、無条件に宣伝になるので非常にありがたい話です。逆に批判的な報道ならば、「国家権力およびマスメディアによる弾圧だ。我々の主張が真実であるからこそ弾圧されるのだ」と信者に訴えることができます。肯定的であれ批判的であれ、報道を宣伝として利用できる技術を有していると言えます。

今回の報道でEMおよびナノ純銀の関係者がどのように対応するかを注視する必要がありそうです。


※ここは批判を受けてもやむを得ない記述だと自分でも思います。多少言い過ぎなのは確かです。しかし、効果がないことが最初から明らかな疑似科学のために、貴重な費用や時間、労力が浪費されて被災地が更に疲弊することだけは何としても避けなければなりません。