リーダーには睡眠を取る義務がある

高市早苗がワークライフバランスを捨てるという話、「トップがそれじゃあ下も巻き込まれて」とかの批判が多いけど、本質的にはそこじゃないと思う。オレが気になってるのは、

リーダーには睡眠を取る義務がある

というのに、彼女がそれを放棄すると宣言していることだ。

ワークライフバランスを捨てて馬車馬のように働くという発言は、睡眠時間の削減を暗示してる。前に小泉進次郎のインタビューを読んだときも感じたが、自民党の政治家の皆さんには非常に安易に睡眠時間を削って活動時間を確保する文化があり、これはほぼ実行されるものだと思う。

米軍は睡眠について徹底的に研究してフィールドマニュアルに落とし込んでいるが(たとえばフィールドマニュアル7-22 https://home.army.mil/cavazos/5517/2115/1094/FM_7-22.pdf の11章。章全体が睡眠について書かれてる)、そこではこのように書かれている:

"睡眠の健康には、睡眠時間(duration)、睡眠のタイミング(timing)、睡眠の連続性(continuity)という、相互に関連した3つの基本的な原則があります。このうち、睡眠時間が最も重要です。なぜなら、脳の健康と機能は主に、確保された睡眠量の直接的な関数であり、より多く睡眠を確保するほど良くなるからです。" (Geminiで翻訳)

脳を正しく機能させるには睡眠が必要である。

国家が行う仕事は小さな決定の影響が多岐にわたって国中に及ぶ。だから思考を深め、思考速度を速め、粘り強く考え続ける必要がある。それには長い睡眠によって大脳新皮質を休めることが不可欠だ。

睡眠は大脳新皮質に効く。睡眠を取ってリラックスすればするほど、大脳新皮質のギブアップが遅くなる。論理が遠くを見渡せるようになる。それに至る速度も上がるので、良いことしか無い。これらは化け学的なプロセスなので、他の方法で適当に補うことはできないし、睡眠により確実に改善することである。

そして、疲れて根気の無い脳が下す判断には大脳新皮質の関与する割合が減る。つまり、古い脳の短絡的判断に寄っていく。古い脳が判断するということは判断が動物的になるということで、ヒトという生物種の判断が動物的になるということは、「野生動物のように研ぎ澄まされた判断」ではなく「旧石器時代の小さな村での生活で必要な判断」に寄るということだ。

高市早苗は、これまでも非常に高頻度で間違えてる。直近だけでも、奈良の鹿を蹴る外国人観光客がいるとか(いない)、通訳がいないために不起訴になる外国人犯罪者の割合が高いとか(起訴率は日本人より高い)、まさに反射的に飛びついてキャッチーなことを言ってしまっている。それは人口150人以下の旧石器時代の村落では最適戦術だったかもしれないが、現代では違う。

就任演説で張り切って出すコメントが「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」だったり、政権批判が常に「動きが遅い」だったりする彼女は、そもそもが小忙しく忙殺された状態が好きな人なんだろう。今でもワークライフバランスはギリギリであるはず。

そんな人が、さらに忙しく、さらに睡眠を削って国の舵取りをやると張り切っているのだ。氷山にぶつかる予感しか無いではないか。

もう一度いう。リーダーは睡眠を取る義務がある。

特に、短絡的に飛びついて間違えないためには睡眠が必要だ。

偉い人は忙しいものである、という日本文化の間違ったところを強調する「保守思想」は有害でしかない。これは絶対に改めていただきたいものである。

https://home.army.mil/cavazos/5517/2115/1094/FM_7-22.pdf


追記: そういえば『まりんこゆみ』の日米合同演習の話で睡眠についての日米差の話があった。

これは第123回。

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この演習の話は114回からいろいろ挟みつつ137回まで続く(確認したw)。興味ある方はどうぞ。「あちらの世界」の常識がたくさん載ってるこの物語はなかなか良く出来てます。 こないだ落選した自衛隊出身議員佐藤正久が頼りになる上官として出てきて、内向きにはこんな顔に見えてるんだな、と確認できたりするのも興味深い。

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