Math Hysteria

Ian Stewartが寄稿していたScientific Americanの数学コラム"MATHEMATICAL RECREATIONS"の96編のうちの20編をまとめた本。このコラムをまとめた本はこれまでに二冊出ているので、三冊目の本。

欧米圏には、先端数学を分かりやすくゲームやパズルの形で提示する、質の高い数学コラムがある。その質の高さはその始祖であるMartin GardnerとScientific Americanに25年に渡って連載されたコラム"Mathematical Games"にあるわけだが、その直系とも言うべき人がIan Stewartである。Ian Stewartは、少年の頃からMartin Gardnerの"Mathematical Games"の熱心な読者で、そのことが数学者になった理由だと言っている。

この本のどのコラムも例外なく面白い。

たとえば、「コモンナレッジ」を分かりやすく説明するために、次のような例えを持ってくる。頭にペンキ染みの悪戯をされた修道士（皆悪戯されているし、むやみに話してはいけないという沈黙の掟がある）の集団がある。その集団とは別の人間が、「この中に少なくとも一人の頭にペンキ染みがある」と発言する。このことにより、修道士が自分の頭にペンキ染みがあることを、どのくらいの時間で気づくだろうか？

またたとえば、「パンはバターを塗った面を下にして落ちる」というマーフィーの法則をパンを剛体として見立ててニュートン方程式をたてて解いた(ニュートン力学でなく、 "Murphodynamics"だそうだ）Robert Mathewsの理論を紹介して、その妥当性を見るとともに、その「パンが半回転しかできない」テーブルの高さがマーフィーの法則の根本原因であり（テーブルの高さが3mあれば一回転してバターを塗った面が上になる）、それはつまり人類の生物学的構造に結びついているという人間中心原理、いや"the anthromurphic principle"を提唱したりする。

すごく、おもしろーい。今のところ邦訳なし。