Mojixブログ経由で知ったGapのNewYorkなどの地域限定かつ期間限定で流されたCM。あのSpike Jonzeが手がけている。

CMをみればわかるように、創造のための破壊というテーマの隠喩表現として、実際にGapの店舗を破壊しまくるというもので、映像表現は秀逸。破壊のもつカタルシスをもちいて、感情に直接訴えかける映像になっていて、さすが天才Spike Jonzeの名に恥じない出来である。ある意味、同じ破壊というテーマを持っている有名なAppleの1984年のSuper BowlでのCMに重なる部分がある（いやこのCMは今見ても感動するね。Equilibriumの映像なんてまさにこれだし）。ただし、Slateの"ad report card"ではこの宣伝の評価はD-であると結論付けている。なぜか？

それは、Gapが真剣にブランド再生をしようとせずに、ただの地域限定の店舗プランの見直しとしてしかこの秀逸なCMを利用しようとしないことにある。思えば1990年代のGapは今のBanana RepublicやAbercrombie&Fitchとおなじようになティーンの憧れのブランドだった。有名なMonica Lewinskyの青いドレスはGapのものだったように。しかし、店舗を過剰出店し、その需要を満たすために衣料の品質を落とした結果、ブランド価値が下がってしまい、今では主に部屋着（あの馬鹿でかいGAPというロゴのトレーナは確かに恥ずかしくて街では着れない…）というビミョウな位置づけになってしまっている。日本でもユニクロの舶来版くらいにしか思われなくなっているよね。そして、その周落したブランドバリューを一から再生するための宣言として、このSpike JonzeのCMは使えるのになぜ使わないんだ、ということである。

たしかに、Slateの言い分はもっともだと思う。しかし、経営的な観点からいうと、いまさらGapというあまりにデカイ規模でブランド建て直しなんて簡単には無理だよね。それよりブランド周落イメージがないラテンアメリカとか、ロシア東欧とか、アフリカ地域に店舗伸ばしていく今の戦略のほうが将来性あるよな、なんて思ってしまうのも事実なのである。じゃあ、なんでSpike Jonzeなんだよ、っていわれると、たぶん担当者がどうしても使いたかったんでしょうね、たぶん。