ラノベは侮れないという話

 こんにちは、こんにちは。小説の方は「ベイブレードで日本一を目指すも挫折して高校時代の3年間を棒に振った男」という設定で書き出しては見たもののあれだな。ベイブレードって全く話を広げようがねえな!
 全部捨てた!
 ボクは再びZEROから始める! そういえば昔、ZEROってバンドが「ゼロから〜歩き出そう〜」みたいなことを歌ってた気するんだけど、憶えてる? 俺は忘れた。


 さて、本題。
 マニアックなライトノベルが売れない話、あるいはカジュアルなライトノベルに偏っている話 - WINDBIRD
 マニアックと聞いて、「鼻フック」「温泉浣腸」「食糞」という素敵ワードしか出てこなかったので、最近のMF文庫Jはそこまで行っちまったのか……メディアミックスとかどうするんだろう……とドキドキしましたが、別にそういう話ではなかった。残念。
 乱暴に要約すると、『15×24』はめっちゃおもろいのに、あんま売れてないっぽいですね、今のラノベは萌えが席巻して、ピーキーな作品はどんどん隅に追いやられていくね。そりゃ、キングオタに「オタクはもう脳味噌死んでフラットラインwww」とか言われるし、失踪したひでおには「何が恐ろしいかと言えば、『けいおん!』という作品に流れる、あの空気だ。私は以前、あの空気と全く同じ空気を吸ったことがある。あの作品を見ていると私はアルコール依存症の治療の為、入院していた精神病院を思い出さざるをえない。そう『けいおん!』にはあの時の病院と全く同じ空気が流れているのだ! あの空虚さ! あの絶望! 何故彼らは漫画家というヤクザな商売もやってないのにあの作品をあそこまで楽しめるのだろう! 今、この日本という国家を包む空虚さをあの作品が象徴しているのだ!」と嘆かれたりするのも仕方ないね。けど、やっぱ安定してお銭を手に入れるには、萌え萌えな女の子に裸エプロンと猫耳をつけて、売れ線の絵師にイラスト描かせて、ゲーマーズで売っ払うのが一番の錬金術やで。ええか、ぼん、ようく覚えとけ。資本主義っちゅうやつはにゃあ、銭こを持ってる奴が一等強いんじゃぁ!! 貧乏人はイナゴでも食うて生きてくしかないんや! ボン、それが嫌なら、銭や! 銭を稼ぐしかないんじゃあ! っていう話? 
 多分、大幅に間違ってるんで、普通に要約すると、最近は萌え系の作品が目立つけど、萌えはあんま大ヒットもしない代わりに、大外れってこともなくて、そこそこ安定するよね。MF文庫Jがどれも似た感じになっちゃうのも仕方ないねというお話、多分。

 まあ、実際マニアックな作品は売れないよね、そりゃ売れねえさ。
 けど、ここで考えたいのが、「それってラノベだけの問題じゃないよね?」という点でありまして、そもそもマニアックといえば、今ではジャンル自体がマニアックなSFはどれだけ売れてるのよって話で、ちょっと前のソースだと、
がんばれ、扶桑社SF!
 こういう読んでて、酸っぱいものがこみあげてくるような話もあるわけで、小松左京賞も無くなって、現在日本でSF関係で長編の新人賞募集してるのって、日本SF新人賞ぐらいしかないし、とは言え、SFと言えばハヤカワ、ハヤカワといえばSFという天下の早川書房も栗本センセが亡くなられて、来年からグイン出ないけど大丈夫? って感じだし、そもそも、日本でSF読んでる人口なんて、せいぜい(大森望のマイミク×3)人ぐらいしかいないと思われるので、新人なんか募集している体力ありませんわ、絶望ですわ。という話なんだけど、とりあえずライトノベルレーベルだったらSFっぽいのは出せる。勿論、SFっぽい作品を書く際に登場人物に、萌え萌えの美少女なんかを出さなきゃならないかもしれないけど、そういう制約さえ乗り越えれば、出せないことはないし、それに新人は(使い潰してもいいように)常に大量に募集してるっていう点で、ライトノベルは偉いんじゃないかしらん。という話ですよ。
 というのもですね、長谷敏司の『あなたのための物語』が凄かったので、同じ作者の『円環少女』もまとめ読みしまして、その中に「元学生運動の活動家だった男が、魔術師と組んで東京に核爆弾を持ちこんでテロを起こす」というエピソードがあって、読んだとき、「これはライトノベルでやるネタ」じゃねえよなぁと思ったんですけど、ふと考えると、『円環少女』という作品がライトノベルじゃないと出来ないんですよね。
 多分、魔術師同士がガンガン戦うなんていうアイディアの受け入れ先って今の日本のSF業界にはなくて、やるんだったらラノベか、漫画ぐらいしかないと思うんですよ。それで実際に『円環少女』っていう作品がスニーカーから出版されたことで、長谷先生の作家人生が延長されて、その結果『あなたのための物語』っていう面白いSFも無事出版されて万歳万歳万々歳なので、まぁ、ラノベってのは萌えとかツンデレばっかりじゃなくて、この二十一世紀に左翼青年の蹉跌を書ける位には懐が深いジャンルだったりもするわけです。
 最近でも乙一絶賛の『サクラダリセット』っつー、正統派時間SFもありましたし。 
 
http://d.hatena.ne.jp/ub7637/20091029/p2
 あと、こちらのミステリーの方が売れるんじゃね? という意見に関しては、昔は良かったというか、西尾や舞城を出した時のメフィスト賞の勢いが今は無いよねっていう話で、ゼロ年代後半における最強の奇形児、古野まほろや、ヒトデナシなんて怪異が存在する世界を舞台に、きっちりとミステリーを作った望月守宮の世間での評価を見る限り、今のミステリーにそれほど売る力があるかどうかは怪しいんじゃないかなぁ。とは思います。
 
 でまぁ、実際には売れてないのかもしれないけど、一応マニアックな新作を続々出版する体力がある分だけ、ラノベ業界ってのはまぁ比較的希望があるんじゃないかしらと思うわけですよ。売上げや実際の作家の待遇がどうなってるのかという、生々しい話は置いといての話ですが。
 まぁ、結論としては『15×24』は面白いので皆読めばいいと思いました、まる。