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2010年 02月 08日
週末は貯まっている仕事を一気に片付けようという気合いも虚しく、ひたすら経済学の専門書や論文を読むというワケのわからない展開に。ゴメン小松君…。
最初は、あの新聞や書籍の再販制度改革論議の際に、ナベツネに「三悪人」と罵倒された、規制緩和論者の三輪芳朗氏の戦前、戦後の日本研究の一連の論文と書籍である。 http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~miwa/Yumeato-files/Yumeato.htm 「計画的戦争準備・軍需動員・経済統制 - 続『政府の能力』」 数式は一切ないのだが、一つ一つの一次資料を丹念に渡って検証し、「通説」「常識」「通念」を論駁していく様にはカタルシスを感じる。例えば、よく小林英雄氏や佐野眞一氏らの本に書いてある「俗説」、1960年代・70年代の日本の高度経済成長は、岸信介や椎名悦三郎、そして佐橋滋のような「産業官僚」が満州において計画し実施しした事業をプロトタイプ、つまり「生体試験」として実現されたものだ、というアネクドットをことごとく否定するのだ。これは、本当に面白い。そもそも、満州における実現可能性のある「生産力拡充計画」など作成されなかったし、実施されたとしてもアドホックの極みであったし、実際の生産のパフォーマンスはあまりにレベルが低すぎるか、計画自体が実施されなかった。そのため、その成果を高度経済成長の「生体試験」などできようもないということを、当時の文献とデータを調べて事細かに実証しているのだ。本当に面白い。ここまで徹底的に反駁されて、まだ満州伝説を主張する人はいるのかね?「産業官僚」とか「技術官僚」って結局あれか、偶然うまくいった日本の高度経済成長という成果を、自分の成果かのように言い繕う能力に長けたオッサン達だったのか。ソイツはマジくだらないねえ。 三輪氏は別の実証研究においても、1970年代の「産業政策」を指導した官僚群の通説や、企業系列が日本の経済の成長基盤となったという通説に対して痛烈な反駁を行っていて、通説のデバンキングマスターとして、身も蓋もない。マジパねえ。 「産業政策論の誤解」 「政府の能力」 結局、高度経済成長の満州伝説も、産業政策伝説も、企業系列伝説もすべて、少数の優秀な指導者が「中央計画」的に指導するという、まさに「マルクス経済思想の規範的思考方法」そのものなんだよね。で、上記の満州伝説や産業政策伝説や企業系列伝説のアネクドットが好まれるというのは、それを受容する人達がたくさんいること、つまり結局思考のプロトタイプがマルクス主義な人々がたくさんいるからなんだよね。その意味でマル経の浸透力たるや恐るべし。 次は、Hayashi-Prescottで有名な林文夫氏の、一般均衡動学モデルであるReal Business CycleModel(RBC)を日本の90年代の生産性低下、戦前の生産性低下についてあてはめてた、以下の一連の論文である。 http://fhayashi.fc2web.com/Hayashi-Prescott1.htm http://fhayashi.fc2web.com/Hayashi-Prescott2.htm 前者の論文はいわゆる供給側の生産性低下が日本の90年代からの「失われた20年」を生んだとする「構造学派」の理論的支柱ともいうべき論文で、日本人の書いたここ四半世紀の経済学論文ではダントツの被引用数を誇る論文の一つ。この論文で何をやっているかというと、RBCに基づいた動学的経済モデルを構築し、1990年代の実証データを用いてモデルのパラメータを決定する。そのモデルを用いてパラメータの感度分析をした結果、生産の効率性の指標となるTFP(total factor productivity)と週あたりの労働時間の削減が、モデルの説明変数となりうる、ということを示したのだ。そして、その帰結として90年代半ばからのTFPの低下こそが「失われた10年」の主犯であるとするものだ。 もちろんこの論文にはいろいろな批判があって、問題のモデリングはRBCでやるべきでないというものから、労働時間ばかり気にして労働の質を考慮に入れていないとか、TFPの低下はHayashi-Prescottのモデルよりもっと緩いとか、そもそもTFPの低下は景気低迷によるもので独立変数ではなく別の従属変数だとか(もちろんこの反論の根拠は、Hayashi-Prescottが主張した実証レベルでは全く示されていないのだが…)、まあいろいろ。しかし、まだ決定的に反駁したものはないようで、特にリフレ派のように強く批判する人のほとんどはRBCや一般均衡動学モデルをほとんど理解できずに、ただクダを巻いているだけとも再批判されている。いずれにしろ、斯くのごとく大変面白い論文である。 後者の論文は、戦前の生産性の低下は労働力の移動に対する制限があったためである、という結論を導いたRBCモデルの実証研究であり、これも大変面白い。そしてこの論文については、実際に林文夫氏のサイトからMATLABスクリプトとデータをダウンロードできて、自分の環境で動作させることができる。もちろん、少し工夫すればOctaveで動作する。そしてモデルを弄りながら、この論文の書いてあることをリプロダクションできるのだ。この論文についていろいろ書きたいことはあるのだが、ここでは書ききれないので、興味が持続するようならば、そのうち詳しく紹介したいと思う。 いやさ、世界のハヤシがここまで公開しているのだから、若い経済学徒は是非是非この貴重な資産を利用して世界に羽ばたく研究をしてほしいと思う。こちらも、マジパねえ。 -- 追記 -- コメントにマルクス主義思想云々という言葉についての反論がありますが、こちらは三輪芳朗氏の著作にそのままある表現ですので、氏の著作を読んでから自分のブログや著作で反論をしてください。僕自身はマルクスがどうだかレーニンやスターリンがどうだかという論点には興味がありません。ちなみに僕の解釈では「マルクス経済思想の規範的思考方法」とは、マルクス本人の思考方法というよりは、旧ソビエト連邦を為政した人達の思考方法だと思っています。 あと、ひとつのことをデバンキングするために、そのデバンキング対象以外の「通年」や「通説」を基盤として利用するのは、相対主義の無限後退に陥らないために、僕自身としては議論の進め方としてありだし、むしろそうしないと論点がはっきりしないと思います。
by yutakashino
| 2010-02-08 00:34
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