ブロードコムがNVIDIAに対抗するために開発中の光チップを用いた基板(9月5日、写真:ロイター/アフロ)
AI開発を主導する米オープンAIが、AIの頭脳にあたる半導体の自社設計に乗り出す。
同社は10月中旬、米半導体大手ブロードコムと戦略的提携を締結。自ら設計したカスタムAI半導体(プロセッサー)を搭載した計算インフラを、2026年後半から導入すると発表した。
これは9月の米エヌビディア(NVIDIA)、10月上旬の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)との契約に続く大規模な調達計画の第3弾となる。
計算資源(コンピュート)を巡る覇権争いは、供給網の構造に大きな変化をもたらす新たな局面に突入した。
初の自社設計、狙いは「最適化」と「脱・NVIDIA」
今回の提携で特に重要な点は、オープンAIが初めてAI半導体の設計を手がけることにある。
AIモデル開発の知見をハードウエアに直接反映させることで、自社の対話AI「Chat(チャット)GPT」などのサービスに最適化された、電力効率と処理性能の高い半導体を実現する。
ブロードコムは、その半導体の共同開発と製造を担い、サーバーラックやイーサネット(Ethernet)規格のネットワーク機器を含むシステムをオープンAIに納入する。
英ロイター通信によると、このネットワーク構成はAIデータセンター市場で有力なエヌビディアのインフィニバンド(InfiniBand)技術への対抗軸となり得るという。
計画規模は、データセンターの電力容量に換算して10ギガ(ギガは10億)ワット。2029年末までに供給を完了する予定だ。
これにより、オープンAIがこの数カ月で確保を表明した計算能力は、エヌビディア(10ギガワット)、AMD(6ギガワット)と合わせて、総計26ギガワット以上に達する。
これは米国の原子炉約26基分に相当する莫大な規模だ。
オープンAIの狙いは明確だ。一つは、AIがユーザーの要求に応える「推論(inference)」と呼ばれる処理に特化した半導体を自ら手がけることで、運用コストを長期的に引き下げること。
もう一つは、これまで市場を独占してきたエヌビディアへの過度な依存から脱却し、供給網を多角化することにある。
特定の企業に計算資源の供給を左右されるリスクは、事業継続上の大きな課題であり、AMDとの提携に続く今回の一手で、その動きを加速させる。